バブル崩壊後、日本経済は奈落の底に入った。この時、政府や官僚の取った手段は総て間違っていて、このまま行ったら、経済は長期停滞、日本の明日はない。
こんな書き出しで、大前研一氏は、「さらばアメリカ」など近著で、日本経済復活に向けての持論を展開しているが、ここでは、新書「マネー力」での論述を参考に考えてみたい。
この本は、謂わば、大前研一監修の「株式・資産形成講座」の宣伝本なのだが、総花的ではあるが、現在の大前氏の国際経済社会や日本の現状、投資戦略等に関するホットでアップツーデイトな見解が展開されているので、読んでいて興味深い。
さて、日本経済の回復は、オバマ政権次第だとして、その景気浮揚策は、ルーズベルト型の公共投資中心のニューディール政策か、地球環境を守るための戦争だと指摘して、後者の可能性が高いので、高度な対応技術力を保有する日本の出番でありチャンスだと言うのである。
実際には、この戦いのメリットは、恐ろしく効率が悪いことで、それ故にこそ経済効果が大きく、膨大な投資を必要とするので、ニュー・ニューディール政策として、途方もない投資支出を伴う。
原子力発電、太陽光発電、CO2封じ込め技術、省エネ車、排煙脱硫・脱硝技術等々、日本は最先端の技術を開発して来たが、東欧、中国、インドなどが必要としているので、正に、チャンス到来だと言う。
これについては、私自身は、従来の単体としての技術ではなく、フル・パッケジ化したソフト・ハード込みのシステム・テクノロジーとしての提供が必須で、日本企業の連合体的な取り組みが大切だと思っている。
さて、これは他力本願的な景気浮揚策なので、日本自らが舵をとる景気回復策とし、大前氏は、3つの施策を提言している。
①個人の金融資産を高齢者から若者に移す。そのために、相続税、贈与税をゼロにする。
②21世紀に相応しい都市づくりを行う。東京のマンハッタン化etc.
③統治機構の改革、すなわち、戦略的単位としての道州制への移行。
①の論点、眠っていて市場に帰ってこない1500兆円とも言われ続けている個人保有の金融資産の活用については、ガルブレイスも亡くなる少し前に提言していたが、アメリカ経済の良し悪しは別にして、貯蓄の投資型消費への転換が如何に効果的かは論を待たない。
100歳を超えた老人が、老後のためにと言って年金を貯蓄に回す日本人のメンタリティを変えないとどうしようもないと思うのだが、確かに、相続税ゼロ、贈与税ゼロにすれば、多少、老人の財布の紐が緩むかも知れない。
しかし、大前説だと、日本の老人たちが、一人当たり3500万円の金融資産を抱えて死んで行くと言う現実を熟知している財務省が、虎の子の相続税や贈与税を諦める筈がない。
税収が減ると言うような姑息な考え方ではなく、遅かれ早かれ、どうせ、これらの老人が死んで行くのは時間の問題であり、その時に、税金として、がっぽり国庫へ収めてもらえば、財政赤字の2~300兆円などは、すぐに穴埋め出来ると思っている。
住基カードや国民総背番号制のソーシャル・セキュリティ番号システムを厳格化して、徹底的に個人情報を収集して置けば、たとえ、節税紛いの脱税でも、完全に捕捉出来ることは間違いない。
嘘か本当は知らないが、大前説では、先年、財務省が、新円発行時に、ATMを活用して、旧1万円札を新8千円と交換して、国民の金融資産1500兆円の内、20%の300兆円を没収する徳政令を敷こうとしたきらいがあると報じている。
財務省としては、何と言っても膨大な財政赤字で積み上げた国債の異常さは最大の痛恨事で、インフレ期待もその一環で、とにかく、あらゆる手段を使って、棒引きしてでも消し去りたいと思っている筈。
しかし、あまり姑息な手段を弄すると、愈々、日本の優良企業なり、富裕な日本人の海外移籍が始まるかも知れない。
早い話、税金の安い海外へ移籍して何故利益を上げようと考えないのかと経営者が詰問され、株主代表訴訟を起こされても不思議ではない筈なのである。
②の論点、日本の貧しいインフラまみれの都市景観を、一挙に、21世紀型の高密度の都市へと、都市の再生を図ろうと言う提案については、半ば賛成、半ば反対である。
現存の都市を大前説で、高度化するマンハッタン化については概ね正しいと思うが、逆に、これ以上、全世界的に、都市化を進展させてどうするのかと、大いに疑問を感じている。
人口の異常な増加については、如何ともし難いのだが、人間にとって、どのような地球環境が最も望ましいのかと言う重要な視点が欠如していると思っている。
別な、ところで、大前氏が論じている人々の財産として価値のある家づくりへの提言には大いに賛成で、これについては、リチャード・クーも、再三論じており、日本全体として、徹底的に理想像を追求すべき課題だと思っている。
③の論点、戦略的事業単位としての道州制については、大いに賛成で、アメリカが世界大国になったのは、正に州に権力を分散した連邦制にあり、EU的な将来像を考えても、日本と言う規模で、総てを律すべき時代は終わっており、県単位では小規模すぎる。
まだ、形骸として残っている官僚が総てを仕切ると言う中央集権的な日本型社会主義システムを、如何に変えて行くかが課題だが、立法権や徴税権など中央の権限を地方に委譲して事業単位として活動できる権限を道州に与えて、自律、かつ、自立させると言う発想は、既に、実施段階に入っていても不思議ではないと思っている。
こんな書き出しで、大前研一氏は、「さらばアメリカ」など近著で、日本経済復活に向けての持論を展開しているが、ここでは、新書「マネー力」での論述を参考に考えてみたい。
この本は、謂わば、大前研一監修の「株式・資産形成講座」の宣伝本なのだが、総花的ではあるが、現在の大前氏の国際経済社会や日本の現状、投資戦略等に関するホットでアップツーデイトな見解が展開されているので、読んでいて興味深い。
さて、日本経済の回復は、オバマ政権次第だとして、その景気浮揚策は、ルーズベルト型の公共投資中心のニューディール政策か、地球環境を守るための戦争だと指摘して、後者の可能性が高いので、高度な対応技術力を保有する日本の出番でありチャンスだと言うのである。
実際には、この戦いのメリットは、恐ろしく効率が悪いことで、それ故にこそ経済効果が大きく、膨大な投資を必要とするので、ニュー・ニューディール政策として、途方もない投資支出を伴う。
原子力発電、太陽光発電、CO2封じ込め技術、省エネ車、排煙脱硫・脱硝技術等々、日本は最先端の技術を開発して来たが、東欧、中国、インドなどが必要としているので、正に、チャンス到来だと言う。
これについては、私自身は、従来の単体としての技術ではなく、フル・パッケジ化したソフト・ハード込みのシステム・テクノロジーとしての提供が必須で、日本企業の連合体的な取り組みが大切だと思っている。
さて、これは他力本願的な景気浮揚策なので、日本自らが舵をとる景気回復策とし、大前氏は、3つの施策を提言している。
①個人の金融資産を高齢者から若者に移す。そのために、相続税、贈与税をゼロにする。
②21世紀に相応しい都市づくりを行う。東京のマンハッタン化etc.
③統治機構の改革、すなわち、戦略的単位としての道州制への移行。
①の論点、眠っていて市場に帰ってこない1500兆円とも言われ続けている個人保有の金融資産の活用については、ガルブレイスも亡くなる少し前に提言していたが、アメリカ経済の良し悪しは別にして、貯蓄の投資型消費への転換が如何に効果的かは論を待たない。
100歳を超えた老人が、老後のためにと言って年金を貯蓄に回す日本人のメンタリティを変えないとどうしようもないと思うのだが、確かに、相続税ゼロ、贈与税ゼロにすれば、多少、老人の財布の紐が緩むかも知れない。
しかし、大前説だと、日本の老人たちが、一人当たり3500万円の金融資産を抱えて死んで行くと言う現実を熟知している財務省が、虎の子の相続税や贈与税を諦める筈がない。
税収が減ると言うような姑息な考え方ではなく、遅かれ早かれ、どうせ、これらの老人が死んで行くのは時間の問題であり、その時に、税金として、がっぽり国庫へ収めてもらえば、財政赤字の2~300兆円などは、すぐに穴埋め出来ると思っている。
住基カードや国民総背番号制のソーシャル・セキュリティ番号システムを厳格化して、徹底的に個人情報を収集して置けば、たとえ、節税紛いの脱税でも、完全に捕捉出来ることは間違いない。
嘘か本当は知らないが、大前説では、先年、財務省が、新円発行時に、ATMを活用して、旧1万円札を新8千円と交換して、国民の金融資産1500兆円の内、20%の300兆円を没収する徳政令を敷こうとしたきらいがあると報じている。
財務省としては、何と言っても膨大な財政赤字で積み上げた国債の異常さは最大の痛恨事で、インフレ期待もその一環で、とにかく、あらゆる手段を使って、棒引きしてでも消し去りたいと思っている筈。
しかし、あまり姑息な手段を弄すると、愈々、日本の優良企業なり、富裕な日本人の海外移籍が始まるかも知れない。
早い話、税金の安い海外へ移籍して何故利益を上げようと考えないのかと経営者が詰問され、株主代表訴訟を起こされても不思議ではない筈なのである。
②の論点、日本の貧しいインフラまみれの都市景観を、一挙に、21世紀型の高密度の都市へと、都市の再生を図ろうと言う提案については、半ば賛成、半ば反対である。
現存の都市を大前説で、高度化するマンハッタン化については概ね正しいと思うが、逆に、これ以上、全世界的に、都市化を進展させてどうするのかと、大いに疑問を感じている。
人口の異常な増加については、如何ともし難いのだが、人間にとって、どのような地球環境が最も望ましいのかと言う重要な視点が欠如していると思っている。
別な、ところで、大前氏が論じている人々の財産として価値のある家づくりへの提言には大いに賛成で、これについては、リチャード・クーも、再三論じており、日本全体として、徹底的に理想像を追求すべき課題だと思っている。
③の論点、戦略的事業単位としての道州制については、大いに賛成で、アメリカが世界大国になったのは、正に州に権力を分散した連邦制にあり、EU的な将来像を考えても、日本と言う規模で、総てを律すべき時代は終わっており、県単位では小規模すぎる。
まだ、形骸として残っている官僚が総てを仕切ると言う中央集権的な日本型社会主義システムを、如何に変えて行くかが課題だが、立法権や徴税権など中央の権限を地方に委譲して事業単位として活動できる権限を道州に与えて、自律、かつ、自立させると言う発想は、既に、実施段階に入っていても不思議ではないと思っている。