マイケル・スペンス教授の論文「長期不況とどう戦うか」を読んでいたら、ロバート・
ゴードンの論文「Is U.S. Economic Growth Over? Faltering Innovation Confronts the Six Headwinds」に言及していた。
以前に、ゴードンの同じような趣旨の講演「イノベーションの死、成長の終わりYouTube」を聴いていたので、まず、このゴードン教授の、フクシマの「歴史のおわり」ばりのアメリカ経済成長おわり論について考えることとした。
世界経済は、1300年以降1750年代の第1次産業革命以前は、停滞状態で、年率0.2%程度の成長であったが、その後、250年間、3次の産業革命を経て、一気に経済成長に転じた。
ゴードンの指摘は、次の通り。
第1次産業革命は、(steam, railroads) from 1750 to 1830
第2次産業革命は、(electricity, internal combustion engine,running water, indoor toilets, communications,entertainment,chemicals,petroleum) from 1870 to 1900
第3次産業革命は、(computers, the web, mobile phones) from 1960 to present.
この3次の産業革命の中で、最もインパクトが大きくて重要なのは、第2次産業革命で、1890年から1972年の80年間に、生産性が急速にアップして、世界経済をピークに持ち上げた。
飛行機、エアコン、州際ハイウエイ等がキーエンジンだが、ただ1度限りながら、社会の工業化と都市化、交通のスピードアップ、寿命の延長、主婦の家事重労働からの解放、冷暖房など住環境の向上、等々、今でも凌駕できないものがある。
それに比べれば、第3次の1996年から2004年までのイノベーションは、生産性の向上を齎したが短期に収束し影響も小さかった。
次表は、一人当たりのGDPの推移だが、20世紀の中葉にピークに達して、第3次産業革命の時期に、ダウンしているのが分かる。
注目すべきは、ゴードンは、アメリカで謳歌した20世紀の第2次産業革命が、人類の歴史においてピークであり、それに比べれば、その後のイノベーションは、大した影響がないと考えているようである。
この講演では、イノベーションの将来については、これまでの様な偉大な発明に匹敵するような発明をしなければならないが、ゴードンは、それ程の発明はできないと考えている。
2007年以降、過去20年間と同様の率で、たとえ、イノベーションが推移するとしても、アメリカ経済の成長を阻害する4つの逆風が吹き荒れて、1991年から2007年までの平均成長率が2%であったが、ゴードンの推測では、これが、年率0.2%にまでダウンして、産業革命以前の状態に戻ると言うのである。
そのアメリカ経済に吹く向かい風、逆風とは、先の論文では、6つ指摘している。
人口変動、教育、格差、グローバリゼーション、エネルギー/環境、個人と政府の債務、(demography, education, inequality,globalization, energy/environment, and the overhang of consumer and government debt.)
しかし、何故か、講演では、4つとして、人口変動、教育、格差、債務について論じている。
いずれにしろ、ベビーブームや女性労働ボーナスの終焉、学歴下位半分の成人男性の労働人口からの脱落、教育費の高騰と質の低下、下位99%の所得の減少と格差拡大、資源の枯渇や価格の上昇・環境悪化、財政赤字と個人債務等々、頭を打ち始めたアメリカ資本主義の病巣が、アメリカ経済の前途を阻むと言うのである。
これらの問題については、周知の事実であり、このブログでも何度も論じている。
ゴードン説に対して、イノベーションについては、多少、異論はあるが、前表のごとく、一人当たりのGDPの推移で示されると、反論し難い。
イノベーションと言うか、その質なり経済成長に与える影響なりが、大きく変わりつつあるのか、経済そのものが、大きく変質しつつあるのか、先進国が、長期不況に呻吟して、中々、脱出できなくて、むしろ、どんどん深みに嵌まり込みつつあることを考えれば、非常に、深刻な問題である。
ゴードンの論文「Is U.S. Economic Growth Over? Faltering Innovation Confronts the Six Headwinds」に言及していた。
以前に、ゴードンの同じような趣旨の講演「イノベーションの死、成長の終わりYouTube」を聴いていたので、まず、このゴードン教授の、フクシマの「歴史のおわり」ばりのアメリカ経済成長おわり論について考えることとした。
世界経済は、1300年以降1750年代の第1次産業革命以前は、停滞状態で、年率0.2%程度の成長であったが、その後、250年間、3次の産業革命を経て、一気に経済成長に転じた。
ゴードンの指摘は、次の通り。
第1次産業革命は、(steam, railroads) from 1750 to 1830
第2次産業革命は、(electricity, internal combustion engine,running water, indoor toilets, communications,entertainment,chemicals,petroleum) from 1870 to 1900
第3次産業革命は、(computers, the web, mobile phones) from 1960 to present.
この3次の産業革命の中で、最もインパクトが大きくて重要なのは、第2次産業革命で、1890年から1972年の80年間に、生産性が急速にアップして、世界経済をピークに持ち上げた。
飛行機、エアコン、州際ハイウエイ等がキーエンジンだが、ただ1度限りながら、社会の工業化と都市化、交通のスピードアップ、寿命の延長、主婦の家事重労働からの解放、冷暖房など住環境の向上、等々、今でも凌駕できないものがある。
それに比べれば、第3次の1996年から2004年までのイノベーションは、生産性の向上を齎したが短期に収束し影響も小さかった。
次表は、一人当たりのGDPの推移だが、20世紀の中葉にピークに達して、第3次産業革命の時期に、ダウンしているのが分かる。
注目すべきは、ゴードンは、アメリカで謳歌した20世紀の第2次産業革命が、人類の歴史においてピークであり、それに比べれば、その後のイノベーションは、大した影響がないと考えているようである。
この講演では、イノベーションの将来については、これまでの様な偉大な発明に匹敵するような発明をしなければならないが、ゴードンは、それ程の発明はできないと考えている。
2007年以降、過去20年間と同様の率で、たとえ、イノベーションが推移するとしても、アメリカ経済の成長を阻害する4つの逆風が吹き荒れて、1991年から2007年までの平均成長率が2%であったが、ゴードンの推測では、これが、年率0.2%にまでダウンして、産業革命以前の状態に戻ると言うのである。
そのアメリカ経済に吹く向かい風、逆風とは、先の論文では、6つ指摘している。
人口変動、教育、格差、グローバリゼーション、エネルギー/環境、個人と政府の債務、(demography, education, inequality,globalization, energy/environment, and the overhang of consumer and government debt.)
しかし、何故か、講演では、4つとして、人口変動、教育、格差、債務について論じている。
いずれにしろ、ベビーブームや女性労働ボーナスの終焉、学歴下位半分の成人男性の労働人口からの脱落、教育費の高騰と質の低下、下位99%の所得の減少と格差拡大、資源の枯渇や価格の上昇・環境悪化、財政赤字と個人債務等々、頭を打ち始めたアメリカ資本主義の病巣が、アメリカ経済の前途を阻むと言うのである。
これらの問題については、周知の事実であり、このブログでも何度も論じている。
ゴードン説に対して、イノベーションについては、多少、異論はあるが、前表のごとく、一人当たりのGDPの推移で示されると、反論し難い。
イノベーションと言うか、その質なり経済成長に与える影響なりが、大きく変わりつつあるのか、経済そのものが、大きく変質しつつあるのか、先進国が、長期不況に呻吟して、中々、脱出できなくて、むしろ、どんどん深みに嵌まり込みつつあることを考えれば、非常に、深刻な問題である。