時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

電子書籍の近未来

2009年10月25日 | 雑記帳の欄外

  新聞が、米アマゾン・ドット・コムが前年同期比69%増益となったことを伝えていた。新製品の電子書籍「キンドル」も好成績の一因らしい。ふとしたことで、この端末を手にすることになった。書籍や論文の電子版などをネット上で購入したり、ディスプレイで読むことは、しばらく前から経験していたので、いずれこうした電子書籍リーダーが実用化されることは十分予想はしていたが、実物に接してみると、ある種の衝撃を禁じ得ない。

 「キンドル」は想像以上に良くできていると思った。使ってみて戸惑う点はいくつかある。紙の書籍のように立体感がない、印刷物としての全体像が直感的に把握しがたい、新聞など大きな印刷物は紙面全体が視野に入らない、そのこともあって記事のウエイトづけが把握できない、どこになにが書かれているのか、すぐには分からないなどの問題はあるが、ここまできたIT技術の進歩に素直に感動する。

 使い方に慣れてみると、思ったより操作性はよい。単語にカーソルを動かすと、辞書の説明が表記されるなど、紙の書籍では期待できないことも可能だ。紙の書籍だと、書き込みやマーキングすることはためらうが、電子書籍ではそれも簡単にできる。ワンクリックで瞬時に本や新聞が購入できてしまうというのは、衝撃的だ。本好きな人には、たまらないかもしれない。それでなくとも、なにか購入しないとただの空箱なので、たちまち何冊か購入してしまった(笑)。


 紙の書籍と電子書籍の間には、まだ大きな隔絶感がある。ふたつはまったく別の世界にあるようだ。同じ本を紙か電子版のどちらで買うかと聞かれれば、今の段階ではためらいなく紙の書籍を選ぶだろう。

 書店や図書館で実際の本を手に取る楽しみは、IT上のショッピングにはとても代え難い。紙の書籍の持つ独特の手触り、匂い、そしてなによりも慣れ親しんだ立体感は、電子書籍では得られない。それでも、電子辞書がいつの間にか紙の辞書を追い出して机の片隅を占拠したように、いずれ電子書籍が書棚の本のかなりを追い出すことは十分予想できる*。古書は、そして50年後の図書館はどうなっているだろうか。時空を超えて、その光景を予想してみようとは思わない。

 

* 偶然見たTV番組「日本全国俳句日和」(NHK衛星第二、10月25日)から:
「広辞苑 手首痛めり 秋の夜」(山本太郎)

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