そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

日本国憲法は押し付けられたものでもなく突如降ってわいたものでもない

2016-08-14 | 平和憲法
安倍晋三が、「たった一週間で素人が作った押し付けられた恥ずかしい憲法」とさんざん憲法をけなすが、この発言自体が憲法99条の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 」という条項に抵触する。今国会から超党派の憲法審査会(委員会?)を立ち上げ、憲法論議が盛んになることが予測される。改憲派の人たちの根拠になる”押し付け”論は東京新聞の新たな資料で、その根拠を失うことになる。憲法全体の形は鈴木安蔵たちの憲法研究会の案が骨子にしていることが判っている。しかし、天皇の位置づけと戦争放棄については、GHQの案とされるのが一般的であった。
当時マッカーサー最高司令官が幣原喜重郎首相の提案であると上院で証言していたが、これを裏付ける資料を堀尾輝久・東大名誉教授が発見した。東京新聞の報道によれば、1957年に岸信介内閣の憲法調査会の高柳賢三会長が、憲法の成立過程を調査するためマッカーサーに直接聞いた書簡でマッカーサーが、幣原首相の提案であると回答していたのである。安倍晋三が敬愛する祖父の側近の調査結果はなぜか知られることがなかった。
日本は近代化に貢献したとされる、東洋で初めての明文化した憲法・明治憲法を制定したが、大正デモクラシーの波で主権在民、基本的人権の制定や法の下の平等などを基本とした憲法の制定の機運は高まっていた。昭和になって軍部の台頭がこれらを弾圧し戦争へ大きくシフトしていったのである。土佐の植木枝盛などいくつか在野の憲法試案などをはことごとく封印されたが、鈴木安蔵もそうしたことを学んでいた。
世界は第一次世界大戦の教訓から、1928年にパリ不戦条約を世界の列強が結び戦力の拡大を抑えた。日本の軍部はこれに強く反発し、天皇の統帥権の干犯であると文民をやがて追放しこれにとってかわるようになるのである。
帝国憲法改正小委員会の委員長であった芦田均は、「憲法9条の条文は、パリ不戦条約第1条をモデルにしている」と述べている。憲法の前文もパリ不戦条約を参考にしていることがうかがえる。
日本国憲法、とりわけ平和条項とされる9条と前文は、突如として降ってわいたり押し付けられたものではない。憲法論議や平和や主権在や民民主主義などというは、世界の大きな潮流で日本もそれに沿った動きをしていたのである。軍部が隠蔽し、侵略による繁栄がこの国を支えていることを永劫にのぞむ財界などの支援が、こうした流れを断ち切ったのである。
今、安倍晋三が進めようとする言論の封殺と一本化、特定秘密保護法や武器の開発と輸出の奨励、海外派兵の動き(安保関連法)は、こうした昭和初期の軍国化と愛国主義の鼓舞によって、特定の財界が潤う姿とぴったり符合するのである。
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