そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

増加する穀物生産量、食料事情危険水域に迫っている

2016-08-28 | 農業と食
左の表はFAO(国連食糧機構)が発表した穀物生産量と価格動向である。
穀物生産量は20億トンを超えるころになると、生産量は減少するものと言われていた。ところが20億トンを超えて、さらに伸び続け今年は、25億4400万トンになった。これは前年比0.6%、量にして1530万トンの伸びである。前年ブラジルの生産量が伸びたためと言われたが、今年度はそのブラジルのトウモロコシが良くないが、アメリカの生産量が伸びたのである。更には、小麦もコメも大豆も生産量が伸びている。
世界的には農地は減少しているが、規模拡大、大型機械化による生産の伸びであると思われる。しかし農地面積の拡大はもう限界にきている。化学肥料と品種改良による生産はすでに限界にある。左の表の棒グラフは在庫量である。生産量に比例して増えなければならないが、ほとんど同じかこの数年はむしろ減少に転じているかに見える。これは極めて危険な価格調整が意図的に行われる可能性を含んでいる。
右の表は、2002から2004年を100とした、この4年間の月ごとの価格推移である。確かに13年から15年は順調に価格が下がっているかに見える。しかしそれも、10年前のほぼ倍の価格推移であるが、今年は(赤線)しっかりとした右肩上がりの上昇に転じている。

一時的な穀物生産量は資本に裏打ちされ、化学肥料と遺伝子組み換えと品種改良によるものであるといえる。そして強大な資本は穀物生産量や人々の胃腑を満たすことの興味があるわけではない。最も興味があるのか価格である。生産量によって収入が得られない場合には、価格でこれを補う。補うためには価格操作を平気でやる。その現象を、在庫量の減少に伺うことができる。豊作による増収を喜んでいる場合ではない。
世界の人口は2年前に70億人を超え、現在は73億5千万人にまでになっている。驚異的な人口増加は、富める国で起きているのではない。主に途上国の人口が増えているのである。富の偏在に沿って食料は配分される。先進国では30%が肥満に喘いでいるが、貧困国では30%以上が飢餓に苦しんでいる。

絶対的な農地の拡大が起きていない現状は、技術開発による増産がそれらを見えなくしている。しかしそれもいつかは破たんする時が来る。地上の農地が人類を養うことができなくなる日が来る。必ず来る。
少子化が進む集約的農法を伝統的に経験する日本でこそ、そうした食糧事情を先見的に解決する能力を持っているといえる。農業は食糧生産産業と位置づけ、価格による評価を排除するべきなのである。
ところが、安倍政権の農政は、強い農業・攻めの農業・規模拡大・投資拡大・輸出促進・企業参入・生産調整廃止・規制緩和・農協解体、とどれを見てもそも、価格にしか焦点がない政策で真逆に走っているといえる。これは農家対策であって、食料政策ではない。大局的な食料政策を今こそ提言するタイミングなのである。
コメント (1)
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