熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

やはり日本は自然災害の多い国

2024年08月27日 | 地球温暖化・環境問題
   大型台風10号が、九州に向かって接近している。
   南海トラフ地震の心配が少し遠のいたと思ったら、これからは、台風のシーズンで、毎年のように心配しなければならない。
   日本では、毎年、どこかで地震や台風などの被害を受けていて、自然災害から解放されるということは望み得ない。

   私は、もう大分前になるが、ほぼ14年間、海外生活を送っていたが、大きな自然災害に遭遇したという記憶はあまりない。
   最初のフィラデルフィアは、東海岸なので日本と気候が良く似ていて、寒かったという印象しかない。

   次のサンパウロは、公害は酷かったが、年中殆ど変化のない温暖な過ごしよい気候で、暑さ寒さには縁がなかった。毛穴が開いてしまったというか、寒暖の激しい日本に帰って、しばらく調整に苦しんだ。
   4年間いたが、一度だけ有り得ない地震が発生した。高層ビルが林立する大都会だが、夫婦げんかで投げ飛ばされた妻が壁を突き破って飛ばされたという嘘のような話があるくらい簡易な建物ばかりなので、大騒ぎとなったことがある。高速道路が崩落した。
   高速道路をリオデジャネイロに向かって走っていて、途中ゲリラ豪雨にあって、トレーラーに追突しそうになったのも嫌な思い出である。

   ヨーロッパには、アムステルダムとロンドンに都合8年住んでいた。一度だけ、大嵐galeに見舞われた。丁度この嵐の途中に、アムステルダムからロンドン経由で東京へ飛ぶ予定にしていたのだが、朝出発のKLM便が遅れてJAL便が出発済みで乗り継げず、後発のBA便で行った記憶がある。キューガーデンの100年以上の巨大な古木が何本も根元から根こそぎ倒壊していたから、ヨーロッパでは珍しいくらい強烈なgaleであったのであろう。
   ヨーロッパのばらの美しい夏は快適だが、日が短くて太陽のない毎日リア王の世界が続く冬季は陰鬱である。一度だけ、アムステルダムで氷点下20度を切って、水道管が破裂して、家中水浸しになって困ったことがある。
   普通の冬は、運河に氷が張ってスケート場になって庶民が愉しみ、オランダ全土完走大会で盛り上がる。車は青天井の駐車なので、毎朝、熱湯をかけても瞬時に凍てしまいキーを開けるのに苦労する。

   そのほか、海外を歩いていて、色々な自然災害に沿遇してはいるが、日本ほど、酷い国はないのではないかと思っている。


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CNN:崩壊に向かうアマゾン熱帯雨林

2024年02月18日 | 地球温暖化・環境問題
   CNNのOdd Newsが、「崩壊に向かうアマゾン熱帯雨林、2050年にも重大な転換点 新研究」と報じている。

   ブラジルのサンタカテリーナ連邦大学の研究者らが主導し、科学誌ネイチャーに掲載された研究では、
   アマゾンは6500万年にわたり、自然の気候変動に対する強靱さを証明してきた。しかしここへ来て森林伐採と人間由来の気候危機が新たな水準の圧力をもたらし、向こう30年以内に大規模な森林システムの崩壊を引き起こす可能性がある。研究者らの予測によれば今後アマゾンの10~47%が圧力にさらされ、そこに存在する生態系を重大な転換点へと押しやりかねない。その境界を一度越えると、悪影響の負の連鎖につながっていくと言うのである。

   総体的手法を用い、アマゾンがどれだけ早くその境界に到達し得るかを推計した。研究論文の著者らは気温上昇や極端な干ばつ、森林伐採、火災の影響を検証し、結論を導き出し、その結果、アマゾンの森林システムがどのようにして従来の想定より早く、自己増強的な崩壊の段階に突入し得るかが明らかになった。これまでの研究では、この規模の崩壊が今世紀中に起こり得るとは予測していなかった。
   
   驚くなかれ、これまでの地球温暖化論争とは違って、水の無尽蔵の宝庫であると思っていたアマゾンだが、
   著者らによると、水ストレスがアマゾンに混乱をもたらす共通要因だという。のである。
   水ストレスとは、人間や生態系の水への需要が供給を上回る状態、水需要に対する水不足を意味する。
   地球温暖化が水ストレスの影響に拍車をかけている。温暖化を受けてアマゾンの気候はより乾燥し、温度も上昇している。こうした状況は樹木の水ストレスを高める。とりわけ干ばつへの抵抗力が弱い北西部ではそうで、重大な水ストレスに突然さらされれば、大規模な生物の死を引き起こしかねないと研究は警鐘を鳴らす。
   そのような転換点に到達した場合、アマゾンの複数の地域は居住が不可能になる恐れがある。耐えがたい高温に加え、先住民や地域共同体が生活していくための資源が不足するからだと研究は指摘している。のである。

   水ストレスについては、国連の報告書では、2050年には世界人口が、約97億人になると予測されている時点で、世界気象機関(WMO)によると、そのうちの約半数の50億人が水不足になるという試算が発表されている。
   GNVの表を借用させて頂くと、世界の水ストレス状況は次の取り、
   

   最近話題になっている国際的な水紛争は、
   エチオピアの青ナイル川におけるグランド・エチオピアン・ルネサンス・ダムの建設で、エチオピアのタナ湖に源がある青ナイル川はナイル川の支川として、雨期の間ナイル川に流れる水の8割を供給する。ナイル川はエジプトをはじめ北東アフリカの農業と経済に欠かせない存在である。その中で下流へ流れる水の量が減り、これを死活問題とみたエジプトとスーダンがダムの建設に反対して国家間の摩擦の原因となって、紛争にエスカレートした。このナイル川は、利害を有する10カ国の国境を通過する国際河川でもある。
   このような水を巡る問題が、世界各地で、人口増加や気候変動などにより深刻になる傾向が増えている。世界中で水不足や川・湖の使用権利を巡る対立などが紛争の種になっている。
   水不足が、人間の健康を冒し、生態系へ深刻なダメッジを与えるのみならず、さらに、紛争が発生してしまえば、水資源が攻撃などで失われたり、水資源そのものが紛争の「武器」になる。水を巡る国際紛争の頻度と規模が今後もさらに悪化していくであろう。
   
   水ストレスや水に纏わる国際紛争などについては、多くの研究と論争が成されているので、これ以上深入りはしないが、水問題にもマルサスの亡霊が付きまとっており、地球温暖化を解決しない限り、人類は水不足で死地を彷徨うことになることを肝に銘じておくべきであろう。石油より深刻かも知れない。

   この研究では、森林伐採の終了や森林再生の促進、保護地域の拡大などを推奨している。また国際的に協力し、温室効果ガスを削減する必要性も強調。アマゾン地域の国々が連携して森林再生を進める重要性も訴えている。と結論付けている。
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WP:スコット・ダンス「気候科学者は 2024 年の地球について何を予測しているか 」

2024年01月03日 | 地球温暖化・環境問題
   ワシントンポストの2日の記事「What climate scientists are predicting for the globe in 2024 By Scott Dance」

   驚くべき地球温暖化の年が終わり、年間平均気温の記録的な高さはすでに確実となった。 現在、一部の科学者はすでに、2024 年はさらに暑くなる可能性があると推測している。
   結局のところ、地球の海洋の広大な地域は 2023 年のほとんどの期間、記録的な暖かさであり、その熱を解放するには何か月もかかる。 地球温暖化を引き起こすエルニーニョ現象の激しい気候パターンがピークに近づいており、前回この現象が起きたときは、2016 年に地球は記録的な暖かさを記録した。
   これは、化石燃料の排出に関連した数十年にわたる傾向を加速させてきた地球温暖化の急増に差し迫った減速が起こらないことを示唆している。
   と言うのである。

   英国気象庁によると、これは年間ベースで、初めて、惑星の平均気温を産業革命前の19世紀の水準より摂氏1.5度(華氏2.7度)以上上昇させるのに十分な可能性があるという。 地球はここ数カ月でその恐ろしい閾値にこれまで以上に近づき、その熱レベルが持続すると新たな異常気象が引き起こされる世界を初めて垣間見た。
   しかし、そのような気候傾向を正確に予測するのは難しい場合がある。 結局のところ、2023 年の初めに科学者たちは、今年は地球上で観測史上最も暖かい年として終わるであろうと予測していた。 彼らは、これほど多くの新たな前例が生まれるとは予想しておらず、しかも記録的な大差であった。

   エルニーニョは惑星の気温を摂氏数十分の 1 度上昇させることが知られており、これは世界平均の統計としては十分なマージンである。 それは、太平洋の中部および東部の表面温度が平均よりも高く、これらの海水が熱と蒸気を大気中に放出していることが関係しているためである。
   エルニーニョ現象は通常 1 年以内続き、冬の間にピークを迎え、春には収まる。 科学者らは、エルニーニョ現象は二つとして全く同じものはないとしているが、それぞれの現象は、他のいくつかの惑星現象と同様に、地球規模の気候パターンにある程度の予測可能性をもたらしている。
   6月に始まった現在のエルニーニョ現象は強いと考えられており、今後数週間または数か月以内に歴史的に強力な現象としてピークに達する可能性がある。 これは、2015年初めに始まり、同年12月にピークに達し、2016年を記録的な地球温暖化に押し上げる途中で2016年6月までに収まった強力なエルニーニョに匹敵する可能性がある。
   このパターンが今回も当てはまるとすれば、過去6カ月間続いた記録的な暖かさが2024年上半期にはさらに急増することになる可能性がある。
   エルニーニョによる温暖化の影響が後半に増大する傾向がある理由の 1 つは、エルニーニョが地球規模の気象に及ぼす影響と関係している。 エルニーニョが中部および東部太平洋にもたらす異常な海面の暖かさと嵐は、インドネシア、東南アジア、アフリカ南部など世界の他の地域に干ばつをもたらすドミノ効果をもたらす。
   これにより、陸上の気温は通常よりも高くなり、おそらく2月頃にピークに達し、少なくとも2024年の最初の6か月間はこの状況が続くと予想している。

   その温暖化の影響が 2024 年全体を支配するかどうかは、現在のエルニーニョが収まった後に何が起こるかによって決まる。 それは6月までに起こり、太平洋は気候学者が呼ぶところの中立状態、つまりエルニーニョやその引き立て役であるラニーニャが存在しない状態に戻る可能性が高い。
   その上、中立状態が続くのか、それとも惑星の寒冷化で知られるラニーニャ現象が発生するのかは不明である。 エルニーニョが再び発生する可能性もある。  
   今のところ、今後何が起こるかについて明確なヒントはない。 このエルニーニョは、ある意味では科学者の教科書的な現象の理解に従って発展したが、別の意味では分類するのが困難であった。 エルニーニョが沈静化するにつれて気候科学者が通常予想するいくつかのパターン変化はまだ発現していない。何が起こっているのか、依然として不可解な側面がいくつかあり、気候変動は、過去のすべての類似点がそれほど信頼できないことを意味していると言うのである。
   人為的な気候変動は確かに世界的な傾向を支配しており、過去 8 年間は記録上最も暑い 8 年間であった。 記録的な猛暑となるのは確実な2023年と、さらに猛暑となる可能性のある2024年があれば、その連続記録は10年に伸びるであろう。
   今年の気候変動に関係なく、太平洋全域のエルニーニョの暖かさは地球の気温と気象パターンに大きな影響を与え続けるであろうとコロンビア大学国際気候社会研究所の主任研究員アンドリュー・クルツキーウィッチ氏は述べた。
   「そのエネルギーが消えるには時間がかかる。 気候システムには持続性がある。」と言うのである。

   以上が、スコット・ダンスの記事だが、自明なので、紹介に留める。

   口絵写真は、ポータブル扇風機に顔を埋めて涼を取る少年、
   ついで、ケニアの洪水、カナダの森林火災、WPの写真である。
   
   
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チャールズ国王、COP28:世界は「危険な未知の領域」へ

2023年12月02日 | 地球温暖化・環境問題
   CNNが、「英チャールズ国王、COP28で演説 世界は「危険な未知の領域」へ」と報じた。 
   チャールズ国王は1日、ドバイで開催中のCOP28冒頭演説を行い、気候危機の警鐘となる兆候が見過ごされていると述べ、世界は生活と生計に重大な影響を及ぼす「危険な未知の領域」に向かっているとの認識を示した。「COP28が真の変革に向けた重要な転換点になるよう心から」祈っていると表明し、さらに「いくつか重要な進展はあったものの、我々が依然として恐ろしく軌道を外れていることに大きな懸念を覚える」とし、「我々は自然界を均衡の取れた規範や制限から逸脱させ、危険な未知の領域に導いている」と指摘した。と言う。
   また、カナダの前例ない山火事シーズンや、パキスタンやバングラデシュで多くの死者を出した洪水、東アフリカでの壊滅的な干ばつ被害などを挙げ、「世界の希望」は今回の会合での決定にかかっていると訴え、気候危機に対処して再生可能エネルギーを急ピッチで増やすため、官民の投資増額などの施策を呼び掛けた。
   「地球は我々のものではない。我々が地球のものなのだ」と言い添えた。と言うのである。

   チャールズ国王が気候変動に関する重要演説を行うのは昨年の就任後初めて。チャールズ国王は当時のトラス英首相から反対され、昨年エジプトで開かれたCOP27には出席しなかった。CNNの当時の理解では、王室と政府はCOPが国王として最初の外遊の場にふさわしくないとの認識で一致した。と言うのだが、皇太子時代から、チャールズ3世が、地球温暖化にきわめて強い危機意識を持つなど、環境問題に対して、並々ならぬ知見と高邁な理想を持っていることは衆知の事実で、これまでに、かなり強烈な警告発言を行ってきている。
  
   もう40年近く前になるが、
   ロンドンのシティで、私が、大きな都市開発プロジェクトを立ち上げた丁度その時、金融ビッグバンでシティが急開発に沸きに沸いた頃で、シティ・コーポレーションが、晩餐会を開催し、チャールズ皇太子をゲスト・スピーカーとして招待した。
   その時、私は、シティのお歴々と会場のエントランスで、4人の一人として並んで皇太子をお出迎えした。
   シティでの開発プロジェクトについて少しご説明申し上げたが、「アーキテクトですか。」と聞かれた事だけは覚えているが、何を説明したのか何を言われたのか全く何も覚えていない。
   この時の握手した手の感触と、少し後に、別なレセプションで同じ様にダイアナ妃をお迎えした時の彼女の柔らかい手の感触だけはかすかに覚えている。

   問題は、この時のチャールズ皇太子のスピーチの内容で、激しい口調で、当時ビックバンに湧くシティの乱開発について批判し、当時のシティの都市景観は、ナチスの空爆によって破壊された戦後のシティのスカイラインよりも遥かに酷いもので、「Rape of Britain」 だと糾弾したのである。
   チャールズ皇太子のシティのイメージは、丁度セント・ポール寺院が軍艦のように洋上に浮かんでいるシティなのだが、既に周りの色々な高層ビルが寺院を威圧してしまっていた。
   それに、悪いことに、イギリスの開発許可は、個々のプロジェクト毎に認可されるので、そのデザインについては統一性がなく、各個区々なので都市景観の統一性がないために、パリのように都市そのものの纏まりがなくて美観に欠ける。
   その後、BBCが、チャールズ皇太子のこの見解に沿った特別番組を放映し、チャールズ皇太子がテームズ川を行く船上から、「あの建物はパソコンみたいで景観を害する・・・」等々問題の建築物を一つ一つ批判したのである。同時に、「A VISION OF BRITAIN A Personal View of Architecture」1989.9.8が出版されたので、チャールズ皇太子の一石が、英国建築界とシティ開発などに大きな波紋を投げかけて大論争になった。
   我がプロジェクトのファイナンシャル・タイムズ本社ビルの再開発も、買収直後に重要文化財に指定され、重度の保存建造物となったので、より以上に素晴らしい価値あるビルを再開発する以外に道はないと腹を括って、英国のトップ・アーキテクトを総てインタヴューしてまわってプランを固め、シティや政府関係当局、環境保護団体や学者、ジャーナリスト等の説得など大変な日々を過ごし、皇太子の了解も取得した。

   その後、もう一度、景観保護団体の集会があり、チャールズ皇太子を先頭にシティの古い街並みを歩きながら勉強する会があったので参加した。
   この時は、後のレセプションで、お付きの人が呼びに来たので、チャールズ皇太子と5分ぐらいお話しすることが出来た。
   丁度、日本への訪日前だったので、興味を持たれて色々聞かれたが、日本の経済や会社の経営については非常に評価しているので勉強したいと言われていた。

   さて、チャールズ皇太子時代に、ご自分のコーンウォール公領で、環境に負荷をかけずに長く続けられる”持続可能な(Sustainable)”農業を様々な形で試みていることは有名な話で、現代の都市の乱開発を嫌い、古き良き時代の心地よい田園生活をこよなく愛している。道楽ではなく、徹頭徹尾の環境保護主義者であり古き良き英国を再現したいと思っていることは間違いない。
   高度な識見と高邁な思想を持った傑出した君主であることは折り紙付きである。

   これは、私自身の独断と偏見だが、君主は政治的発言を控えるべきだと言うことだが、チャールズ3世国王以外に、環境問題に関して、高邁かつ現実的な地球環境を死守すべき檄を飛ばせる英邁なトップリーダーは見出し得ない。

   宇宙船地球号は、環境破壊の深刻化が高じて殆ど時間切れで、瀕死の状態で死地を彷徨っていると言っても過言ではなかろう。
   ウクライナ戦争やパレスティナ戦争など現下の人知を超えた愚かさの極みよりも、もっと恐ろしいのは、依って立つ我が地球が足下から燃えているこの現実。
   チャールズ国王の箴言を、地球人として、心すべきだと思っている。
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ロイター:ブラジルで広がる農地再生、森林破壊せず収穫拡大

2023年10月10日 | 地球温暖化・環境問題
   ロイターのニュースレターに、 「ブラジルで広がる農地再生、森林破壊せず収穫拡大」という記事があった。
   焼き畑農業で、アマゾンの原生林をどんどん破壊して、地球環境を悪化させ続けているブラジルでの、非常に明るい記事なので注目した。

   記事を引用すると、
   ブラジル中部ゴイアス州で農業を営むリカルド・サンティノニさん(49)が20年前に最初に大豆を栽培したときには、70ヘクタールに作付けするのがやっとだった。それが今や作付面積は1000ヘクタールに拡大。しかも、木を一本も切ることなく成し遂げた。
   サンティノニさんが父親から譲り受けた土地は、かつては広大なセラード(ブラジル内陸中央部に広がる熱帯サバンナ地帯)の一部だった。数十年前に開墾されたが、その後、生産性が落ちたため放棄され、荒廃した牧草地となっていた。
   サンティノニさんは農学者のフェルナンダ・フェレイラ氏と協力し、トウモロコシや豆類などを輪作し、牛を放牧してたい肥をまいて土壌を豊かにし、何年もかけてこの荒廃した牧草地を徐々に肥沃な土地に戻してきた。と言うのであ。
   サンティノニさんは「私自身は巨大な全体の小さな一部分だと思っている」と話した。指差した先には「持続可能な方法で生命を養おう」というスローガンが掲げられていた。
   大豆生産は森林破壊と密接に結びついており、「持続可能性」という言葉とほぼ無縁だった。しかし、サンティノニさんによると、土地を新たに開墾するのではなく、やせ細った土地の再生に取り組む農家が増えている。
   ゴイアス州は国内第3位の大豆生産州。5月から9月の乾期は主要作物である大豆の収穫後の時期にあたり、農地では枯れた茎が乾燥した土壌に散乱し、あたり一面が黄色と茶色に覆われる。だが、サンティノニさんの農場は、8月になっても雨が降っていないというのに、豆や牧草が青々としている。
   「この土地で実践していることにより、私は地球の持続可能性に大きく貢献している」と、サンティノニさんは胸を張った。

   米農務省によると、ブラジルは近年、米国を抜いて世界最大の大豆生産国となり、今年の収穫量は1億5500万トンと過去最高を記録する見込み。大豆の作付面積は4500万ヘクタールとスウェーデンの国土に匹敵する。
   しかし、大半の耕作地は、アマゾンの原生林を破壊した大豆畑であり、サンティノニさんの農場のように、森林を破壊せずに、荒れ地や放置農場などを農地に再生して、農地拡大収穫拡大を推し進める運動が進展して行くことを祈りたい。

   これが、ブラジル農業のトレンドになるのかどうか、私も、かって、4年間ブラジルに在住しており、ブラジル人気質をよく知っているので、自主性には頼れないので、政府が強力にイニシャティブを取って強引に進めない限り無理であろう。
   しかし、その政府が信頼できない。政財官の癒着などで、アマゾンの自然環境の保護は勿論、行政を司る現地政府機関は殆ど有効に機能せず、アメリカの巨大な農機具や食料会社など多国籍企業が跋扈しており、原始林は、危機に瀕してきたのだが、それに輪をかけて、ボルソナロが、逆に、環境保護の予算を削り、先住民保護区を破壊して、積極的に開発を進めて、アマゾンの命運を危機に追い込み、地球環境の破壊と地球温暖化に拍車をかけてきた。
   無法者を傍若無人に泳がせて農地を拡大する安易で安上がりなアマゾン破壊にブレーキをかけるのは、至難の業であろう。

   それはそれとして、アマゾン以外は殆ど問題にはならないが、ロシアの永久凍土の保護や、中国やインドの水系や自然保護など、広大な国土と自然環境を支配しているBRICSに箍を嵌めない限り、宇宙船地球号の未来は極めて危ういと言うことを忘れてはならない。

(追記)口絵写真は大豆畑を歩くアメリカダチョウ
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NHK:自然にも“権利”を 法律は地球を救えるか

2022年11月20日 | 地球温暖化・環境問題
   NHK BS1で、「自然にも“権利”を 法律は地球を救えるか」を観た。
  「自然」を法人として扱い、川や森、野生動物の代理人として、企業や政府と司法の場で闘うという新たな発想に注目する。こうした環境保護の戦略は希望をもたらすのか…。と言う、非常に興味深い番組で、ポーランドの原始林保護や、エクアドルのガラパゴスのサメ、ニュージーランドのファンガマイ川やフランスのロワール川の法人化を題材にして、自然保護の現状を語っている。NGOの活動だけでは、埓が開かないので、自然も人間と同じ権利を持つべきで、法律で地球を救おうという試みである。

   NHKの概要説明を、そのまま引用すると、
環境保護活動の新たな手法として注目を集め始めているのが「自然」を法人として扱い、川や森、野生動物の代理人として、自然を壊す企業や自然を守る義務を果たさない政府と、立法や司法の場で闘うという発想だ。先住民が崇拝する川に法人格を認める法案が可決されたり、欧州司法裁判所が森林伐採の中止を命じたりした事例を取材し、新たな自然保護の戦略の未来を探る。 原題:Green Justice(フランス 2021年)

   殆ど死滅したと思っていた原生林が、まだ、ヨーロッパに残っていると知って驚いた。
   それは、ポーランドとベラルーシの国境にあるヨーロッパのAmazonと呼ばれているビャウォヴィエジャの森である。
   ポーランドの環境大臣が、害虫拡散防止と称して森を大々的に伐採したので、世界各地から集まった環境保護団体やNGOが積極的に抗議活動を行って阻止したが埓が開かず、EU委員会に提訴して勝訴して、法律違反でEUがポーランド政府に伐採停止命令を発した。しかし、伐採された森を回復するために100年掛かるという。

   もっと進んでいるのはエクアドルで、2008年に、憲法を改正して、自然にも権利があると定めたのである。
   新任のコレア大統領が環境保護団体の意見を採り上げて先住民も加わって、憲法に、自然の生存権を盛り込んだ。
   この法案での最初の原告は、ガラパゴス近海のサメで、中国船の常軌を逸したサメ乱獲に対してであった。
   ガラパゴスには、多くの絶滅危惧種が生息していて保護区への立ち入りが厳しく禁止されているのだが、2017年に、漁船の立ち入り禁止の海洋保護区に、中国の冷凍船が侵入したので拿捕して調べてみると、船内には膨大なサメの死骸、頭と鰭を切り落とされたサメの胴体を調べてみると、全数6226匹。
   大々的なデモや抗議活動が巻き起こり、船長以下乗組員に3年の実刑判決と600万ドルの罰金判決が下されて、世界中に横行する密漁禁止への一里塚となった。
   また、同国のロス・セドロス生物保護区では、280匹に激減して絶滅を危惧されているクモザルを保護するため、法に訴えて鉱山会社の破壊を阻止したという。自然の法人格を憲法で規定したエクアドルだから出来た快挙である。
   私は、ブラジル駐在の時に一度だけキトーを訪れたことがあるが、非常に貧しい最貧国であったが、リーダーが英明であれば、どんな国でも素晴しい指針になる査証で感激している。

   川の権利が認められたのニュージーランドのファンガヌイ川、
   マオリ人達が神聖な川として守り続けてきた川が、往来が激しくなり発電など開発で流れを変えられたりしたので訴えたところ、議会は、川も命ある実在物であると法人格を認めた。それ以降、マオリの代表者会議がこの川の権利を一切継承して保護することになった。

   このニュージーランドの例に倣って、立ち上がったのはフランスの唯一自然の流れを残しているロワール川。
   法学者が中心となって、ロワール川にも法人的な人格を持たせて保護しようとロワール議会を立ち上げて活動している。
   自然環境保護に対して裁判を起して、政府に勝利したフランスであるから、企業の利益至上主義と政府の怠慢故に、ドンドン、自然環境を破壊して、宇宙船地球号を危機に追い詰めている悲しい人間の性を、押しとどめてくれるであろう。
   このロワール川だが、流域に美しい古城が建ち並んでいて、車でハシゴすると人類の遺産の凄さを感じて感激の限りだが、レオナルド・ダ・ヴィンチの終焉の地に立ったときには、感動してしばらく動けなかった。
   このロワール川が原発事故で汚染されていると言うのだが、とうとうと流れるロワール河畔に広がるワインの葡萄畑を見ていると、そんな悲劇など分からないほど、牧歌的で美しい。

   もうこれだけで、蛇足は避けるが、
   自然に恵まれた日本は、自然に人格を認め得るであろうか。

   日本には、プレイもしない人格もないはずのゴルフに法人会員権を認めて、会員権を売りまくって、日本中の美しい国土を、あばただらけの哀れな姿に変えてしまった。
   私もジェントルマンクラブRACのメンバーであったが、イギリスのクラブは、選ばれた資格のあるメンバーのみの会員で構成されてており、入会は簡単ではない。普通2名の会員の推薦を受けて入会申請して、書類審査を受けて、長い間待って、厳しい面接試験をパスしてジェントルマン(?)と認められてメンバーとなれる。
   クラブのメンバーになるのは非常に難しくて何年も待たなければならないので、嘘か本当か、男子が生まれると、すぐに入会申請を出すという話もあるほどである。
   RACは、当然、ゴルフコースを持っているので、ゴルフ会員権は付属しているのだが、私はゴルフをしないので活用しなかった。
   私がヨーロッパに居た頃には、Japan as No.1の時代であったので、お金さえ払えば会員権を取得できて、自由にプレイできる日本から沢山のゴルフ中毒の日本人ビジネスマンが、ヨーロッパのゴルフ場に押しかけたのだが、メンバーではないし、出来たとしても、派手なコンペなどジェントルマンらしからぬ行為で風紀を乱したと言うことで顰蹙を買い、ゴルフ場から排斥されていたことがあった。
   勿論、カネにあかせて、日本の業者が進出して、新しいゴルフ場を作ったのだが、どうなったことか。   

   このような法人格を融通無碍に解釈する法治国家の日本だが、残念ながら、自然に対する法人格認定に関しては、何でもイチャモンを付けて妨害する団体が多いので、望み薄だと思っている。
   

   
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地球温暖化:欧米を襲う異常な熱波

2022年07月21日 | 地球温暖化・環境問題
   東京新聞が、「欧州熱波、死者相次ぐ 英国で史上最高気温、40度超(口絵写真)」と報じている。
   欧州各地で熱波の影響が続き、英気象庁によると、ロンドンのヒースロー空港で19日、観測史上最高気温の40・2度(速報値)を記録した。英国で40度を超えるのは初めて。英BBC放送によると、スペインやポルトガルでは高温に起因するとみられる死者の数が計千人以上となった。山火事の被害も拡大している。熱波は今後北上するとみられ、ベルギーやドイツでも気温が40度近くになる可能性がある。
 英国の過去最高気温は2019年7月に南部ケンブリッジで観測された38・7度だった。気象庁によると、39度以上の観測地点も複数に上り、多くの都市で記録を更新した。と言うのである。
   日経には、殆ど報じられてはいないが、BBCやABC,NHKの国際報道ではトップニュースだし、テレビでも頻繁に報道されている。
   ABCでは、同様に、アメリカでは所によっては、華氏110度をオーバーして、熱波による、高温や火災で、各地で被害が多発していると報じている。
   カナダ・ブリティッシュコロンビアで49.5度:500人が死亡、さらに、7月11日には、カリフォルニア州のデスバレーで、54度を記録。これは、地球上で観測された最も高いレベルの気温だと言う報道もある。

   その原因は、偏西風の南北への持続的な大きな蛇行によると言うことだが、この異常気候の引き金を引いたのは、当然、持続している地球温暖化によることは、間違いないという。

   蒸し暑い日本では、40℃を越えると、暑くて大変だという感覚で通せても、日頃30℃越えさえ珍しいロンドンで、40℃を越えるとどうなるのか。
   大分前になるので、現状は違うかも知れないが、私自身、アムステルダムに3年、ロンドンに5年住んでいて、エアコンなしで何の不都合もなく快適に過ごしていたので、不思議な感じである。
   HowTravelの資料を借りると、
   
   ロンドンの最高温度は、東京の最低温度にほぼ近似していて、夏の最高温度でも、25℃くらいで、今でも殆ど変らないようで、普通の家庭では、夏のエアコンは使っていないと聞いている。
   当時、ロイヤル・オペラ・ハウスなど劇場には、エアコンがなかったので、何度か蒸し暑い思いをしたことがあるが、家では、冷房が欲しいなあと思ったのは、年に、5~6日くらいであった。
   エアコンが効いていたのは、米系のホテルやレストランくらいで、勿論、一般の公共施設などにも冷房など完備されてはいなかった。

   40℃越のヒースロー空港に近いキューガーデンに住んでいたので、エアコンがなければ、どう過ごせたか全く自信がない。
   キューの植物園には直近だが、メトロ駅も目と鼻の先なので、窓を開けて寝るわけには行かない。

   2022年自体でこのような現状であり、ウクライナ戦争で、エネルギー異変が生じて、石炭火力の復活など、逆行する動きが出ており、「2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ」など、実現しそうにない。
   もっと、悲劇的なのは、環境破壊に対して一顧だにしないトランプの陰が一向に消えないことである。トランプ政権が実現すれば、温室効果ガス排出量実質ゼロに逆行して地球環境を更に窮地に追い込み、宇宙船地球号に止めを刺すことは間違いない。

   今日の日経のイアン・ブレマーの「手が付けられぬ米国政治の混乱」で、
   「トランプ氏の大統領退任直前の日々や、多くの側近の行動に関する新たな事実が判明した。2021年1月6日の議会襲撃を調査する下院特別委員会は、同氏による20年大統領選後のクーデター計画の明確な証拠を公表した。それでもなお、トランプ氏や支持者の法的責任追及を確信する人はワシントンにはいない。しかも、現時点の世論調査ではトランプ氏はなお24年大統領選で共和党の最有力候補だ。共和党有権者の7割がバイデン氏を正当に選ばれた大統領だと認めておらず、多くはトランプ氏を大統領に復帰させても構わないと答えている。他国から見れば米国の民主主義は手がつけられない状態だ。」

   アメリカの民主主義は、何だったのか。
   チャーチルは、民主主義にたいして「実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。 これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。 」と言ったというのだが、
   結局、ギリシャ時代へ逆転して、トランプの愚行を止め得ない愚民による衆愚政治には勝てないと言うことであろうか。
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エスファハーン旱魃で干上がる

2022年06月13日 | 地球温暖化・環境問題
   今夜のNHK BS1の国際報道2022で、イランの古都エスファハーンが、地球温暖化の被害を受けて、異常な旱魃で干上がっていると報道していた。
   エスファハーンは、16世紀末にサファヴィー朝の首都として発展した東西交易の要所で、「イランの真珠」と称されるほど美しい都市で、ユネスコの世界遺産に登録されている。
   この口絵写真のジャーメ・モスクなどが、地下水汲み上げで地盤沈下して、美しいタイルの壁面に亀裂が入って毀損し始めているというのである。
   私は、イスラム圏では、サウジアラビアしか行っていないので、この素晴らしさは分からないが、スペインのグラナダのアルハンブラ宮殿へは、2度訪れているので、イスラム建築やその美については痛く感激しており、これらの毀損崩壊は、大変な人類遺産の損失だと思って心配している。
   

   放送の冒頭の映像は、33のアーチを備えた、アッバース2世の時代に完成した美しいハージュ橋で、満々と水をたたえて大河に影を映していたのが、今では、完全に干上がって川底を露出した大地に立った陸橋のような姿になっている。
   次の写真集の左上の橋で、開閉式になっていてダムとしても利用されているようだが、水が殆ど流れていないので、水のためようがない。
   エスファハーンの干上がった田園地帯では、多くの農地を放棄しながらも、200㍍の井戸を掘って汲み上げた地下水を使って、細々と小麦を耕作している様子を紹介している。
   このあっちこっちでの地下水吸い上げで、陥没や地盤沈下を起して、各地の文化遺産は勿論、一般市民の住宅にも打撃を与えて崩壊寸前だという。
   

   NHKの国際ニュースで、パキスタンの干害の酷さも報道していて、小麦生産の被害が壊滅的で、ウクライナ戦争の余波も絡んで、大変な食糧危機だと言う。
   インドの47度を超す熱波による被害も致命的で、これら報道されているのは、殆ど氷山の一角であろう。
   ロシアの国際秩序破壊戦争の悪影響が重なって、世界中、特に、弱者の最貧国の人々に与える食糧危機とその被害の甚大さは、いかばかりか、
   それに、コロナの蔓延問題も、まだ、終熄しておらず、発展途上国の社会を苦しめている。

   少し話が飛ぶが、中国による南太平洋諸島への進出が話題になってるが、隣国のオーストラリアを袖にして西側との距離を置くのは、オーストラリアが地球温暖化に対して消極的であったからだという。
   これら南太平洋諸島の国々にとっては、地球温暖化による海面上昇で国土が蚕食される危機は、まさに、死活問題なのである。

   地球温暖化の影響は、徐々に、地球のエコシステムを窮地に追い込み、地球が耐えきれずに、悲鳴を上げている。
   
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ビル・ゲイツの家畜の糞尿作戦

2022年02月02日 | 地球温暖化・環境問題
   ビル・ゲイツは、先にレビューした「地球の未来のため僕が決断したこと」で、僕の家族にはチーズバーガーの血が流れている、との書き出しで、
   第6章の「ものを育てる」で、動植物の食品の生成について興味深い展望をしている。
   Wikipediaにも、ビル・ゲイツは、”小食として知られ、妻によると朝飯は食べない。食事はファーストフードが好物で、食生活はマクドナルドが中心だという。”と書かれていて興味深い。

   問題は、この牛肉を作る過程での、食用に動物を育てることは、温室効果ガスの排出の大きな要因であり、環境問題に深刻な問題を惹起していることである。
   この部門には、家畜の飼育から作物の栽培、木の伐採まで広範囲に及ぶ人間活動が含まれるが、農業での最大の悪者は、二酸化炭素ではなく、メタンガスと亜酸化窒素で、二酸化炭素と比べると、メタンは100年間で分子一つあたり28倍、亜酸化窒素は265倍の温暖化を引き起こす。このメタンと亜酸化窒素の年間排出量を合わせると、二酸化炭素70億トン超に相当し、農業林業その他の土地利用部門の全温室効果ガスの80%を超える量で、これに歯止めをかけなければ、今後人口が増えて豊かになって行く世界に合わせて食糧を生産するうちに、排出量は更に増えて行く。
   排出実質ゼロに近づくためには、温暖効果ガスを減らして、最終的には除去しながら、動植物を育てる方法を考え出さなければならない。

   このメタンだが、世界中でおよそ10億頭の牛が牛肉と乳製品のために育てられているが、その牛が1年間にげっぷやおならで出すメタンには、二酸化炭素20億トンと同じ温室効果があり、これは地球上の全排出量の約4%にあたる。この現象は、反芻動物すべてに固有の問題で、これに、更に、糞尿の排出が加わる。
   糞が分解されると、強力な温室効果ガスの混合物、主に亜酸化窒素で、それにメタン、亜硫酸ガス、アンモニアが加わったもので、豚の糞が約半分である。
   新技術で、排出量を減らす試みがなされており、豊かな先進国では食糧の改良など排出を削減する方法や糞尿処理技術の向上など行われているが、南アメリカの牛は、北米の牛の5倍の温室効果ガスを出し、アフリカの牛はそれを更に上回る。
   この南北格差の解消は、何処まで行っても環境問題の難問である。

   さて、肉食を減らしながら肉の味を楽しむ一つの選択肢は、様々な方法で肉のアジに似せた植物製品の代替肉である。
   ビル・ゲイツは、植物由来の肉の製品を市場に出している二つの会社に投資しており、人造肉はかなり美味しく、きちんと調理すれば、本物に引けを取らない牛挽き肉の代替物になる。それに、これらの代替肉は、すべての分野において、本物の肉より、地球環境にやさしい。と言う。
   しかし、現時点では、初歩段階なので、牛挽き肉の代替物は本物より86%高価で、グリーン・プレミアムは高い。
   それに、人造肉の最大の課題は、価格ではなくて味で、ハンバーガーの食感を満足させ得ても、ステーキや鶏の胸肉となると、本物感はずっと難しく、切り替えたいと思うほど、人造肉に人気が出るかは疑問だという。
   
   先日の日経に、”タイ・ユニオン、植物性「魚肉」に的 資源保護の波高く ツナやエビ、欧米向けOEM 自社ブランドも展開”と言う記事で、
   ツナ缶世界最大手のタイ・ユニオン・グループが代替シーフードの事業化に本腰を入れる。植物由来の原料を使った代替ツナや代替エビのOEM(相手先ブランドによる生産)を欧米向けに受託。自社ブランドの展開も始めた。世界的に水産資源保護の機運が高まる中、投資家らが求めるESG(環境・社会・企業統治)への対応を迫られている。と報じていた。
   いずれにしろ、植物由来の肉や魚と言った動物性タンパク質の食材が、どんどん、植物から生産されて行くことは、トレンドであろうから、科学技術の進化、イノベーションによってブレイクスルーすると期待しても良いではないかと思っている。

   もうひとつビル・ゲイツが指摘する方法は、実験室で肉そのものを育てる方法、「細胞肉」「培養肉」「クリーンミート」である。
   実験室で、生きた動物から細胞を少し採取して、その細胞を増やして、人間が食べなれている組織になるように導く方法で作る肉なので、偽物の肉ではなく、本物の動物のように脂肪、筋肉、腱が総べてついている肉である。温室効果ガスは一切排出せず、使用するのは電気のみである。
   既に、20数社のスタートアップ企業が商品化を目指しており、スーパーには、おそらく2020年代半ば以降に出るだろうという。

   ところで、イノベーションには、魔の川・死の谷・ダーウィンの海の越えなければならない難関があるが、実現に成功したとしても、善悪は別として、政府組織や消費者団体など色々な組織から、横やりや反対運動が起こってくる。
   例えば、産業革命時のラッダイト運動、遺伝子組み換え植物への反対運動、などである。
   アメリカの少なくとも17州で、これらの製品を肉と言う名称で販売するのを議会が禁止しようとしている。また、ある州では、」人造肉の販売そのもを禁止するよう提案している。技術が進歩して製品が安くなっても美味しくなっても、しれを如何に規制して、パッケージ化して、売るかについては、しかるべき公的な議論が必要になると言うのである。
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ファッション企業:ワインの副産物でレザー

2022年01月25日 | 地球温暖化・環境問題
   WIREDが、”ワインの副産物から生まれる合成皮革が、ファッション業界を変える”を報じた。
   2016年に、ヴァレンティーナ・ロンゴバルド(口絵写真)が設立したイタリアのブランド「VEGEA」が、ワインの製造時に出る副産物をレザーの代替品であるヴィーガンレザーに生まれ変わらせるという、驚きの技術を現実のものにしている。そのきっかけとは、ほかの共同創業者と一緒に「ブドウの廃棄物を再利用してバイオ素材を開発するという大胆なアイデアを思いついたこと」だという。
   完成したヴィーガンレザーは完全に植物性であるだけでなく、一般的な合成皮革に使われている石油化学製品も使っていない。「ワインの製造過程でブドウの実を圧搾したあと残る皮や茎、種を使っています。これに植物性油脂を混ぜて、見た目も手触りも本物の革のような素材に仕上げているんです」と、ロンゴバルドは説明する。さまざまな質感、色合い、弾力性、厚みのものが揃うVEGEAの生地は、有害な毒素や汚染物質を含まないうえ、「製造施設の電力は再生可能エネルギーでまかなっている」という。のである。
   この画期的な取り組みにより、VEGEAはH&M Foundationが主催する「Global Change Award」を受賞した。「この賞のおかげで、わたしたちのイノヴェイションはさらにスケールアップしました。何より大きかったのは、ファッション業界とのつながりができたことです」と、ロンゴバルドは語る。VEGEAは昨年、H&M Conscious Exclusiveコレクションで、自社素材を使ったシューズやバッグを発表した。と言うことである。

   蛇足ながら、H&M のホームページを開くと、「サステナビリティ」を重視していることが良く分かる。

   私は、今、ビル・ゲイツの「地球の未来のために僕が決断したこと」を読んでいるところなので、特に興味を持ったのだが、ファション王国の若い起業家が、斬新な素晴しい芸術的なファッションではなくて、レオナルドのようなイノベイティブな発明発見を生み出したことに、非常に感銘を受けたのである。
   随分昔のことになるが、イタリアに行くと、ミラノの街の中などを、あっちこっち迷い込みながら散策することが好きだったので、あてもなく歩き回ったことがあるが、ミラノの名だたるファッション企業の本拠や事務所が、気づかないような路地裏にひっそりとあったりしてビックリしたことがある。イタリアでは、いくら世界に冠たる企業であっても、ルネサンス時代の個人経営や工房の雰囲気をそのまま残して息づいているようで、その片鱗を垣間見て嬉しかったのを覚えている。
   これに似た雰囲気は、京都にもあって、街中のひっそりとして路地に、伝統を守りながら上質な伝統工芸品などを商っている老舗の店が息づいているのを見ることが出来る。
   
   ブドウ園が喜んで協力してくれるのは、生産者が捨てるしかないものを衣類や家具、包装などに利用できる美しい生地に変えているからだと言うのだが、世界の資源には限りあるので、ファッション業界の循環を成り立たせるには、このようなイノベーションがもっと必要なのだと、よりサステイナブルなファッションの実現に貢献したいというこの取り組み、
   このような新たな技術こそが、資源が無限だと言わんばかりの過剰消費が地球のエコシステムを破壊し、いまの世界に与えている過重な環境負荷を低減するだけでなく、次の世代が生きる未来の世界をよりいいものにしてくれることだろう。と言うのである。
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斎藤幸平:日経「民主主義、気候変動でも試練」

2022年01月11日 | 地球温暖化・環境問題
   斎藤准教授の「人新世の「資本論」」」が脚光を浴びていて興味深いのだが、まだ、この本は読んでいない。
   面白かったのは、NHKで新春に放映された「欲望の資本主義2022」での斎藤准教授とセドラチェックとの資本主義・社会主義・共産主義と言った体制論争で、その知識の範囲内で、今日の朝刊の日経の「民主主義、気候変動でも試練」という論文についての感想を述べてみたい。

   まず、斎藤准教授の考え方は、次のようなものではないかと思っている。
   資本主義は利潤追求であり、これが価値を持続的に増殖して経済成長を促進させて、地球を破壊してきた。原初のような「コモン」を形成して、生産手段を社会的所有に変え、意思決定を民主的に行う体制を確立して、地球環境を守るべきであると主張する。
   人類の経済活動が地球に与えた影響があまりにも大きいために、地質学的に見て地球は新しい年代に突入したとして、ノーベル化学賞学者パウル・クルッツェンが「人新世」と称したので、この現在の人新世の「資本論」を説く。

   より公正で、持続可能な社会を志向するために、万人にとって生活に必要なコモンズ(共有財産)を、水や空気のように、生産手段を「使用価値」として共同体で管理する必要があり、脱成長と平等からなる「脱成長共産主義」を確立することである。
   そのためには、①「価値」ではなく、「使用価値」に重きを置いた経済に転換して、大量生産・大量消費から脱却する。②労働時間を削減して、生活の質を向上させる。③画一的な労働をもたらす分業を廃止して、労働の創造性を回復させる。④生産のプロセスの民主化を進めて、経済を減速させる。⑤使用価値経済に転換し、労働集約型のエッセンシャル・ワークの重視 によって経済成長をスローダウンさせることである。とする。

   利潤追求に汲々とする資本主義は、資本の寡占・独占に突き進み官僚化、階層化かを激化させる。と言う。
   しかし、アリストテレスの「コモンズの悲劇」が示すように、共有財産であったコモンズの牧草地は、放牧しすぎて誰も利用も管理するものもなく皆が利用するだけで荒廃したが、これは共産主義者が我々の土地から収奪しただけだったのと全く同じだとセドラチェックは指摘する。
   また、私利私欲や利己主義に左右されず 中央計画が実行されれば、民衆の幸福と公共の利益を実現させる筈の政治体制が、何故、実現せずに破綻したのか。机上の計画が実現されたこともなければ、共産主義は、悉く失敗した。とセドラチェックは言う。

   さて、資本主義の暴走(?)によって、地球環境エコシステムを窮地に追い込み、格差拡大を増幅するなど、現下の資本主義の蹉跌については認めるとしても、斎藤准教授の言う理想としか思えないようなコモンズをどのようにして確立して、誰が管理運営するのか、定かではないが、国家や独占的企業などではないことは確かで、地域共同体や労働者によって共同管理される会社などのイメージであろうか。
   しかし、そのような運営組織が、現下の政治経済社会で、上手く生まれて機能するとは、容易には考え難い。

   「脱成長コミュニズム、脱成長共産主義」だが、計画的なコミュニズムをイメージするならば、ソ連や冷戦以前の共産主義社会は例外としても、中国などの今様共産主義国家を考えるしかないが、人権など文化文明にとって最も重要な公序良俗を軽視する専制国家であって、理想的な社会だとは思えない。そして、全く逆に、経済成長に至っては、中国の最大最高の至上命令であって、世界中の生産手段を独占しようという勢いで、公害に至っては、世界最大の地球温暖化ガスなどの排出国で国土が汚染塗れの公害大国であり、その終熄の目処さえ立っていない程酷い状態である。
   斎藤准教授の言う「脱成長コミュニズム」の5条件には、欧米先進国と比べても、最も実現不能な国であり、
   中国のイメージでなければ、そのような「脱成長コミュニズム」をどのようにして作り上げようとするのか、
   そのような理想社会が、民衆の自発的な意思で、容易に生まれ出でるとは到底思えなし、理解に苦しむ。

   アダム・スミスの「見えざる手の導き」やヨーゼフ・シュンペーターの「創造的破壊」などの多くの先哲の教えに導かれて、右往左往しながら多くの錯誤誤謬を繰り返しながら紆余転変を経て今日ある資本主義の方が、はるかに、人類にとって価値ある体制だと思っている。
   大企業が寡占化独占化で富を集中して人類社会に極端な格差拡大を惹起したのは、哲学と指針を示して軌道修正なり方向付けをし実行できなかった政治経済体制の失敗であって、弱点が強化されすぎて迷走しているが、パンデミック対応時のような大権を行使して、方向付ければ、修正可能であろうと思う。
   何が、人類の未来にとって大切か、宇宙船地球号をサステイナブルにするにはどうすれば良いのか、資本主義国のリーディング国家が衆知を集めて対応できれば、「脱成長コミュニズム」を目指すよりも、はるかに、理想的で実現可能だと思う。
   私自身は、計画経済や権力集中のコミュニズム体制が、当座の中国のように成長街道を突き進んで権力基盤を拡大し続けようとも、自由平等博愛を旨とする民主主義には代えられないと思っており、相協和しながら成長してきた資本主義の修復軌道修正こそ大切だと信じている。
   以上の論点については、「人新世の「資本論」」も、マルクスの「資本論」なども読まずに論じているので誤解があるかも知れない。
   
   さて、横道に逸れてしまったが、斎藤准教授の気候変動危機論だが、
   人類の経済活動が地政学的力として、この惑星に何万年にも及ぶ負の影響を与え、人類がその力に翻弄されている「人新世」において、コロナ禍はその象徴で、過剰な森林伐採、工業型畜産、野生動物取引が感染症流行のリスクを高め、社会は大混乱に陥っている。気候危機も同様だ。先進国が、死活問題の温暖化を1.5度に抑える目標を掲げられないのは、経済成長とは両立不可能だからだ。と説く。
   1.5度目標のためには、緑の資本主義やESGのような市場のインセンティヴでは間に合わず、包括的な経済計画が必用であり、かつ、資本主義に緊急ブレーキをかける計画と強制が必用となり、やがて、「上からの統制」による全体主義に帰着する。と言う。
   全体主義を避けて進む道はないのか。
   いずれにしろ、民衆からの強い圧力なしに、国家は市場を犠牲にする気候変動対策には取り組まない。社会運動や社会的企業、自治体のボトムアップ型の民主主義は不可欠だ。として、「コモン(共有財産)」として管理する国際連帯があってこそ、資本主義と対峙する大胆な気候変動対策が見えてくる。と、
   バルセロナやベルリンで胎動しつつある革新自治体の国境を越えた取り組みを説明している。

   前述したように、斎藤准教授の「脱成長コミュニズム」論については、カウンターベイリング・パワーとしての理論価値は認めるが、私は取らないことを付記しておく。

   この「コモンズ」から、「脱成長コミュニズム」についての理論は、もう少し勉強しなければならないが、この日経論文の斎藤准教授の説く気候変動の危機の打開に対する個々の提言には、殆ど異存はない。
   
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今回のCOP26は今までとは違うのであろうか Will This COP Be Different?:ケネス・ロゴフ

2021年11月09日 | 地球温暖化・環境問題
   『国家は破綻する――金融危機の800年』の著書ハーバードのケネス・ロゴフ教授のプロジェクトシンジケートの論文
   Will This COP Be Different? Nov1,2021 Kenneth Rogoff, を考えてみる。

   まず、ログフ教授の論文の概要は、次の通り。

地球温暖化を1.5度以下に維持すると言うことは、可能であろうが非常にハードルが高い。
グラスゴーのCOP26で、グリーンエネルギー源について議論は沸騰しているが、パリ協定にも拘わらず、現下では、いまだに、化石燃料へのグローバルエネルギー依存率は80%だと言う事実を看過できない。多くの国家の経済が、パンデミック以前の状態に回復していないにもかかわらず、2021年には史上2番目に高い炭酸ガス排出量を記録している。
IEAの世界エネルギー見通し2021年版では、地球温暖化を制限するために何ができるかに重点を置くことによって楽観的なノートを出している。

しかし同時に、「ドアを摂氏1.5度に開いておく」には、非常に多くの可動部分、革新、適応、そして、犠牲が含まれており、ほとんどのエコノミストが必要だと考えているグローバルな炭素価格なしで、どのように機能するかのを見通すのは難しい。特に、炭素税は、国家計画者が単に達成できない方法で、排出削減の取り組みにインセンティブを与えて調整し、それに応じてリソースを割り当てる。

炭素税の考えは、米国では依然として政治的な難問である。それは最近の予算交渉で一時的に議論されたが、即時却下された。代わりに、バイデン大統領は、電気自動車への移行や化石燃料開発の終結など、良いアイデアではあるが、炭素税よりもはるかに高価で効率が悪い措置を推進せざるを得なかった。

EUは、排出量取引システム(炭素税に代わるキャップ・アンド・トレード・オプション)を導入して、炭素プライシングへの進展を遂げた。それでも、このスキームは現在、EUの温室効果ガス(GHG)排出量の約50%しかカバーしておらず、残りの多くは手付かずである。

その後、新興国や低所得国の政策立案者は、気候変動対策のために自国の経済発展を減速させるリスクを求められると、非常に皮肉に反応するのも不思議ではない。彼らの多くは、代わりに、地球規模の気候協定が、総ての国に、一人当たりの排出量を同様のレベルに達成すべくプッシュしないのかと疑問を呈している。

世界の炭素税が魔法のように通過したとしても、世界は、発展途上国に、将来の主要な排出国にならないように、資源とノウハウを与えるべきメカニズムを必要とする。私は、技術的な専門知識を収容し、ベストプラクティスの交換を促進し、低所得国へ数千億ドルの助成金と融資を促進する専用の世界炭素銀行を設立するという考えを推進した。

途上国からのバイインは不可欠です。世界のCO2排出量の30%を占める石炭は、インドや中国などの国々で安価で豊富に産出する。21カ国が石炭火力発電の段階的廃止を約束しているが、ほぼ総てがヨーロッパ諸国であり、世界の石炭火力発電所の約5%しか占めっていない。しかし、中国単独で、世界の石炭火力発電の半分を占めており、ヴェトナムなど他の諸国が自身で更に石炭発電所を作ろうとしている。
さらに、炭素税があっても、規制当局は、風力タービンを建設できる場所、従来の石炭火力発電所の段階的廃止方法、移行エネルギー源として天然ガスをどの程度使用できるかを決定するなど、無数の問題に取り組む必要がある。
風力と太陽光は断続的なエネルギー源であるので、原子力発電を強化するための新たな強い推進の動きがある。これは、大規模な発電所と原子力潜水艦で使用されている小規模発電機の両方を構築しようと、はるかに安全な近代的な技術を使用することを目論む。

緑の政党はそのような考えに固執するかもしれないが、気候リテラシーはエネルギーリテラシーと融合させる必要がある。2050年までに「ネットゼロ」のCO2排出量を達成するためには、その時には世界人口が現在よりも20億人増加している可能性があるので、諸種のの困難な選択が必要となる。
政策立案者や国民にこれらの選択に立ち向かうよう説得することは容易ではない。今夏風が不足して、ヨーロッパに、現在のエネルギー危機を知らしめたので、指導者達に、ロシアのプーチン大統領に、より多くの天然ガスの供給を期待させた。同様に、エネルギー価格が今年の冬に高騰しているので、バイデンは、彼の政権が国内の化石燃料生産を減らそうとしているにも拘わらず、OPEC諸国に、石油の増産を求めている。

化石燃料投資の資本を遮断することを目的とするESG投資は大流行しており、しばらくは、良好なリターンを示していているのだが、エネルギー価格が再び急騰すると、そうではなくなるかも知れない。いずれにせよ、米国やオーストラリアを含む先進国が化石燃料探査を禁止したとしても、発展途上国は、自国のCO2排出資源の搾取を拡大する強力なインセンティブを持ち続けることになろう。

IEAは、たとえ困難なターゲットであろうとも、地球温暖化を達成可能な目標として摂氏1.5度に制限しようと考え続けようとしていることは励みになる。残念ながら、この目標を達成するための政治的努力が、科学者が地球がどうなるかを語るのと同じように、同じくらい速くヒートアップするかどうかは、非常に問題である。
したがって、気候サミットに関しては、COP26が魅力的な結果を示すことを願うのみである。

   多少の誤訳はあるかも知れないが、以上がロゴフ教授の見解である。
   一般的な考え方の叙述なので、新鮮味はないのだが、カーボンプライシングでの多少の進展があったとしても、私が、地球温暖化や環境問題について、このブログで書き続けてきたことから殆ど進展がなく、グローバルベースの無為無策の対応が続いているだけで、どんどん、状況が悪化して行って、このままでは、煮えガエル状態のまま、タイムアウトしてしまうような気がして仕方がない。
   トランプのような徒花が咲いて軌道を外し、やっと4年後に、バイデンが登場して焦っても、環境対策予算が暗礁に乗り上げ、中国やロシアが欠席するCOP26で、どんな実りある進展が見られるのか、期待出来そうにないように思う。
   人類が自分自身で地球温暖化を悪化させて、地球を窮地に追い込んでエコシステムを破壊し、世界中で、今までに経験したことのないような破壊的かつ壊滅的な異常気象に叩かれて呻吟しているにも拘わらず、殆どの人には、目に見えた形で死地を彷徨うような経験がないので、まさに他人事。
   早く目覚めないと、宇宙船地球号が壊れてしまう。
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WP:全米3の1が、この夏、気候災害に遭遇

2021年09月05日 | 地球温暖化・環境問題
   ワシントンポスト紙が、「およそ全米3の1が、この夏、気候災害に遭遇 Nearly 1 in 3 Americans experienced a weather disaster this summer」と報じた。
   ”気候変動が、激しい嵐、火災、ハリケーン、沿岸地帯の嵐や洪水を捲き起こして、何百万人のアメリカ人を恐怖に陥れた Climate change has turbocharged severe storms, fires, hurricanes, coastal storms and floods — threatening millions”というのである。

   まず、WPの電子版の記事に掲載されているが地図とグラフを見れば、その気候変動の状況が良く分かる。
   
   地図は、降雨量比較 Rainfall compared to normal, June 4 to Sept. 2
   横棒グラフ左端(茶色)は、>95% drier than normal、右端(青色)は、200% wetter で、
   その3ヶ月間の乾燥と降雨の激増と激しい激変ぶりが良く分かる。

   先月末、ニューヨークのメトロに洪水が流れ込んでビックリさせた米国を襲ったハリケーン「アイダ」は、中部・大西洋地域や北東部に大水害をもたらし、ルイジアナ州に大規模な停電をもたらすなど甚大な被害を残したが、そこに気候変動による気温の上昇と都市開発によるヒートアイランド現象が重なって、さらなる“大惨事”をもたらした。猛烈なハリケーンの被害と「ヒートアイランド現象」が重なって、既にヒートアイランド化しているニューオーリンズなどの都市にとって壊滅的な打撃となっている。と『WIRED』が報じている。
   更にこの地図は、西部の記録的な旱魃と高温が地域を焼き尽くし、水資源に脅威を与えており、また、通常のモンスーン・シーズンよりも降雨量が異常に多かったアリゾナでは、大洪水を引き起こしたことを示している。

   
   上記のグラフは、気候変動被害が拡大していることを示している。特に、2018年以降の増加が顕著で、温暖化する地球がアメリカ人の生命を変えてしまっている。政府などの発表によると、6月以降、ハリケーン、洪水、熱波や火災で、少なくとも388人のアメリカ人が亡くなっている。
   パリ協定から離脱し、徹底的に地球温暖化と環境破壊を否定したトランプの失政の結果と言うべきか、天に唾したブーメランが帰ってきて、アメリカ人を恐怖に陥れている。としか思えない。
   まだ間に合う、まだ間に合う、と言い続けて、もう、何十年、
   茹でガエル状態で人類を窮地に追いやり続けるのか、ひ弱な宇宙船地球号を必死になって死守すべきか、
   "To be, or not to be, that is the question."の心境であろうか。

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アメリカ海洋大気庁(NOAA):July 2021 は歴史上地球で最も暑い月となった

2021年08月14日 | 地球温暖化・環境問題
   ワシントン・ポストのKasha Patelの”July 2021 was Earth’s hottest month ever recorded, NOAA finds”である。
   短い引用だが、昨今話題のトピックスなので、一寸、触れてみたい。

   金曜日に、アメリカ海洋大気庁NOAAが、2021年7月は、142年の歴史の上で、最高温度の月であったと宣告した。
   この新記録は、気候変動が地球に刻み込んだ道程へ、更に悪の里程標を刻むことになった。
   
   陸海混合温度は、20世紀平均を1.67度越え、2016、2019、2020年の7月を括った以前の記録より0.02度高く、記録上、2021年の高温は、トップ10にはいる。
   NASAの月例地上温度観察によると、2021年7月の地球温度の中央値は、1951-1980年7月平均より1.66度高い。
   7月に、特に、熱波は北半球を襲い、北半球の地上温度は、平均より2.77度高く、記録破りの高温が続いた。

   この月、少なくとも同時に、5つの heat domes「ヒートドーム(熱のおおい)」が、北半球を覆った。最悪はトルコで、大規模な山火事を引き起こした。北日本では、記録破りの高温で、オリンピック選手を汗だくにし、北アイルランドでは、5日間に2回も前代未聞の高温を惹起した。
   熱波は、6月下旬からこれまでにない高温をもたらし、北米の太平洋岸北西部を襲い続けた。更に、このヒート・ドームが、全米に広がり、大陸中央の州では100度Fを越える高温をもたらした。
   ヒートドームとは、下図のように、高気圧が広範囲にわたって鍋の蓋のように上空を覆い、熱い空気を閉じ込めた状態をいう   
   
   NOAAのデータによると、アジアが、史上最高温を記録し、ヨーロッパは、史上第2位の高温で、北米、南米、アフリア、オセアニアは、トップ10の高温だった。
   国連のIPCCが、shows clear evidence on how humans have changed our climate — including with extreme heat events.
   これら極端な高温熱波問題も含めて、気候を変動させて、地球環境を破壊している元凶は人類だと宣告したのである。
   8月になっても、高温と熱波はおさまらない。シチリアの気象庁は、伊シチリアで48.8度 ヨーロッパの観測史上最高気温を記録したと報道した。ギリシャも同様で、アテネデ48.0度で、大規模な火災が大地を蹂躙している。

   資源エネルギー庁によると、パリ協定では、
   世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
   そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
   ところが、先のIPCCの報告では、
   地球の2011~2020年の地表温度は、1850~1900年に比べて摂氏1.09度高かった 過去5年間の気温は1850年以降、最も高かった
   温室効果ガス排出量がどう変化するかによる複数のシナリオを検討した結果、どのシナリオでも、地球の気温は2040年までに、1850~1900年水準から1.5度上昇する
   と言う。

   更に、
   全てのシナリオで北極海は2050年までに少なくとも1回は、ほとんどまったく海氷がない状態になる
1850~1900年水準からの気温上昇を1.5度に抑えたとしても、「過去の記録上、前例のない」猛威をふるう異常気象現象が頻度を増して発生する
2100年までに、これまで100年に1回起きる程度だった極端な海面水位の変化が、検潮器が設置されている位置の半数以上で、少なくとも1年に1度は起きるようになる
多くの地域で森林火災が増える
   と言うから、現在のような生ぬるい温暖化対策をしていては、宇宙船地球号は無茶苦茶になってしまうと言うことである。
   今、梅雨の最後の時期で、日本中が、線状降水帯の恐怖に戦いているというのに、益々、状況が悪化して行くと言うことでもある。

   茹でガエル状態で、どんどん、人類が窮地に追い詰められて行くのか、それとも、起死回生のイノベーションの到来でブレイクスルーとなるのか、人類の英知が試されていると言えようか。
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IPCC:人間が地球を泣かせている

2021年08月10日 | 地球温暖化・環境問題
   国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日第6次評価報告書を発表し、人間が地球の気候を温暖化させてきたことに「疑う余地がない」とする報告を公表した。
   マット・マグラスBBC環境問題担当編集委員が、”温暖化は人間が原因=IPCC報告 「人類への赤信号」と国連事務総長 Climate change: IPCC report is 'code red for humanity'”というタイトルで、詳細に報告しているので、この資料を引用しながら、温暖化加速によって追い詰められて行く地球の危機について考えてみたい。

   IPCCは、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている」と強い調子で、従来より踏み込んで断定した。さらに、「気候システム全般にわたる最近の変化の規模と、気候システムの側面の現在の状態は、何世紀も何千年もの間、前例のなかったものである」と指摘した。
   国際社会がこれまで設定してきた気温上昇抑制の目標が2040年までに、早ければ2030年代半ばまでに、突破されてしまうと指摘。海面水位が今世紀末までに2メートル上昇する可能性も「排除できない」とした。「向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球温暖化は摂氏1.5度及び2度を超える」とも警告した。

   IPCC報告の要旨:現状について
地球の2011~2020年の地表温度は、1850~1900年に比べて摂氏1.09度、高かった 
過去5年間の気温は1850年以降、最も高かった
近年の海面水位の上昇率は1901~1971年に比べて3倍近く増えた
1990年代以降に世界各地で起きた氷河の後退および北極海の海氷減少は、90%の確率で人間の影響が原因
熱波など暑さの異常気象が1950年代から頻度と激しさを増しているのは「ほぼ確実」。一方で寒波など寒さの異常気象は頻度も厳しさも減っている

   IPCC報告:将来への影響について
温室効果ガス排出量がどう変化するかによる複数のシナリオを検討した結果、どのシナリオでも、地球の気温は2040年までに、1850~1900年水準から1.5度上昇する
全てのシナリオで北極海は2050年までに少なくとも1回は、ほとんどまったく海氷がない状態になる
1850~1900年水準からの気温上昇を1.5度に抑えたとしても、「過去の記録上、前例のない」猛威をふるう異常気象現象が頻度を増して発生する
2100年までに、これまで100年に1回起きる程度だった極端な海面水位の変化が、検潮器が設置されている位置の半数以上で、少なくとも1年に1度は起きるようになる
多くの地域で森林火災が増える

   これについて、英レディング大学のエド・ホーキンス教授は、「これは厳然とした事実の表明だ。これ以上はないというくらい確かなことだ。人間がこの惑星を温暖化させている。これは明確で、議論の余地がない」と述べた。と言う。
   1970年以降の地表温度の上昇は、過去2000年間における50年期間で最も急速なペースだった。こうした温暖化は「すでに地球上のあらゆる地域で、様々な気象や気候の極端な現象に影響している」。
   今年7月以降、北米西部やギリシャなどは極端な熱波に襲われている。あるいはドイツや中国は深刻な水害に見舞われた。過去10年の相次ぐ異常気象が「人間の影響によるものだという結びつきは、強化された」と報告書は指摘している。
   

   海面水位の上昇については、さまざまなシナリオによるシミュレーションが行われた。それによると、今世紀末までに2メートル上昇する可能性も、2150年までに5メートル上昇する可能性も排除できないとされた。
   実現の可能性は少ないながら、万が一そのような事態になれば、2100年までにほとんどの沿岸部は浸水し、数百万人の生活が脅かされることになる。
   水の都ベネチアなど跡形もなくなり、東京もニューヨークも上海もロンドンも、水没してしまうのである。
   

   パリ協定で各国は、産業革命以前の気温からの気温上昇分を、今世紀中は摂氏2度より「かなり低く」抑え、1.5度未満に抑えるための取り組みを推進すると合意した。
   現在の地球の温度はすでに産業革命以前のレベルから1.1度、上昇している。そして近年、異常気象現象が頻発している。それが今後、何年もかけて1.5度上昇まで到達するとなると、「ますます激しい熱波が、ますます頻繁に起きる」。「地球全体で、集中豪雨がさらに増えるだろうし、一部の地域ではなんらかの干魃も増えるだろう」

   それでは、何ができるのか。
   多くの科学者は、2030年までに地球全体の温室効果ガス排出量を半減できれば、気温上昇を食い止め、あるいは反転させることができるかもしれないと、以前より期待を高めている。
   温室効果化ガス実質ゼロ(ネットゼロ)を実現するには、まずクリーンエネルギー技術の利用で可能な限り温室効果ガスを減らした後、残る排出を炭素隔離貯留技術によって回収する、もしくは植林によって吸収するなどの取り組みが必要となる。
  「かつては、たとえネットゼロを実現しても、気温上昇は続くと考えられていた。しかし今では、自然界が人間に優しくしてくれると期待している。もしネットゼロを実現できれば、それ以上の気温上昇はおそらくないだろうと。温室効果ガスのネットゼロが実現できれば、いずれは気温上昇を反転させて、地球を少し冷やせるようになるはずだ」。これが運命だと諦めてはいけないと警告する。
   「温暖化のレベルを下げれば、事態が一気に悪化する転換点に達してしまう可能性がかなり減らせる。破滅すると決まったわけではない。気候変動における転換点とは、温暖化が続くことで地球の気候システムが急変する時点を意味する。
   各国政府の首脳陣にとって、今回のIPCC報告は長年何度も繰り返されてきた警鐘のひとつに過ぎないかもしれない。しかし、11月のCOP26は目前だ。それだけに、今までより大きく政治家たちの耳に響くかもれない。

   温暖化が地球環境を窮地に追い込むと言う前に、最近、日本各地は勿論、世界的な規模で、頻繁に、「過去の記録上、前例のない」猛威をふるう異常気象現象が頻度を増して発生して、人々の生活を脅かしているが、このような災害が、今後益々、抵抗し得ないような規模と頻度で、続発すると考えるべきであろう。
   地球環境問題の解決には、グローバルベースの政治解決が必須で、人類を引っ張って行く高邁な理想を掲げ意気に燃えた高潔なリーダーの登場を待つ以外になかろうが、その道がないのが悲しい。
   今回は、BBCの記事紹介が主体となってしまったが、私見を差し挟む余地など全くない深刻な問題である。
   

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