米大統領選は「ハリス対トランプ」で再始動、100日間の短期決戦となり接戦が予想されている。
ハリスは、23日、ウィスコンシン州で遊説を開始し、黒人女性歌手ビヨンセさんの曲「フリーダム」(自由)が流れる中で登壇して、「私たちは未来のために戦う」と宣言して、トランプが「米国を暗い過去に戻そうとしている」と述べて対比を強調した。
私が注目したのは、この点で、先日、トランプが、すでに賞味期限切れになってしまったと述べた本旨でもある。トランプの「MAGA」など、アメリカ経済社会の後ろ向きへの逆転政策であって、益々、アメリカを窮地に追い込む。轟音を轟かせて大変革を遂げているグローバル世界に背を向けて、国際社会から隔離遊離を策して「アメリカ第一」を追求しても、時代の流れに逆行するだけである。
興味深いのは、ハリスの「検察官対重罪犯」かという対決戦略で、
ハリスは、元検察官という自らのキャリアに言及して、「女性を虐待する略奪者、消費者からだまし取るペテン師、自分の利益のために規則を破る詐欺師、あらゆる種類の加害者と私は対決した。だからドナルド・トランプのようなタイプを知っていると私が言う時、どうか話を聞いてほしい」と、大統領経験者として史上初めて重罪で有罪評決を受けたトランプと、犯罪者と対峙してきた元検事の姿を対比させた。 ことである。
経済問題が最大の争点となろう。
インフレに対するバイデン政権の対応の不手際がハリスの足を引っ張るであろうが、トランプの経済政策の悪さは、スティグリッツ教授の見解を紹介したのでここでは言及しない。
注目したいのは、「中間層の強化」こそハリス政権を特徴付ける目標になると公約した。点で、これはトランプの対極にあるアメリカ経済の構造改革であり起死回生の経済政策で、これが実現できれば朗報となる。
さらに選挙キャンペーンの中心と位置付ける有権者の経済的不安解消に向け、医療と育児、有給家族休暇の拡充に重点を置くアジェンダもアピールしており、福祉国家生活重視を推し進めるであろう。
さて、問題は、ICT革命、AI時代の開花で選挙運動を妨害する偽情報の台頭である。
しかし、フェイクニュースなど偽情報の最大の発信元はトランプで、トップメディアが、嘘八百口から出まかせの虚偽情報を2万回以上も発言したと報じたトランプの虚偽と欺瞞に満ちた偽情報の垂れ流しは、AIどころの比ではない。
むしろ、恐ろしいのは、アメリカの覇権を認めず分断を策して政治経済社会の崩壊を目論む専制国家等敵対国からの偽情報操作であろう。
まだ、民主党の副大統領候補も決定していないし、ハリスの戦略戦術も確定したわけでもないので、まだ、確たることは言えないが、攻撃主体のトランプが弁舌さわやかで知的水準の高いハリスに攻められて防戦に苦慮するはず、9月のテレビ討論会の丁々発止が愉しみである。
アメリカの良識が、民主主義を堅持し続けることを祈りたい。