ここ3年間ばかり、大学で講義する機会を得て、「グローバル・ビジネス」概論を、若い人たちに語り続けている。
国際ビジネスを経験した企業の元役員たちが、夫々、得意とする国なり、国際事業などについて、グローバル・ビジネス課程の講座を輪番に受け持って講義を行うのだが、やはり、大学の正式な授業であるから、手を抜くわけには行かないので、皆、老骨(?)に鞭を打って、熱心に準備に余念がない。
私の場合には、最初、ブラジル学の講義から、授業を引き受けたのだが、別な大学で、どうしても、若い人たちに、異文化異文明の遭遇の主戦場であるグローバル・ビジネス環境が、如何に、想像を超えた複雑怪奇な世界であるかと言うこと、そして、それを理解して順応し、受けて立つ能力と気迫を涵養して、世界の檜舞台で戦い抜く決意を固めることが如何に大切かを伝えたいと考えて、グローバル・ビジネス概論擬きの講座を頂戴した。
私自身は、アメリカでビジネス教育を受け、英蘭中心にヨーロッパでのビジネス経験が長いのだが、全く異文化ラテンのブラジルにも在住し、仕事柄、アジアや中東など新興国での仕事も多かったので、いわば、異文化異文明の遭遇する人種の坩堝のようなビジネス環境で、揉まれに揉まれて仕事を続けて来たようなものであった。
それに、一泊以上した外国は、40か国を越えているので、全く、ものの考え方も価値観も気質も違う人々とのコミュニケーションが如何に難しくて大変かを、身を持って感じており、しかし、それだからこそ、異郷の人と人との触れ合いが、如何に、感動的で素晴らしいことか、そんな時には、この宇宙船地球号で起居を共にする生きとし生きるもの総てが、愛しくてしかたがなくなるのだが、そんな本当のグローバル・ビジネスの姿を語りたかったのである。
ウォートン・スクールの「インターナショナル・ビジネス」の最初の授業で、フランクリン・ルート教授が、黒板に大書したのが、「TIME」と「PLACE」。国々によって異なるこの違いを理解することが国際ビジネスのスタートだと言う訳である。
例えば、TIMEだが、日本は交通機関さえ時間厳守だが、スペインでは、事務所で、相手が約束の時間に30分以上遅れて出て来るのは常識だと言っていた(実際に待たされたのだが、かと言って、日本人の私は、次からスペイン流に遅れて行くわけに行かず又待たされた)し、ブラジルで、代表者交代パーティを、6時スタートに設定しても、ブラジル人は、8時頃にやって来るし、こんな状態だから、サンパウロのサントリーレストランなどは、日本人客とブラジル人客の二回転で深夜まで賑わっていた。
PLACEだが、日本では、相当、大きな会社でも、長い間、社長や役員などが、大部屋に机を構えていたことがあり場所には比較的無頓着だが、アメリカでは、事務所の位置と大きさ豪華さは、地位の象徴であるから、役職の上下では雲泥の差がある。イギリスでは、何処に住んでいるのかが極めて重要だし、ホテルでも、例えペイペイでも、日本に出張に来ると帝国ホテルとか高級ホテルに当然顔で宿泊するのだが、逆に、日本の社長や重役でも、会社に旅費規程なるものがあって、一時、ポンドが異常に高かった時に、ロンドンで場末のホテルに泊まらざるを得なかったことがあったのだが、たちまち、場所で相手を値踏みするイギリスのビジネス相手に軽蔑されてしまって、交渉が決裂したと言う話があった。
この異文化異文明の遭遇で、もっとビジネスに本格的に影響するのは、法律や契約で総てを律する法化社会のアングロ・サクソンの世界と、法令や契約など朝令暮改でアミーゴしか信用しないラテン気質のブラジルと言った政治経済社会(華僑やマフィアの世界もこれに近いかも知れない)の成り立ちが根本的に違う世界でのグローバル・ビジネスの複雑怪奇さであろう。
汚職贈賄が政治やビジネスにビルトインされているとしか思えないブラジルなど、現在のジルマ・ルセフ大統領(Dilma Vana Rousseff)が就任後1年足らずに、9人の閣僚を更迭しなければならなかったと言う。
Forbesが、”Investing in Brazil? Don't Overlook Hidden Costs”で、
In conclusion, the document revealed last week by Wikileaks and the recent faxina suggest businesspeople to be careful when investing in Brazil. Do not overlook hidden costs related to corruption, security, bureaucracy and our dysfunctional legal system.
贈賄は、ブラジルでは、隠れたコストだと考えて置けと言うのだろうが、ブラジルは、神はブラジル人に違いないと言われるほどBRIC'sでも最も天然資源に恵まれた豊かな国なのだが、多くのブラジル・コストが、外資を逡巡させていて、アメリカとはまた違った難しさのある国である。
私は、よく、日本とサウジアラビアとの違いを語ることがある。
例えば、雨だが、日本では、五月雨や梅雨、春雨等々季節の移り変わりによって雨に微妙な違いがって表現も豊かだが、サウジアラビアでは、雨はすべて雨である。
出張中に、一度、バーレン空港から豪雨にあって、砂漠の涸れ川が凄い勢いで氾濫して一面湖のようになったのだが、アラビアのビジネス・パートナーは、商談を中止して、家の子郎党を引き連れて、我々を弁当持ちで郊外の氾濫原に見物に連れて行った。それ程、珍しいのである。
また、日本には、色々な名前の違った花が四季の豊かさを感じさせてくれるけれど、サウジアラビアでは、やはり、花は花のようである。ところが、ラクダになると、叔父叔母は勿論、何種類も歳や関係によって呼び名が違うのだと言う。
所変われば品変わると言うことだが、まず、グローバル・ビジネスで成功するためには、「違いの分かる男」になる必要があると言っても良かろうか。
さて、私のグローバル・ビジネス概論は、これまでは、空間軸で語っただけであって、これは走りであって、これからもっと大切な論点に入る。
次は、ICT革命とグローバリゼーションの進展によって、大きく成長進化軌道を短縮した時間軸からの分析を展開して見たいと思っている。
国際ビジネスを経験した企業の元役員たちが、夫々、得意とする国なり、国際事業などについて、グローバル・ビジネス課程の講座を輪番に受け持って講義を行うのだが、やはり、大学の正式な授業であるから、手を抜くわけには行かないので、皆、老骨(?)に鞭を打って、熱心に準備に余念がない。
私の場合には、最初、ブラジル学の講義から、授業を引き受けたのだが、別な大学で、どうしても、若い人たちに、異文化異文明の遭遇の主戦場であるグローバル・ビジネス環境が、如何に、想像を超えた複雑怪奇な世界であるかと言うこと、そして、それを理解して順応し、受けて立つ能力と気迫を涵養して、世界の檜舞台で戦い抜く決意を固めることが如何に大切かを伝えたいと考えて、グローバル・ビジネス概論擬きの講座を頂戴した。
私自身は、アメリカでビジネス教育を受け、英蘭中心にヨーロッパでのビジネス経験が長いのだが、全く異文化ラテンのブラジルにも在住し、仕事柄、アジアや中東など新興国での仕事も多かったので、いわば、異文化異文明の遭遇する人種の坩堝のようなビジネス環境で、揉まれに揉まれて仕事を続けて来たようなものであった。
それに、一泊以上した外国は、40か国を越えているので、全く、ものの考え方も価値観も気質も違う人々とのコミュニケーションが如何に難しくて大変かを、身を持って感じており、しかし、それだからこそ、異郷の人と人との触れ合いが、如何に、感動的で素晴らしいことか、そんな時には、この宇宙船地球号で起居を共にする生きとし生きるもの総てが、愛しくてしかたがなくなるのだが、そんな本当のグローバル・ビジネスの姿を語りたかったのである。
ウォートン・スクールの「インターナショナル・ビジネス」の最初の授業で、フランクリン・ルート教授が、黒板に大書したのが、「TIME」と「PLACE」。国々によって異なるこの違いを理解することが国際ビジネスのスタートだと言う訳である。
例えば、TIMEだが、日本は交通機関さえ時間厳守だが、スペインでは、事務所で、相手が約束の時間に30分以上遅れて出て来るのは常識だと言っていた(実際に待たされたのだが、かと言って、日本人の私は、次からスペイン流に遅れて行くわけに行かず又待たされた)し、ブラジルで、代表者交代パーティを、6時スタートに設定しても、ブラジル人は、8時頃にやって来るし、こんな状態だから、サンパウロのサントリーレストランなどは、日本人客とブラジル人客の二回転で深夜まで賑わっていた。
PLACEだが、日本では、相当、大きな会社でも、長い間、社長や役員などが、大部屋に机を構えていたことがあり場所には比較的無頓着だが、アメリカでは、事務所の位置と大きさ豪華さは、地位の象徴であるから、役職の上下では雲泥の差がある。イギリスでは、何処に住んでいるのかが極めて重要だし、ホテルでも、例えペイペイでも、日本に出張に来ると帝国ホテルとか高級ホテルに当然顔で宿泊するのだが、逆に、日本の社長や重役でも、会社に旅費規程なるものがあって、一時、ポンドが異常に高かった時に、ロンドンで場末のホテルに泊まらざるを得なかったことがあったのだが、たちまち、場所で相手を値踏みするイギリスのビジネス相手に軽蔑されてしまって、交渉が決裂したと言う話があった。
この異文化異文明の遭遇で、もっとビジネスに本格的に影響するのは、法律や契約で総てを律する法化社会のアングロ・サクソンの世界と、法令や契約など朝令暮改でアミーゴしか信用しないラテン気質のブラジルと言った政治経済社会(華僑やマフィアの世界もこれに近いかも知れない)の成り立ちが根本的に違う世界でのグローバル・ビジネスの複雑怪奇さであろう。
汚職贈賄が政治やビジネスにビルトインされているとしか思えないブラジルなど、現在のジルマ・ルセフ大統領(Dilma Vana Rousseff)が就任後1年足らずに、9人の閣僚を更迭しなければならなかったと言う。
Forbesが、”Investing in Brazil? Don't Overlook Hidden Costs”で、
In conclusion, the document revealed last week by Wikileaks and the recent faxina suggest businesspeople to be careful when investing in Brazil. Do not overlook hidden costs related to corruption, security, bureaucracy and our dysfunctional legal system.
贈賄は、ブラジルでは、隠れたコストだと考えて置けと言うのだろうが、ブラジルは、神はブラジル人に違いないと言われるほどBRIC'sでも最も天然資源に恵まれた豊かな国なのだが、多くのブラジル・コストが、外資を逡巡させていて、アメリカとはまた違った難しさのある国である。
私は、よく、日本とサウジアラビアとの違いを語ることがある。
例えば、雨だが、日本では、五月雨や梅雨、春雨等々季節の移り変わりによって雨に微妙な違いがって表現も豊かだが、サウジアラビアでは、雨はすべて雨である。
出張中に、一度、バーレン空港から豪雨にあって、砂漠の涸れ川が凄い勢いで氾濫して一面湖のようになったのだが、アラビアのビジネス・パートナーは、商談を中止して、家の子郎党を引き連れて、我々を弁当持ちで郊外の氾濫原に見物に連れて行った。それ程、珍しいのである。
また、日本には、色々な名前の違った花が四季の豊かさを感じさせてくれるけれど、サウジアラビアでは、やはり、花は花のようである。ところが、ラクダになると、叔父叔母は勿論、何種類も歳や関係によって呼び名が違うのだと言う。
所変われば品変わると言うことだが、まず、グローバル・ビジネスで成功するためには、「違いの分かる男」になる必要があると言っても良かろうか。
さて、私のグローバル・ビジネス概論は、これまでは、空間軸で語っただけであって、これは走りであって、これからもっと大切な論点に入る。
次は、ICT革命とグローバリゼーションの進展によって、大きく成長進化軌道を短縮した時間軸からの分析を展開して見たいと思っている。