Photo: YK
大雪山系の遭難事故の報道を見ながら考えたことがあった。比較的最近、この山系の一部に登った。いや登ったというよりは、中途で登頂を断念したというのが正確だ。
今回事故を起こしたツアーの出発点となっている旭岳温泉から登り始めたのだが、気候の変化、体調などを考え、途中で登頂を断念、引き返した。ロープウエイなども平常通り動いていたが、かなり濃い霧で視界がさえぎられたり、絶えず天候が変わっていた。ほとんどの人は遠路はるばる訪れたこともあってか、あきらめずに登っていた。引き返すことに多少の未練は残ったが、さほど残念とは思わなかった。
数分前までは晴れて青空も見えていた山容(上掲)が、見る見るうちにこの下の写真のように濃霧で見えなくなる。夏とはいえ温度は急速に低下して寒い。あたりには雪渓が多数残り、雪解けも進み、登山道を踏み外すとかなり危険だ。
旭岳に残る雪渓
最近は情報の氾濫、商業主義の弊害などで、山岳、河川など自然への畏敬の念が薄れているのではないか。道路、ロープウエイなど交通手段の発達によるアクセスの平易化、登山者の基礎体力の低下、経験不足などで、危機への対応能力が落ちているのではと思う。登山に限ったことではないが、未知の分野の試みには、常に起こりうる最悪の事態への備えをしておくことが欠かせない。