【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【参院選・国民民主党】「再エネ賦課金」実質廃止の追加公約を玉木雄一郎代表が発表、電力料金1割強下げ、岸田インフレ「節電ポイント」不人気の風を読む「情勢が厳しいのか」との問いは否定

2022年06月26日 18時01分01秒 | 第26回参院選(2022年7月)
[写真]玉木雄一郎・国民民主党代表、3年前、筆者撮影。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は「電力料金に含まれる再エネ賦課金を実質廃止して、電気料金を1割強引き下げる」とした追加公約を発表しました。

 「岸田インフレ」が争点化する中、岸田文雄本部長の「物価・賃金・生活総合対策本部」が打ち出した「節電ポイント」が不人気である風を読んだ動き。

 玉木さんは、FIT再生可能エネルギー固定価格買取制度にもとづき、各電力会社で産業用でおおむね16%、家庭用でおおむね12%を上乗せしている「再生エネルギー発電賦課金」を向こう1年程度停止して、政府が全額肩代わりするとしました。

 玉木さんは第26回参議院議員通常選挙の最初の選挙サンデーのきょう令和4年2022年6月26日、遊説の途中で、東京・銀座の路上で緊急ぶら下がり記者会見を開催。このもようは党本部のYouTubeチャンネルでも緊急配信されていたようで、2時間で既に2000回程度再生されており一定の組織力を見せました。



 序盤情勢では、同党は現職がいる大分1人区、愛知4人区で劣勢で、不戦勝観測があった山形1人区ではリードしていますが、自民女性新人の猛追を許しています。比例代表では2議席から4議席との加速も公約を維持できない場合は議席半減となると予想されます。

 これを念頭に、筆者(宮崎信行)が「残り14日間のタイミングで、異例の追加公約を発表するのは、序盤情勢が厳しいからか」と質問すると、玉木代表は「情勢は(公示前から)ずっと厳しい」と反論し、「情勢うんぬんで判断したのではなく、この猛暑が続いていることと発表された物価上昇率(2・5%)でも電力の割合(18・6%)が高いということを踏まえた」とし「おとといくらいから活動し、きのう使ったので、政調会長(大塚耕平参議院議員
非改選)を中心にとりまとめた」と説明しました。


[写真]ぶら下がり記者会見のため、銀座の雑踏から現れた玉木雄一郎国民民主党代表、きょう午後3時20分過ぎ、筆者撮影。

 同党は小林正夫議員が任期満了で引退し、電力総連・東京電力から男性の新人が立候補しています。電力総連は参院選で負けたことがなく、現段階では議席獲得が今回も有力だと読める情勢が出ています。原子力発電の賛否とは別に、再エネを推進しつつ、電力料金が「物価の劣等生」との扱いを避けたいとの意識で、「岸田インフレ」の争点への追加対応がスムーズにまとまったものとみられます。

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【第26回参院選・全国比例】「NHK党幹事長」がNHK日曜討論で「暴露系ユーチューバー」「岸信介はCIA」など自民・公明・維新に対する独自の見解を披露し、歌も歌う、ツイッター「支持やめる」複数

2022年06月26日 11時03分43秒 | 第26回参院選(2022年7月)
[写真]NHK放送センター=東京・渋谷区筆者撮影、日曜討論は千代田区の報道局分室スタジオを使用。

 第26回参院選の最初の選挙サンデーのきょう2022年6月26日、NHKは「日曜討論参院選9党幹部に問う物価高・安保・憲法」を放送しました。

 3年前に立花孝志党首が初当選して政党助成法にもとづく政党となった「NHK党」は、今回は立花さんは出ず、黒川敦彦幹事長(非議員)や暴露系ユーチューバーのガーシー候補らを擁立しています。

 黒川幹事長はきょうの番組で、物価高で意見を求められた際は「世界中が金融緩和をし過ぎている」との見解を述べました。

 その後、「安全保障」について問われた際、ガーシー候補が再生回数を増やしてスポーツ紙でも取り上げられた、有名芸能人の芸名を具体的に上げて「淫行疑惑がある」「マスコミで一切取り上げられていない」と発言。NHK解説委員からテーマに沿った発言をするよう求められると、安保だとし「権力を持つ人はもみ消そうとする」と主張をずらしました。

 その後、憲法改正について問われると、黒川幹事長はさらに主張をずらし「サイレント・インベージョン」という聞きなれないキーワードを出し、「安倍晋三元首相の祖父、岸信介はCIAのエージェント」「創価学会と中国共産党は関係がある」「日本維新の会と中国共産党も関係がある」との独自の主張を展開したうえで「全部安倍のせいだー」「おじいちゃんはCIAエージェント」というテーマを盛り込んだ自作とみられる歌を歌いました。

 これについて解説委員は、テーマに問った発言と個人名を出さないよう求めました。自民党の茂木敏充幹事長は「民主主義はルールを守ってほしい」、公明党の石井啓一幹事長は「団体名を出さないでほしい」、維新の藤田文武幹事長は「京都の街宣でもめ事があったが、立花党首の謝罪があったのでおさめたばかりだ」と、国政政党の土俵で対応しました。

 一連の行動については、ツイッターなどSNSで「面白い」やNHK解説委員の静止を言論弾圧だと示唆するような書き込みもありますが、もともとの支持者とみられるアカウントから「投票するのはやめたい」との意見が複数書き込まれており、こちらが大勢のようです。また、物価高のテーマを問われてもっともらしい話をしたのに、安全保障のテーマを機に、話の内容を徐々に変えたことを「陰謀論だ」と分析する向きもあります。

 政党・報道機関の複数の情勢調査では、N党は0議席だったり、1議席の獲得予想が出ており、仮に1議席の場合は、ガーシー候補が優勢ではないかとの調査が出ていました。

 選挙に影響した場合は、大量の候補者を擁立して、現職地方議員も多く在籍する「N党」の政党要件が3年ぶりになくなる公算もあります。

 以上です。

【第26回参院選・実質賃金】岸田首相「結果として、コロナ禍を乗り越えた企業は3%以上を超える賃上げ」と謎の数字を強調、物価上昇率2・5%、春闘は2・09%なので、何らかの数字を探したか

2022年06月26日 08時18分58秒 | 第26回参院選(2022年7月)
[写真]岸田首相、きのう2022年6月25日、東京武蔵野市吉祥寺駅前で、宮崎信行撮影。

 第26回参議院議員通常選挙は、きょうで5日目となります。衆院選は12日ですが、参院選は17日間ないし18日間ありますので「選挙サンデー」はきょうを含めて2回あります。まだまだ長いたたかいです。

 岸田首相は、NATO首脳会合のため欧州に向かう政府専用機の中です。岸田首相のきのうの東京・吉祥寺駅前での街頭演説会で、「賃上げは3%超」という謎の数字をあげていたことが、筆者の音声データなどから分かりました。

 一部報道では、首相は選挙戦3日目で「新しい資本主義」という言葉を初めて使い全会場で使ったとされますが、きのうの選挙戦4日目では、その言葉は使っていないようです。

 首相は、演説の終盤で「ロシアによるウクライナ侵略で物価が高騰している」と言及。「日本においても国民のみなさんの物価が上がっている」とし「私が本部長になって物価・賃金・生活総合対策本部をつくった」と強調。「みなさんの事情にあった物価高騰対策を用意しなければならない」とし、地域に合わせた1兆円の交付金などで対応するとしました。

 演説ではこの後、「みなさん一人一人の賃金引き上げ、所得の引き上げが必要だ」と話を進めて「賃金の引き上げを民間に進めていく。結果として、今年の春闘、コロナ禍を乗り越えた企業は、3%以上を超える賃上げを実現した。全業種、全平均でも2%以上の賃上げを実現して、過去20年間で2番目の伸びとなった」と語りました。

 ところが、確認すると、連合がまとめた春闘の結果は平均賃金方式で「2・09%増」となっています。コロナ禍の影響が大きかった業種ではいまだに前年比マイナスとなりました。仮に、所定外労働や夏季一時金を加えても、3%には届きません。

 総務省が計算する物価上昇率は3月は1・2%でしたが、4月と5月は続けて前年同月比2・5%増となっています。首相周辺は、春闘が「2・09%」、物価上昇率が「2・5%」を意識して、「3%」ならば実質賃金はプラスだという考えで、何らかの統計数字を探したと考えるのが妥当な推測だと思います。

 仮にあったとしても、ビフォー・コロナに比べて発射台が下がったことで、前年同月比ではプラスの数字が出る「成長の下駄」である可能性が高そうです。

 立憲民主党の泉健太代表は3日の公約発表記者会見で、筆者・宮崎信行の質問に答えて、「連合もことしは本当に努力をして、近年の中では、2%超えとかよく言われますが、賃上げ努力をしたが、連合の中間まとめの中で、物価上昇のほうが大きくなって残念ながら実質賃金がマイナスになるおそれがあるという報告がなされている」と答えており、現下の経済状況は、「実質賃金マイナス」であるとの現状認識を示しています。

 首相は機中の人なので、しばらく真意は分かりません。が、金曜日の午前8時50分に日本銀行が発表する短期経済観測調査で「中小の製造業」はウクライナ戦争と上海ロックダウンの資材高を吸収できず先行きが悪化しそうです。

 世論調査では、最優先する政策課題は物価対策だと回答した人の方が自民党支持率がより高いという、やや意外な結果も一部で出ています。首相が1兆円の交付金を強調しているのもこれが背景にあると思います。しかし、物価を上回る賃上げが今春に実現できていなかった場合は、参院選以降も尾を引き、政権の打つ手が狭まることが予想されます。

 以上です。