地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

第三ヤンゴン熱鉄記 (17) アッパークラス標準客車

2015-06-18 00:00:00 | ミャンマーの鉄道


 ヤンゴン界隈で手当たり次第に撮影した客車の形式写真をもとに、ミャンマー国鉄の客車を勝手に分類して自己満足するシリーズ、明らかに見た目が旧客としか言い様のない車両につきましては当面手持ちのネタが尽きましたので (興味津々の方はマンダレーへ行くべし)、今後は現在進行形で製造されている張り上げ屋根・ノーリベットの標準客車の紹介へと移行して参ります。
 ミャンマー国鉄の、少なくとも急行客車列車運行路線であれば必ず目にすることが出来るこの手の客車、正式に何時頃から量産が始まっているのか、あるいは製造時期ごとの細かい分類がどうなっているのか、僅かな日程でヤンゴンを訪れるだけのヲタにはさっぱり知る由もありません。しかし、1950年代に日本で製造された旧客をさらに洗練(とゆーか、のっぺらと)させた鋼体デザインであることから、明らかに日本の息がかかった車両であろうと推測されます。ググると出て来る、今から10年以上前に書かれたJ○CAあたりのミャンマー国鉄近代化計画をめぐる円借款実行状況レポートを見ておりますと、まず1980年代に日本製、あるいは日本からのノックダウンによる客車を130両製造し、老朽化した客車の更新に充てた云々……という記述がありますので、この手の標準客車の嚆矢は1980年代の日本製であるとみて良さそうです。(正確な情報を引き続きお待ちしております……^^;)



 こうしてミンゲ工場(マンダレー近郊)でのノックダウン車両組み立て技術が向上した結果、その後は基本的にミンゲ工場からの供給が続けられているようですが、少なくとも1990年代末に製造されたグループはウリナラ(多分大宇)での部品製造→ミンゲ工場での組み立てであることが分かっています (ググると出て来るミャンマー国鉄機関車概論による……RBE・PCも若干収録)。さらに、最近新造された車両は多分純粋にミンゲ工場で造っていると予想され、まぁとにかく様々なルーツがありながらも、基本的にはノーシルヘッダー・張り上げ屋根の、あたかも日本の旧客を17mにした車両(4扉のアッパークラス寝台は20m近くありそう)が、ミャンマー国鉄の路線網を縦横無尽に往来しているわけです。
 ただ個人的には、このグループについて外観上明確に前期型(原型となった80年代日本技術)と後期型(ウリナラ及びミンゲ工場によるコピー)の二種類に分けることが出来るような気がしております。そのココロは……トイレ窓の違い。より老朽化した雰囲気の(?)前期型は、窓の四隅にRがありません。加えて、アッパークラス座席車の場合、窓が多少小さめとなっています。今回アップした画像で申しますと、上のBDUEZ 10819は前期型(日本の関与度大)、下のBDUEZ 10775は後期型に属するものと推測します。では、何故新しそうな方が番号が遡っているのか……? 当初、リベット付きアッパー座席車である10700と区別して10800番台を割り振ったものの、番号が足りなくなったため10700番台の余りを割り振ったとか……?? まぁここらへんも謎です (^^;;;)。

なおついでに、他に分類しようのない孤立したグループとして、二段窓+窓上ルーバーが非常に特徴的なアッパークラス座席車もご紹介しましょう (画像は↓をクリック)。この車両は1999年に、中国南車(先日北車と合併し中国中車に)の四方工場で計28両が製造されたBDUEZ 12720形 (上記機関車ガイドにて紹介)。まぁ時期的に言って、中国政府から軍事政権へのプレゼントだったのでしょうなぁ……(オーディナリーは一両も見かけませんし→フ・エータ様から頂いたコメントにより、オーディナリーも存在することが判明しました。車番は12500台前半?)。個人的には、ネーピードー急行31UPで乗ったことがありますが、窓の開閉が非常にやりづらく、思わず「他○的!」と叫びたい気分だったのを思い出します (爆)。新しそうな車両だったのに既にボロボロでしたし……。


ネーピードー急行・ピィ急行・バガン(パコック)急行など、外国人も割と利用するヤンゴン発着の急行で用いられている場合が多いため要注意です。(とはいえ、予約の段階で回避する術は皆無ですが。汗)

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4 コメント

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Unknown (フ・エータ)
2015-06-21 01:37:41
こんばんは。

一枚目の10819は、なんと新製直後と思われる写真が鉄道ピクトリアル1979年11月号(通巻第368号)に掲載されています!
記事(昭和53年度の輸出車両概要)によると、この車両は1978年に近畿車両で製造された12両のアッパークラス車(記述は1等車)のうちの一両との事です。川崎重工製DD500(506~510号)や、60両の近畿車両・川崎重工製オーディナリークラス車(10400番台あたりの車両?)が同期に当たるそうです。
過去の鉄道誌には、他にも貴重な情報が埋もれていそうです。

10700~10800番台はいくつかのグループに分けられますよね。
・10700番台前半(~759辺りまで?):リベット車体
・10760~10790?:ノーシルヘッダー車体
・10791?~10800番台初頭?:雨樋有りの寝台車
・10810番台辺り?~:ノーシルヘッダー車体
・10850番台:謎の気動車格下げ?車両
・10860?~:ノーシルヘッダー車体
基本的にアッパークラス車に割り当てられる番台なのかもしれませんが、時々異なる仕様の車両が入っているのが謎です。

四方工場製の客車は、オーディナリークラス車も存在します。12500番台前半の番号の車両が該当し、ヤンゴンで何両か見かけました。窓割りは他の車両とほぼ同じ配置となっています。
既に客車の標準的な仕様が確立されている中で、あえて異なる窓の構造を採用したという点が不思議です。
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Unknown (おっとっと)
2015-06-21 12:39:15
>RBE迷さま
 こんにちは、コメントどうもありがとうございます!
 2Dnのアッパークラスに4扉車ですか! 寝台車をそのまま座席車扱いとしているならば、座席定員が恐ろしく少ないような気もするのですが、時間のかかる1/2レだけにアッパーの利用者は少ないという割り切りなのでしょうか。あるいは車内が座席車として改造されているとか……。いずれにせよ、4扉の日本製旧客急行塗装車をヤンゴンで拝める可能性が出て来たというのは嬉しい話ですね。ラッピングされたら困りますが……。

 四方工場製の二段窓車につきましては、フ・エータ様から頂いたコメントにもあります通り、オーディナリーも存在するようです (何故か見たことない……汗)。日本からの払い下げor貰い物シートの車両はなかなか面白そうですね。ただアッパークラスの場合、それは2+2を意味しているわけで、今ひとつハズレなような気もします (笑)。
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Unknown (おっとっと)
2015-06-21 12:57:35
>フ・エータさま
 こんにちは、コメントどうもありがとうございます!
 RP誌などの過去記事は、やはり揃えておいた方が良いのかも知れないですね……貴重な情報をどうもありがとうございます m(_ _)m
 70年代末~80年代初の車両は、客車が近車、罐が川車ということが大体分かっておりましたが、客車については川車も造っていたようで、逆にこのとき過去の実績ある日立が客車製造に関わらなかった理由がナゾで興味深いですね (^^;
 10700~10800台は、私も手許にメモしながら、狭い範囲にいろいろな車種を詰め込むカオスぶりに頭が痛くなってしまいましたが (笑)、あるいはやたらと番台を改めずに番号を詰め、1を冒頭にする4ケタまたは5ケタ (今のところ5ケタ車は13300台以下) で抑えるというのも、ある意味で車番のインフレ化を防ぐ賢明なやり方なのかも知れません。貨幣が激しくインフレするこの国の金融政策とはエライ違いです (笑)。要は関係者が分かっていれば良いということで、何だか京急に似ている気がして来ました (^^;
 10700~10800台の分類は、私も大体こんなところではないかと思います。ノーシルヘッダー標準客車については、後から空いている所に突っ込んだことがありありと分かりますね~(汗
 
 四方工場製についてはオーディナリーも存在するとのご指摘、どうもありがとうございます m(_ _)m 何故か見たことがない……。または、初めてヤンゴンからバゴーまで乗ったアッパーがこれに当たってしまい、下段を動かすのが死ぬほど面倒臭くムカついて以来悪印象が極めて強く、どーでも良い車両扱いになってしまったため、見かけても無視ということになってしまったかも知れません。
 窓の構造は、基本的に当時四方工場で量産されていた中国国内向け25B系客車の技術をそのまま応用したものと思われます。しかし、どうせミャンマーの非冷房車は、スコールが襲わない限り窓を開けっ放しにするわけですから、単純な構造で上げ下げしやすいというのがベストであるはずで、その後のミンゲ工場製新造車が基本的に一段窓に戻っているのも当然という気がします。この点、日本中古RBEの二段窓は、過酷な条件のもとでも以前として開閉しやすく、さすが日本製だ……と思います。
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Unknown (おっとっと)
2015-06-23 10:49:42
>RBE迷さま
 こんにちは、コメントどうもありがとうございます!
 四方工場製、なるほどアッパー以外でもいろいろあるようですね・・・とにかく個人的にはあの窓がイヤなので、撮るのは良いけど乗りたくない車両ナンバーワンです (苦笑)。
 総じてMRにおけるファーストクラスは、「柔らかいオーディナリー」という程度のスペックかと思われます。ならばもう少々金を出してアッパークラスに乗った方が良いわけで、結局今ひとつ繁盛しない等級なのではないかと……(汗
 BBDTEZ14000につきましては、そのうちアップする予定です~。
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