私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

2023-07-09 19:48:53 | 映画鑑賞

知性派でありながら肉体派、考古学者でありながら冒険家という二刀流で楽しさを見せてくれたインディ・ジョーンズの秘宝を巡る最後の旅だ。42年前に観たレイダーズ/失われたアーク<聖櫃>の楽しさを思い出しながら、鑑賞。

1940年代の因縁の対決に端を発する運命のダイヤルの話故、若々しい姿も見せるハリソン・フォード。容姿を若返らせるVFX技術の高さに驚く。大きなスクリーンでも見ても違和感が一つもないのだ。

アポロの月面着陸に沸き立つ1969年のアメリカが舞台になると、年齢に見合った姿を見せるも、秘宝が権力に利用されることを嫌うインディ・ジョーンズの精神は変わっていない事は伝わってくる。フェドーラ帽で鞭を操り。秘宝を守るという夢と希望に向かっていく姿は、シリーズ最終作でも変わる事はない。肉体派らしく繰り出すパンチも昔のままだし、地下鉄の構内から線路まで、馬で走り回り、ありとあらゆる危機一髪を回避する方法も昔のまま。

1980年代の3部作を思い出させる展開も各所にあり、懐かしい展開を面白く見ながらも、ストーリー展開にはどこかこじんまりした感じを持ってしまった。(大団円を意識しすぎている点もあったのだろうか・・・)これもインディ・ジョーンズというブランドに、大きな期待感を持ちすぎてしまったせいかもしれない。

最後の展開をどんな風に納めるのだろうとちょっと驚いたが、「知識こそ宝」というポリシーを貫こうとする考古学者であり冒険家というインディ・ジョーンズらしい姿でシリーズは終了。

大きい音もクリアで割れる事がない極上爆音上映で鑑賞。

 


怪物

2023-07-02 19:29:25 | 映画鑑賞

クリーニング店で働きながら、一人で小学校高学年の息子を育てる母。息子に平凡でも幸せになって欲しい彼女の思いは、息子が学校でいじめを受けているのではという疑いを持った事から大きく揺れ始める。片方だけの靴を履く息子、普段使っている水筒の中になぜか入っていた泥水・・・シングルマザーの彼女を不安にさせるには十分すぎる事象だ。

事情を聞きたい、確認したいという母の思いは、校長をはじめとする教師たちの多くを語らずやる気のない形ばかりの謝罪の前に空回りするばかりだ。「誤解があった」という言葉だけでは分からない息子の学校での様子。

そんな単発的に語られる一つ一つの出来事が、二人の少年の目を通して、連続性を持ち鮮やかな色を持ったエピソードになって語られる後半。それぞれの事象が見る者によって全く違う真実として語られていくのだ。ただ、全員がその出来事に真摯に向き合うか否かは、また別の問題だ。

少年二人が自分たちなりにその出来事に向き合っているのと比べて、周りの大人たちの熱量にはばらつきがある。わざとばらつきがあるように描いているようでもある。勿論全員に熱量が必要なわけでもない。それが現実であるかもしれないが、それでももっと別の描き方もあるのではと思ったりもする。何故校長があんなにも不可解な言動を取るのか。そこに何か意味があるのか。それを見ている私が判断できる情報はあったんだろうか。自分で何かを探すべき映画であることは分かるし、私自身はそれ自体に全く拒否感はないのだが、ただもう少し何かヒントがあっても、・・・と思う部分があった事がちょっと引っかかった。

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諏訪をロケ地にして撮影された映画はとても多いとの事。私が見たことのある映画でも、「白ゆき姫殺人事件」、「俳優 亀岡拓次」は諏訪がロケ地だった。諏訪湖や霧ヶ峰と風光明媚な場所に恵まれ、晴天率の高い諏訪は、撮影と親和性が高いようだ。


告白、あるいは完璧な弁護

2023-06-26 21:13:47 | 映画鑑賞

IT企業の若き社長として順風満帆に思える日々を過ごしているユ・ミンホ。
しかしそんな日常は不倫相手と一緒にいたホテルで起きた密室殺人事件の第一発見者兼第一容疑者になった事であっという間に崩れ去りそうになる。

財力と社会的地位を利用し、勝率100%を誇る敏腕弁護士と契約を結んで、完璧な無罪を勝ち取ろうとする彼。

何故か、山の中にある人里離れた山荘に弁護士を呼び出し、自分の弁護を請け負って貰うように画策する彼。弁護士としての輝かしい栄光に傷を付けたくない女性弁護士は請われた仕事を全部請け負うような安請け合いはしないのだ。「嘘があったら弁護は出来ない」という彼女の言葉に誘われ、殺人当日だけでなく、そこに繋がる出来事を理路整然と語る彼。

弁護を請け負って貰えるように弁護士を説得しなければならない彼だが、正面から対峙する際の視線は真っすぐ前を向き、その語り口には無駄がない。弁護士相手に模擬裁判をしているかのような丁々発止のやり取りだ。

同じように女性弁護士も言いよどむ事なく、彼に事件当日とそれに繋がる日の出来事を弁護士として分析していく。実際にあった事がどのように語られるのか。語られた事は裁判で信じるに値すると認められるのかどうか・・・事実も大事だが、それを皆が真実と信じるかどうかが大事なのだ。

容疑者である社長も敏腕弁護士も正面を向き合って話し合っている際は隙を見せないが、時々映り込む横顔には、正面からは見えない何かが見えるようにも思える。ミステリー好きではあるが、私は見たものをそのままだと信じすぎるきらいがあるようだ。ただ、ミステリーは騙された方が何倍も面白い。誰が本当の告白をするのか、誰が本当に完璧な弁護を行うのか?

今回もあっさり騙され、まったく違う方向にストーリーが進む事に驚く。

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キム・ユンジンは、2000年東京国際映画祭で行われた@燃ゆる月のワールドプレミアでの舞台挨拶を見た事がある。一緒に登壇したキム・ソックンとともに、場内が暗くなると客席に座り、私たち観客と一緒に映画を鑑賞していた。ワールドプレミアということで韓国でもまだ公開されておらず、監督も編集作業中という話をしていたので、そんな事になったのだろう。私はたまたま入り口近辺に座っていたので、ドレス姿のまま客席に着く様子が見えたのだ。綺麗な人だった。


THE WITCH 魔女 増殖

2023-05-28 20:08:22 | 映画鑑賞

秘密裡に魔女プロジェクトが実行されている@秘密研究所アークが襲撃されるも、一人生き残った少女。研究所の中で遺伝子操作によって超人的な力を持つ人間兵器に純粋培養された彼女は、逃げる途中に偶然出会った姉弟に助けられた事で、無垢な人間らしさを習得。

しかし、彼女を作り出したはずのプロジェクト主催者は彼女を危険視している為、何も知らない彼女はあっという間に追われる立場になるのだ。

組織本社からはおとぼけコンビと呼ぶにふさわしい二人、上海からやって来て研究所を襲った謎の超能力集団@土偶?、その上姉弟をつけ狙う地元のヤクザ。。。

多分自分が何者なのかも把握していないと思われる彼女は、自分のあずかり知らぬ所で追われる身となり、とにかく彼女の周りで規格外の破壊が行われ、弾が当たっても死なない者同士が、意味のない銃撃戦を延々と繰り広げるのだ。

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私は前作を見ずに鑑賞。ただ何となく事情は呑み込める為、大きな問題にはならず。彼女をめぐって各種勢力が三つも四つも入り乱れる乱闘が繰り広げられ、あっという間にカオス状態になるので、誰と誰が味方で敵かなどもうどうでもよくなるのだ。

皆の注目の的である少女を演じるシン・シアは、ポスターよりも動く姿が何倍も魅力的である。研究所から逃げ出し、無垢な少女らしさを少しずつ感じさえつつも、超人的な遺伝子レベルの力は隠しようもない。本格的な覚醒の予兆を感じさせつつも、さらなる展開は次に続くということか・・・

パク・ウンビン、ソ・ウンス、チン・グ、イ・ジョンソク、チョ・ミンスそして第1作で魔女だったキム・ダミ。純真無垢な魔女を演じるシン・シアを援護する贅沢で最強な俳優陣達。


聖なる復讐者

2023-05-23 21:14:05 | 映画鑑賞

双子の弟を殺した犯人に復讐すべく、自ら事件を起こし犯人と思われる少年たちが収監されている少年院に自ら入る道を選ぶ兄。

「クリスマスにフライドチキンを食べたい」という夢さえも叶えることなく亡くなった弟。自分たち兄弟も住んでいる場所を追い出される危機にありながらも、同じような境遇の者たちに拳を振り上げる事で日々の糧を得ていた兄。

確たる証拠はなくとも、不良少年グループの面々は、普段から少しのんびりした弟に対して暴力を振るっていたのだ。自分も彼ら同様に弟を邪険にしていた事への罪悪感と、たった一人の肉親をそんな風に失ってしまった悲しさから、自暴自棄とも思える行動に出る兄。

少年院の中にも現実社会と同様のヒエラルキーが持ち込まれている。
親の財力がそのまま少年たちの力関係にも影響し、そこからくるひずみは、少年院の中でも力のない者へのいじめになって現れる。しかし閉鎖された空間の中では金が全てでもない。財力がなくても肉体的に圧倒的なパワーでヒエラルキーの頂点に登り詰める者もいる。
それぞれのパワーが複雑に絡み合い、そこに彼らを管理する教師たちの力関係も加わる。

更生機関であるはずの場所は、傷口を更に広げ、その傷を癒す機会させも与えない場所になっているのだ。

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韓国映画らしいと言ったらいいのか、とにかく重く、見せずともいいと思うような描写も、とにかくねちっこく描く。その恐ろしい程のパワーには敬服せざるを得ない。弟を殺したのは誰なのかという犯人捜しはストーリーの重要な部分を占めるはずなのだが、その実、ミステリー部分についてはあまり重きを置いていないようにも思える。薄っすらと犯人は誰だか予想が付き、その事実を受け入れるのにも、非常にパワーが必要なのだ。

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双子の兄弟を演じるのはパク・ジニョン。二役故出ずっぱりである。そして重い題材だ。演じる上でも相当のパワーが必要だっただろう。

 


MEMORY メモリー

2023-05-16 21:19:53 | 映画鑑賞

「殺し屋」に依頼された仕事を断るという選択肢はない。依頼された仕事を断るということはイコール自分の死を意味することなのだ。殺しは成し遂げられてこそ秘密裏に葬る事が出来る。そうでなければ、どこからか綻び始め、秘密が守られる事はない。

齢70を超え、記憶障害から自分の引き際を感じた殺し屋が最後に受けた仕事は、寝ている少女の殺害だった。しかし殺しを生業にしているからこそ、自分で決めた一線を越えたくない男は断るという究極の選択をする。殺し屋を生業にしている者は引退の時期が難しい。期せずして自分の引退を懸けて殺し屋としての矜持を守ることになるのだ。

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アクション映画を好きで沢山見て来た私にとっては、演じるリーアム・ニーソン自身の選択、「アクションスターとしての最後をどんな風に観客に見せるべきなのか?」その一つの答えを見せて貰ったような気持ちになる。勿論これが最後の答えではなく、又別の形で最後に向けての姿を見せてくれるとは思う。ただ消えゆく記憶を少しでも残そうと腕にサインペンで殺しのルールを書き込み、殺しの現場に向かおうとする姿は、映画の中の姿とはいえ、なんとも感慨深い。

FBI職員役のガイ・ピアース、不動産王として街に君臨する富豪を演じるモニカ・ベルッチ。二人の演技も私にとっては渋く味わいのあるものだった。

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ミステリー作家 ジェフ・ヒーラールツの小説が原作。2003年にベルギーで映画化されているようで、そのリメイク作品との事。ラストの描き方は意見の分かれる所だと思うのだが、小説が原作と聞いてあの描き方に納得する。

 


EO イーオー 

2023-05-05 20:38:57 | 映画鑑賞

赤いライトが不規則に点滅し、重厚さを感じさせる音楽になぜか不安な気持ちを掻き立てられてる。そんな風に始まる映画は、サーカスで一緒に舞台に立つ女性からEOと名付けられたロバの瞳を何度も覗き込むようにして進んでいく。

サーカスで女性と一緒に舞台に立つロバのEO。彼女はEOに愛情を注ぎ、EOもそれに答えるも、動物愛護団体からは虐待と訴えられEOは牧場に引き取られる。EOの流浪の旅が始まるのだ。

牧場の中に居れば世話はしてもらえるが、人間の関心は荷物を運ぶだけのEOより競走馬に向けられる。おとなしくしているだけのEOだったが、サーカスで愛情を注いでくれた女性が牧場に会いに来てくれた事をきっかけに、静かに牧場の外に出ていくのだ。

牧場から出て夜の森をさまようEOの目が何度も大写しになるものの、EOは周りで起きる全ての事をそのまま受け入れるだけだ。捕獲されサッカーの試合で勝利の女神と勝手に持ち上げられ、負けたチームのサポーターに逆恨みされる。助けられてもその後はまた牧場で働かされる。更に売られていく途中、載せられたトラックがトラブルに巻き込まれた事で、通りがかった司祭に連れられ大きな屋敷に連れられて行く。その間、EOから強い意志が感じられる事はない。EOは自分の置かれた場所で常にニュートラルにその場に存在し続ける。

EOの目をのぞき込む視線、EOの目から見たその場の風景、その景色の中に静かに居続けるEOを遠くから見つめた視線。幾つもの視線が混在し、静かにそこに居続けるEOが浮かび上がる。

なんとも不思議な体験だった。

 


聖地には蜘蛛が巣を張る

2023-04-30 19:29:00 | 映画鑑賞

テレビニュースが、9.11アメリカ同時多発テロ事件を伝えている頃、イランのシーア派の聖地マシュハドでは暗い街の路地に立つことを生業にしている女性たちが殺される事件が頻発する。

そんな事件を追いかけるジャーナリストの女性が取材の為現地入りするも、その際、保護者(肉親の男性を指すのだろう)の同伴なく宿泊する事さえも苦労する。何人もの女性が殺害されていても捜査は遅々として進まず、被害者が街角に立つ女性であることから一般市民の同情は感じらず、逆に殺害は「街の浄化」であるとさえ目されるのだ。

犯人は街で家族とともに暮らす男性だ。家族が留守の日にバイクで夜の街に繰り出す。貧しさから来る生活苦で夜の街に立ち、厳しい生活環境から来る疲れを取るために麻薬にも手を出す女性を、自宅に連れ込み女性を殺害し街角に放置する。

それ以外はいたって普通の生活なのだ。何か大層な使命感に溢れているわけでもない。ただ、男性は自分がしている事が悪い事だとは思っておらず、それ故犯行も大胆だ。

歪んだ正義のエネルギーは、人々から一旦立ち止まって考える力を奪うようだ。犯人が捕まった後も世の中には彼の行動を肯定するかのような雰囲気が溢れ、息子も父親の行動をカメラの前で誇らしげに語る。

男性たちがそんな風に犯人の男性を英雄視する中、犯人の妻は「世の中はすぐに彼を英雄視したことを忘れてしまうだろう」と嘆く。歪んだ正義は移ろいやすく、その内容も検証されぬまま漂い、またどこかで同じような事が起こるのではないかと思わせる怖さがある。

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監督はイラン出身でデンマークで活動するアリ・アッバシ。事件を追うジャーナリスト役はザーラ・アミール・エブラヒミ。

 


劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室

2023-04-29 21:01:50 | 映画鑑賞

鈴木亮平演じる救命救急医の喜多見が率いるMER(モバイル・エマージェンシー・ルーム)チームの物語の劇場版。

鈴木亮平の座長感がドラマの時以上に熱く燃え上がっているのが分かる。患者への声掛けは優しく、しかしメスを持つ手には一つの狂いもなく、手術中の医療用語の一つに一つにも感情が入りこみ・・・とにかくどの場面からも熱くメラメラとした情熱が伝わってくるのだ。

都知事肝いりの最新医療機器とオペ室を搭載した大型車両で事故現場に駆け付けるプロフェッショナルチームの成功を見た厚生労働大臣は、手柄の横取りを狙って「危険を冒しては、救えない命がある」と、TOKYO MERにはない冷静さで勝負するYOKOHAMA MERを立ち上げる。

非常に安易で姑息な「二匹目のどじょう作戦」。あまりにもわかりやすい展開にちょっと驚く。

しかしこの映画を観る多くの人は、「死者は... ゼロです!」という最後の言葉に予定調和を感じながらも、鈴木亮平演じる救命救急医の喜多見が率いるMERの良心と信念を見せるドラマにエンタメとしての楽しさを見出していたはず。この位の予定調和は織り込み済みのはずだ。勿論、ビルの火災シーンは映画館のスクリーンで見るに値するか?などと突っ込みを入れる必要はない。ビルの火よりも熱いMERの良心と信念の炎を信じて楽しく見る映画だから・・・


オオカミ狩り

2023-04-21 18:31:00 | 映画鑑賞
複数の凶悪犯達をマニラから釜山に向けてコンテナ船で移送する韓国警察の威信をかけたプロジェクトのはずだったのだが、映画は始まってすぐに阿鼻叫喚の渦に飲み込まれる。
移送される凶悪犯達は船を乗っ取る気満々で、警護の為に応援部隊として乗り込んだ面々もそんな凶悪犯達の息がかかった者達が複数紛れ込んでいるのだ。
外部と遮断されたコンテナ船の中だ。悪意を持った者達の方が何倍も有利に決まっている。

この映画の前に韓国映画のリメイクの「最後まで行く」の予告編を見たのだが、この映画もまさしく、最初から出し惜しみせずに、最後まで行ってやるというやる気満々の映画だった。
文字通り@出血大サービスの場面が途切れる事無く続く。ここまで血が出ているので、後はご想像にお任せしますという事は無く、もう最後の最後まで見せてくれるのだ。韓国映画の執拗さが遺憾なく発揮されている。
演じる俳優達も基本的に屈折した感情云々というのは無く、やらなければやられると船の中で銃を構えナイフを振り上げるのだ。
最高のB級アクション大作だ。ソ・イングクもソン・ドンイルも非常に楽しそうに演じている。

search#サーチ2

2023-04-16 19:56:46 | 映画鑑賞

2018年に公開された search/サーチ は、妻亡き後、娘を一人で育てる男性が高校生の娘が居なくなった事を知り、彼女のSNSにログインして手掛かりを掴もうとする話をパソコンの画面上だけで追っていく映画だったが、この映画の設定も同じだ。(search/サーチの監督アニーシュ・チャガンティ原案でsearch/サーチの編集を担当したウィル・メリックとニック・ジョンソンが監督)

ただ、今回はスピード感が前作に比べて倍速だ。前作は娘が戻ってこない事を心配した父親がデジタルデバイスの取り扱いに戸惑いながら捜索するストーリーだったが、今作は、デジタルネイティブ世代の高校生の娘が、新しい恋人と向かったコロンビア旅行から戻ってこない母親を捜索する。

検索サイト、チャット、各種SNS。。。。それらを瞬時に選択判断し、用途別に巧みに使い分ける。狙いが外れて思ったような検索結果が出なかった時のリカバリーの速さにも目を見張る。デジタルデバイスに振り回されず、自分が主導権を握って母を探そうとする強さが感じられるのだ。

映画を観ている私たちは捜索の全てを画面越しに眺める事になるが、その捜索はまるで刑事のそれと同じだ。現場に足を運べない彼女は、自分が使っている家事代行サービスがコロンビアでも営業していると目星をつけて、あっという間にサイトを見つけ出し、単価がお手頃な担当者を探し出す。嫌がる担当者と交渉してその中年男性の懐にサクッと入り込む。(コロンビアでの捜索を手伝う家事代行サービスの担当者を演じるのはヨアキム・デ・アルメイダ。遠隔地でありながら女子高生ジューンとのやり取りに生身の温かさを感じる。)彼の目を通して現場の状況を確認し、それでも足りないとなるとライブ配信カメラを探し出し、リアルタイムで現場の状況を確認しようとする。更に母の恋人の動向を調べる為に彼のパスワードを再発行してその行動パターンを探り、携帯の位置情報から母と恋人の足取りを追う。(FBIの捜査官を演じるダニエル・ヘニーに、その違法性を問われてもひるむ事はない。)彼女自身は動く事はないのに、そのフットワークの軽さは、足で情報を調べ、聞き込みを行う刑事そのものなのだ。

デジタルデバイスを使っても、謎を解く手法は手堅いので、サスペンスの面白さはたっぷり感じられるのだ。

 


AIR/エア

2023-04-09 20:11:13 | 映画鑑賞

1980年代、バスケットシューズのシェアではadidas、コンバースの後塵を拝する状況だったナイキがどのようにマイケル・ジョーダンと契約し、あのエア・ジョーダン人気を生み出す事が出来たのか。

ベン・アフレック演じるナイキの創立者フィルの友人ソニーを演じるマット・デイモンは中年男性らしい体形でバスケットもギャンブルも愛する男だ。その彼がナイキの起死回生の一手に選んだのはシカゴ・ブルズと契約を結んで間もないマイケル・ジョーダン。

adidasを愛するマイケルをどうやってナイキと契約させるのか。チーム@ナイキのメンバーは皆がプロとして一家言持つメンバーたち。それぞれがプライドを持ち丁丁発止とやりあいながら、やっと手に入れたプレゼンテーションのチャンスを逃すまいとする。

彼を納得させるストーリー作りとイメージ戦略。彼にナイキのシューズを履いてもらう事その事はまさにナイキのイメージ戦略なのだが、その彼に、そのイメージ戦略そのものが彼自身の夢と彼のキャリアに大事な事を理解してもらい、更に共感して貰う為に綿密な戦略が練られる。

プレゼンテーションの成功は事前準備があってこそというのが良くわかるのだが、最後の最後にマイケルを納得させるのはマーケティング戦略を超えたソニーの熱い思い。

結果がどうなるか分かっているナイキのマーケティング戦略を描いた映画が、胸熱のエンターテイメント映画になっているのは、チーム@ナイキのメンバーたちのキャラクターを自然に共感出来るものにまとめ上げた監督、ベン・アフレックの力があるのだろう。シューズデザイナーの言葉などは、一言一言に仕事を愛する気持ちが溢れており、「これぞプロ」とうなってしまう・・・・

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1984年当時のヒット曲もふんだんに流れる。あの当時を知る50代、60代の観客にはそれも胸熱ポイント。

 


生きる LIVING

2023-04-02 19:30:31 | 映画鑑賞

事なかれ主義で仕事を進めていた市役所の市民課に努める定年間際と思われる男性。自分が余命6か月と宣告されると、判で押したような毎日を見つめなおすのだ。

いつものように職場には向かわず、貯金を下ろして海辺の街に向かうも、何をやっていいかも思いつかない。偶然出会った作家に自分の睡眠薬を渡し夜の街での遊び方を教示されるも心は晴れないのだ。結局、元の職場に戻り、自分が先送りにしやり残していた事をやろうとする男性。

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1953年のロンドンの役所勤めの面々の日常の様式美に驚くばかりだ。仕立てだであろう背広に山高帽、雨の多いロンドンらしく手には長い雨傘を持ち、毎朝同じ時刻の電車に乗り込み無駄口は叩かずに同僚と職場に向かう。回って来た仕事は自らが調整するのではなく、別の部署にさりげなく周り、戻って来た書類は棚に積み上げる。波風を立てない事を美徳と考えているであろうことが分かる日常の過ごし方。

そんな彼が突然後回しにしてきた公園設置を実現させようとする。『ことなかれ主義』だったはずの上司の変貌に驚く部下たちに多くは語らず、ただすっかり変わった自分の姿を見せる彼。

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人生の終わりを前に、心残りを少しでも無くすべく公園の設置に尽力する。そして、ことなかれ主義が蔓延していた職場の中で一筋の明るさを示してくれた若い女性部下には自分の思いを吐露し、まだ職場の文化になじんでいなかった新人には真摯に仕事をする事の大切さを説こうとする。彼の最後の時間をそばで見ていた事で「もっと何か出来たのではないか・・・」と後悔の念を持ったかもしれない若い二人に彼が示したのは、最後に何かを成し遂げようとする自分自身の姿だったのだ。

自分のそんな姿を見せる事がかえって負担になると思った息子には何も言わず、自分の思いを分かってくれるであろう若い二人には自分の思いを告げて静かに去って行く。

人生の最後をどんな風に過ごしたらいいのか・・・涙しながら考える。

 

 


オットーという男

2023-03-23 21:33:35 | 映画鑑賞

毎朝、毎日、判で押したように近所の見回りをし、ルール違反があれば注意している初老の男性。父親と同じオットーという名前を持つその男性を近隣の住民たちはやや疎ましく思っているのだが、新しく引っ越して来た総勢4人の移民家族だけは違った。
縦列駐車もままならない人の好さそうな父親と、二人のかわいらしい女の子の母親であり3人目の子の出産を間近に控えた母親。

妻を亡くし、合併した職場での仕事に早々に見切りをつけたオットーは、全てに区切りを付けようとするのだが、4人家族の出現は彼の判で押したような日常に大きな変化を巻き起こす。断ってもグイグイ懐に飛び込み、断っても笑顔で再び彼に近づこうとする若い母親のマリソル。

天井から吊り下げるロープを準備するも、彼女が御礼に持ってきた湯気が立つ美味しいサルサを口にすれば、計画は変更となってしまう。
別の手段を考えても、美味しいクッキーを御礼に貰えば、またスケジュールは延期になってしまう。
文句を言いながらも、若い母親であるマリソルのペースに飲み込まれるオットー。

ご近所さんとしてのやり取りで、オットーの性格と4人家族の明るさは手に取るように分かる。
妻が寝ていたであろうベットの空いた場所に手を伸ばして目覚める場面等、口に出せない彼の心の隙間が伝わってくる。近隣の住民たちに対する口調の鋭さとは裏腹に、声にならない彼の悲しみの深さ。

明るいマリソルはそのオットーの気持ちを感じ、オットーも拙い英語で明るい口調のマリソルが教養にあふれた女性であることを知り、お道化た明るさで移民生活の辛さを乗り越えようとしている彼女の心の内を見るのだ。

見える物が全てではなく、見える物の裏にある心のひだを感じる映画だ。

 


刑事ジョン・ルーサー フォールン・サン

2023-03-18 21:13:44 | 映画鑑賞

犯人を捕らえる事に執念を燃やす刑事を邪魔に思った犯人本人が取った方法は、彼の弱みを手に入れ、その情報を使って彼を刑務所に放り込む事だった。捜査中のやり過ぎと思われる手法の数々が公のものとなり、職を失い収監される事になる元刑事のルーサー。

意味もなく失踪し、更に何かに怯えるように自ら命を落とす人々。彼らは何か弱みを握られ、その弱みが公になることよりも、自らの死でその秘密を守る道を選択するのだ。自らは手を汚す事なく、弱みを握った事で人をコントロールする姑息な手法で人々を支配する男。

ルーサーは、塀の中にいるにも関わらず犯人逮捕に異常な執念を燃やし続け、警察はそのルーサーを利用して犯人逮捕に結びつけようとするのだ。お互いにそんな駆け引きを行いながらも、犯人の手がかりを辿っていく。

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ルーサー自身の発する言葉は非常に短い。多くを語らず、自らに課している何かを重荷に感じている風でもある。そんな彼が脱獄を企ててまで犯人逮捕に執念を燃やすのだ。ストーリー故、夜の場面が多く、何が行われているか目を凝らさないと分からない。身を挺して犯人を捕まえようとする元刑事の行動の数々に否が応でも緊張感が高まる。

犯人は相手を情報で支配し、罪を犯させる事で更に支配力を高めようとする。警察内部でも犯人の手法はパラサイトと呼ばれるも、彼自身は他人をコントロールすることで自らの支配力を過信し、異常な喜びを感じているのだ。その手法は非常に怖い・・

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ドラマから派生した映画との事だが、私はドラマの存在をまったく知らず、見終わってからドラマの存在を知った次第。ドラマの存在を知らずとも楽しめるきっちりしたストーリーだ。

Netflixで鑑賞