ITとは無縁だと思われていたタクシー業界がウーバー(Uber)に、そして、ホテル業界がエアビーアンドビー(Airbnb)にと言った途轍もなきデジタル・ディスラプターに、壊滅的な打撃を受ける今日、
この本は、ディスラプション(創造的破壊)を、デジタル革命の爆発的な威力を主体にして論じており、これまでのクレイトン・クリステンセンの「イノベーターのジレンマ」や、W・チャン・キムの「ブルー・オーシャン」とは違った切り口から、まさに、ICT,デジタル革命の本質からイノベーションを説いていて非常に面白い。
デジタル・ディバイド年代の私には、一寸、荷の重いトピックスが多いのだが、デジタル時代の企業のイノベーション戦略が如何にあるべきか、デジタル革命の威力に教えられることが多い。
この本の原題は、Digital Vortex: How Today's Market Leaders Can Beat Disruptive Competitors at Their Own Game
デジタル・ボルテックス(業界が、「デジタルの渦の目」めがけて突き進む、避けようのない大きな動き)
今日のマーケットリーダーが、如何にすれば、自分たちの事業で、創造的破壊競争者を駆逐できるか
と言うことである。
クリステンセンの世界で言えば、創造的破壊で成功して市場を支配しているトップ企業たる既存イノベーターが、イノベーターのジレンマを排除して、如何にして、新規の創造的破壊者を駆逐するかと言うことであろうか。
まず、最初に気づいたのは、デジタル革命にすんなりと乗り切れない日本企業に取っては、どのようなアプローチなり戦略が有効なのであろうかという問題意識であった。
最近は、随分影が薄くなったが、かっての製造大国であった日本には、優良な製造業が多い。
最も参考となるのは、エジソンが1889年に創業した巨大コングロマリット、ゼネラル・エレクトリックGEの戦略ではないかと思ったのである。
GEは、工業機械や発電、金融サービス、耐久消費財など幅広い事業を手がける、長寿を誇る米国屈指の超巨大企業だが、金融危機後、2000年時点で60ドルだったGEの株価は、その後6ドル以下に低下し、膨大な収益を上げていた商業不動産担保業界の巨人GEキャピタルを守るために連邦預金保険公社の助けを求めざるを得なくなった。ポートフォリオでも大打撃を受けて、家電事業でも激しい競争に晒されて窮地に立ち、GEキャピタルの資産を売却を進めて、家電部門はハイアールに売却し、GE全体の売り上げの17%を失った。
その起死回生を計るために、GEは、大きな可能性を秘めたバリューベイカンシー獲得に向けて思い切った賭に出た。それが、ジェットエンジンや風力タービン、工場ロボットなどの工業機械をインターネットに接続して、そこから得られたデータを収集・解析するソフトウェア「GEプレディックス(GE Predix)」、すなわち、「デジタル工業マーケット」である。GEは、このソフトウェアで、既に、50億ドルの売り上げを上げており、こうしたクラウドベースのIoTプラットフォームの強みを生かして、2020年までに、世界トップ10ソフトウェア企業の仲間入りをすることを目指している。
また、プレディックスで、あらゆる種類のアプリケーションを提供し、自社製品の価値を高めることで収益の流れを創ろうとしている。例えば、プレディックスの導入で、前もって故障を見越してメインテナンスのスケジュールを組むとか、状況に応じて、風力タービンのポジションをリアルタイムで最適化するとかで、「GEトリップオプティマイザー」のようなアプリケーションも開発している。自社製品のアドオンだけではなく、「ソフトウェアプラットフォーム」として工業機械製造業者にもプレディックスを売り込んでいる。
GEは、かって、ジャック・ウェルチが、ドラッカーの指導に従って、業界で1位か2位でない事業からは撤退し、絶対やるべき新規事業には資金を振り向けて事業化するという戦略を取って、ドラスチックに企業改革に大なたを振るったことがあるのだが、
今回も、新事業にそぐわない部門を変革するか売却することにして、NBCユニバーサル・ニュースやエンターテインメント事業、家電事業、それに、虎の子のGEキャピタルなども売却して、戦略を劇的に方向転換して、自らが、「デジタル工業」と呼ぶマーケットに鞍替えした。のである。
GEは、これらの新戦略によって、グーグルやアマゾンと言ったテクノロジーの巨人や、SAPやIBMと言った企業向けソフトウェア開発企業と肩を並べられるようになったが、IoTを成長の源としてバリューベイカンシーを掌握できるかどうかはまだ分からない。と言う。
製品が直面する様々な物理状況をシュミレートするコンピューター支援設計(CAD)の更に上を行く、センサーと解析を用いて、「物理的なもの」と「デジタルの分身」を1対1対応でマッピングする「デジタルツイン」、
このシステムを使って、予備保守サービスを提供するなど、ドラスチックに事業のデジタル指向を目指して、大変身を遂げつつあるGE,
日本企業としては、成長戦略として、このGEに倣ったデジタル化戦略を取るのが、一番似つかわしいように思えるのである。
栄枯盛衰、浮沈の激しいアメリカの資本主義下で、100年以上も、激しい時流の流れに抗しながら、変身に変身を遂げて、トップ企業としての命脈を保ち続ける唯一の名門企業としてのGE、
いまだに、エジソンの築き上げた電気会社としての軌跡を維持しながらの伝統の堅持は、日本企業の誇りに通じるものがあるような気がしている。
この本は、ディスラプション(創造的破壊)を、デジタル革命の爆発的な威力を主体にして論じており、これまでのクレイトン・クリステンセンの「イノベーターのジレンマ」や、W・チャン・キムの「ブルー・オーシャン」とは違った切り口から、まさに、ICT,デジタル革命の本質からイノベーションを説いていて非常に面白い。
デジタル・ディバイド年代の私には、一寸、荷の重いトピックスが多いのだが、デジタル時代の企業のイノベーション戦略が如何にあるべきか、デジタル革命の威力に教えられることが多い。
この本の原題は、Digital Vortex: How Today's Market Leaders Can Beat Disruptive Competitors at Their Own Game
デジタル・ボルテックス(業界が、「デジタルの渦の目」めがけて突き進む、避けようのない大きな動き)
今日のマーケットリーダーが、如何にすれば、自分たちの事業で、創造的破壊競争者を駆逐できるか
と言うことである。
クリステンセンの世界で言えば、創造的破壊で成功して市場を支配しているトップ企業たる既存イノベーターが、イノベーターのジレンマを排除して、如何にして、新規の創造的破壊者を駆逐するかと言うことであろうか。
まず、最初に気づいたのは、デジタル革命にすんなりと乗り切れない日本企業に取っては、どのようなアプローチなり戦略が有効なのであろうかという問題意識であった。
最近は、随分影が薄くなったが、かっての製造大国であった日本には、優良な製造業が多い。
最も参考となるのは、エジソンが1889年に創業した巨大コングロマリット、ゼネラル・エレクトリックGEの戦略ではないかと思ったのである。
GEは、工業機械や発電、金融サービス、耐久消費財など幅広い事業を手がける、長寿を誇る米国屈指の超巨大企業だが、金融危機後、2000年時点で60ドルだったGEの株価は、その後6ドル以下に低下し、膨大な収益を上げていた商業不動産担保業界の巨人GEキャピタルを守るために連邦預金保険公社の助けを求めざるを得なくなった。ポートフォリオでも大打撃を受けて、家電事業でも激しい競争に晒されて窮地に立ち、GEキャピタルの資産を売却を進めて、家電部門はハイアールに売却し、GE全体の売り上げの17%を失った。
その起死回生を計るために、GEは、大きな可能性を秘めたバリューベイカンシー獲得に向けて思い切った賭に出た。それが、ジェットエンジンや風力タービン、工場ロボットなどの工業機械をインターネットに接続して、そこから得られたデータを収集・解析するソフトウェア「GEプレディックス(GE Predix)」、すなわち、「デジタル工業マーケット」である。GEは、このソフトウェアで、既に、50億ドルの売り上げを上げており、こうしたクラウドベースのIoTプラットフォームの強みを生かして、2020年までに、世界トップ10ソフトウェア企業の仲間入りをすることを目指している。
また、プレディックスで、あらゆる種類のアプリケーションを提供し、自社製品の価値を高めることで収益の流れを創ろうとしている。例えば、プレディックスの導入で、前もって故障を見越してメインテナンスのスケジュールを組むとか、状況に応じて、風力タービンのポジションをリアルタイムで最適化するとかで、「GEトリップオプティマイザー」のようなアプリケーションも開発している。自社製品のアドオンだけではなく、「ソフトウェアプラットフォーム」として工業機械製造業者にもプレディックスを売り込んでいる。
GEは、かって、ジャック・ウェルチが、ドラッカーの指導に従って、業界で1位か2位でない事業からは撤退し、絶対やるべき新規事業には資金を振り向けて事業化するという戦略を取って、ドラスチックに企業改革に大なたを振るったことがあるのだが、
今回も、新事業にそぐわない部門を変革するか売却することにして、NBCユニバーサル・ニュースやエンターテインメント事業、家電事業、それに、虎の子のGEキャピタルなども売却して、戦略を劇的に方向転換して、自らが、「デジタル工業」と呼ぶマーケットに鞍替えした。のである。
GEは、これらの新戦略によって、グーグルやアマゾンと言ったテクノロジーの巨人や、SAPやIBMと言った企業向けソフトウェア開発企業と肩を並べられるようになったが、IoTを成長の源としてバリューベイカンシーを掌握できるかどうかはまだ分からない。と言う。
製品が直面する様々な物理状況をシュミレートするコンピューター支援設計(CAD)の更に上を行く、センサーと解析を用いて、「物理的なもの」と「デジタルの分身」を1対1対応でマッピングする「デジタルツイン」、
このシステムを使って、予備保守サービスを提供するなど、ドラスチックに事業のデジタル指向を目指して、大変身を遂げつつあるGE,
日本企業としては、成長戦略として、このGEに倣ったデジタル化戦略を取るのが、一番似つかわしいように思えるのである。
栄枯盛衰、浮沈の激しいアメリカの資本主義下で、100年以上も、激しい時流の流れに抗しながら、変身に変身を遂げて、トップ企業としての命脈を保ち続ける唯一の名門企業としてのGE、
いまだに、エジソンの築き上げた電気会社としての軌跡を維持しながらの伝統の堅持は、日本企業の誇りに通じるものがあるような気がしている。