ヘミングウェイのFor Whom the Bell Tolls 『誰が為に鐘は鳴る』をもじった元スペイン外相アナ・パラシオの興味深い論文。
閉幕したばかりのBRICS首脳会議は、国際関係の輪郭を変える可能性のある極めて重要な出来事として宣伝された。 これを非同盟運動の基礎を築いた1955年のバンドン会議と比較する人もいれば、多極化世界に適した代替グローバルガバナンスシステムへの動きを予想する人もいた。 しかし、 それは何の成果もあげられなかったが、現行制度に対する不満が広く共有されており、多くの国が現状打破に熱心であるという事実は、西側諸国への警告となるはずである。そして、サミットで明らかになったのは、不満の共有はビジョンの共有にはならないということだ。と言うのである。
6カ国を新たに加盟させるというブロックの決定は、BRICSが世界秩序を作り変えるという予測を正しているように見えるかもしれないが、正式なリストは明らかにされていないものの、40カ国以上が加盟を争っていたとされている。
しかし、事業拡大の決定は、脱ドル化の推進と同様、簡単に実現できる果実を摘むことに等しい。 緊急の対応が必要な数多くのやっかいな世界的課題に関して、サミットは解決策をほとんど提供しなかった。 そしてそれは今後も続くことが予想される。結局のところ、BRICS は常に本質よりも声明を重視しており、各加盟国はそれを自らの目的を推進するためのプラットフォームとして利用している。 メンバーの規模が大きくなり、さらに異質なメンバーが増えれば、あらゆる重要な問題についての合意が妨げられることになる。
中国は常にBRICSに対して世界におけるリーダーシップを高めるための便利なプラットフォームとして、グローバル・ガバナンスの代替ビジョンを推進するなど、地政学的な影響力のツールとして利用している。 この目的のために、今回のサミットは特に重要であった。 安全保障と経済協力を拡大するという日本、韓国、米国の合意に続き、このサミットは中国にとって、G7に代わる本格的なBRICSというビジョンを推進する機会となった。 習近平はしっかりと運転席に座っている。BRICS加盟国は、貿易制裁などの「一方的かつ保護主義的措置」への対抗など、中国が抱えている問題の一部を受け入れる可能性が高い。 そして、たとえ両国の意見が異なる分野であっても、中国はその経済的重み(域内GDPの70%を占める国)を利用して、彼らを揺さぶることができる。
クレムリン側は、BRICSをロシアの国際的孤立に対抗する重要な手段とみている。 国際刑事裁判所の令状による逮捕を避けるため、バーチャルで参加したロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、スポットライトを浴びる時間を利用して、彼のウクライナ戦争論への支持を結集しようとした。 より広く言えば、ロシアは中国と同様、BRICSが西側主導の取り組みや同盟に代わるものを構築できることを望んでいる。
すべての BRICS 加盟国がこのビジョンを共有しているわけではない。 中国との国境で長期にわたる対立に陥っているインドは、経済発展を促進することはもちろん、世界舞台でグローバル・サウスを代表したいと考えている。 しかし同時に、独立した外交政策を維持したいとも考えており、 これは、インドが、軍事同盟を模倣したオーストラリア、日本、米国による四か国安全保障対話(クアッド)の概念に激怒したのと同じ理由である。 インドと同じく欠陥のある民主主義国家であるブラジルも、真の非同盟を好むようで、外交的バランサーとしての役割を果たす野心を抱いている。
ビジョンと利益の相違によって、BRICS は最初から損なわれてきていた。 2001年に(当時はBRICs)という用語を作ったジム・オニールが2021年に書いたように、「現在は新開発銀行として知られるBRICS銀行の設立」と毎年の会合以上に、「このグループが何を意味するのかを理解するのは難しい」。 それ以来 2 年間で大きな変化はなく、多数の新メンバーはグループの有効性はおろか、グループの一貫性にもほとんど貢献しない。
最新のサミットでは、BRICS共通通貨の導入やロシアが最近破棄した黒海穀物協定などのテーマに関する重要な議論が取り上げられた可能性がある。 しかし、BRICS首脳会議の慣習であるように、最終コミュニケには「包括的な多国間主義」や「相互に加速する成長」への約束など、多くの野心的なレトリックが盛り込まれているが、それ以外はあまり多くはない。 世界秩序を批判することは、新しい秩序を構築するよりもはるかに簡単である。
しかし、今回のBRICSサミットが現秩序の終焉を告げるものではないとしても、現秩序に対する不満がいかに広く共有されているか、そして多くの国が現状打破にどれほど熱心であるかを浮き彫りにする。 西側諸国は危険信号に注意を払わなければならない。
この最後のコメントが、パラシオのBRICSに対する感想であろうか。
世界秩序を築いてきたエスタブリッシュメント集団の西側への強力な反発抵抗という位置づけであろうが、纏まりも何の確たる哲学思想にも立脚しない集団だが、歴史上、混沌として国際秩序の安定を欠いたグローバル世界での今後の趨勢を決する重要なプレイヤーであることは確かである。BRICSの動向次第では、自由な資本主義も民主主義も脅威に晒されると言うことである。
ところで、先のBRICS会議で、中印間で、国境地帯の緊張緩和で合意したばかりだったにも拘らず、その直後に、
「中国が中印国境の紛争地帯を自国領土に入れた最新地図を発表、裏切られたモディ首相」<台湾、南シナ海だけでなく、インドと領有権を争っている中印国境の土地も自国領土とした中国の地図にインドの国会議員は激怒、中国への攻撃を要求した>と言う物騒なニュースが飛び込んできた。
BRICSとは、そう言うものかも知れない。
閉幕したばかりのBRICS首脳会議は、国際関係の輪郭を変える可能性のある極めて重要な出来事として宣伝された。 これを非同盟運動の基礎を築いた1955年のバンドン会議と比較する人もいれば、多極化世界に適した代替グローバルガバナンスシステムへの動きを予想する人もいた。 しかし、 それは何の成果もあげられなかったが、現行制度に対する不満が広く共有されており、多くの国が現状打破に熱心であるという事実は、西側諸国への警告となるはずである。そして、サミットで明らかになったのは、不満の共有はビジョンの共有にはならないということだ。と言うのである。
6カ国を新たに加盟させるというブロックの決定は、BRICSが世界秩序を作り変えるという予測を正しているように見えるかもしれないが、正式なリストは明らかにされていないものの、40カ国以上が加盟を争っていたとされている。
しかし、事業拡大の決定は、脱ドル化の推進と同様、簡単に実現できる果実を摘むことに等しい。 緊急の対応が必要な数多くのやっかいな世界的課題に関して、サミットは解決策をほとんど提供しなかった。 そしてそれは今後も続くことが予想される。結局のところ、BRICS は常に本質よりも声明を重視しており、各加盟国はそれを自らの目的を推進するためのプラットフォームとして利用している。 メンバーの規模が大きくなり、さらに異質なメンバーが増えれば、あらゆる重要な問題についての合意が妨げられることになる。
中国は常にBRICSに対して世界におけるリーダーシップを高めるための便利なプラットフォームとして、グローバル・ガバナンスの代替ビジョンを推進するなど、地政学的な影響力のツールとして利用している。 この目的のために、今回のサミットは特に重要であった。 安全保障と経済協力を拡大するという日本、韓国、米国の合意に続き、このサミットは中国にとって、G7に代わる本格的なBRICSというビジョンを推進する機会となった。 習近平はしっかりと運転席に座っている。BRICS加盟国は、貿易制裁などの「一方的かつ保護主義的措置」への対抗など、中国が抱えている問題の一部を受け入れる可能性が高い。 そして、たとえ両国の意見が異なる分野であっても、中国はその経済的重み(域内GDPの70%を占める国)を利用して、彼らを揺さぶることができる。
クレムリン側は、BRICSをロシアの国際的孤立に対抗する重要な手段とみている。 国際刑事裁判所の令状による逮捕を避けるため、バーチャルで参加したロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、スポットライトを浴びる時間を利用して、彼のウクライナ戦争論への支持を結集しようとした。 より広く言えば、ロシアは中国と同様、BRICSが西側主導の取り組みや同盟に代わるものを構築できることを望んでいる。
すべての BRICS 加盟国がこのビジョンを共有しているわけではない。 中国との国境で長期にわたる対立に陥っているインドは、経済発展を促進することはもちろん、世界舞台でグローバル・サウスを代表したいと考えている。 しかし同時に、独立した外交政策を維持したいとも考えており、 これは、インドが、軍事同盟を模倣したオーストラリア、日本、米国による四か国安全保障対話(クアッド)の概念に激怒したのと同じ理由である。 インドと同じく欠陥のある民主主義国家であるブラジルも、真の非同盟を好むようで、外交的バランサーとしての役割を果たす野心を抱いている。
ビジョンと利益の相違によって、BRICS は最初から損なわれてきていた。 2001年に(当時はBRICs)という用語を作ったジム・オニールが2021年に書いたように、「現在は新開発銀行として知られるBRICS銀行の設立」と毎年の会合以上に、「このグループが何を意味するのかを理解するのは難しい」。 それ以来 2 年間で大きな変化はなく、多数の新メンバーはグループの有効性はおろか、グループの一貫性にもほとんど貢献しない。
最新のサミットでは、BRICS共通通貨の導入やロシアが最近破棄した黒海穀物協定などのテーマに関する重要な議論が取り上げられた可能性がある。 しかし、BRICS首脳会議の慣習であるように、最終コミュニケには「包括的な多国間主義」や「相互に加速する成長」への約束など、多くの野心的なレトリックが盛り込まれているが、それ以外はあまり多くはない。 世界秩序を批判することは、新しい秩序を構築するよりもはるかに簡単である。
しかし、今回のBRICSサミットが現秩序の終焉を告げるものではないとしても、現秩序に対する不満がいかに広く共有されているか、そして多くの国が現状打破にどれほど熱心であるかを浮き彫りにする。 西側諸国は危険信号に注意を払わなければならない。
この最後のコメントが、パラシオのBRICSに対する感想であろうか。
世界秩序を築いてきたエスタブリッシュメント集団の西側への強力な反発抵抗という位置づけであろうが、纏まりも何の確たる哲学思想にも立脚しない集団だが、歴史上、混沌として国際秩序の安定を欠いたグローバル世界での今後の趨勢を決する重要なプレイヤーであることは確かである。BRICSの動向次第では、自由な資本主義も民主主義も脅威に晒されると言うことである。
ところで、先のBRICS会議で、中印間で、国境地帯の緊張緩和で合意したばかりだったにも拘らず、その直後に、
「中国が中印国境の紛争地帯を自国領土に入れた最新地図を発表、裏切られたモディ首相」<台湾、南シナ海だけでなく、インドと領有権を争っている中印国境の土地も自国領土とした中国の地図にインドの国会議員は激怒、中国への攻撃を要求した>と言う物騒なニュースが飛び込んできた。
BRICSとは、そう言うものかも知れない。