私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

コンフィデンシャル:国際共助捜査

2023-09-27 21:44:04 | 映画鑑賞

ヒョンビンが北朝鮮の特殊部隊出身の捜査官、ユ・ヘジンが韓国の刑事を演じた「コンフィデンシャル/共助」の第二弾。

前作が韓国滞在期間が3日間という短期決戦だったのと比較して、今度は比較的ゆっくりした時間設定。そしてダニエル・ヘニーがFBI捜査官として参戦することで3か国合同の捜査になり、よりパワーアップということか。

韓国ドラマファンとしては、ダニエル・ヘニーが参加する事によって、ヒョンビンとダニエル・ヘニーが共演した「私の名前はキム・サムスン」も懐かしく思い出す事が出来るし(18年近く前のチョン・リョンウォンを挟んでの三角関係!)愛の不時着にハマった人は、ヒョンビン演じるキャラクターに親近感が湧き、映画も十二分に満喫できる事だろう。

作り手側にもそのあたりを十分を楽しく感じて貰おうという意図があるのだろう。少女時代出身のユナにグループ名を連想させるセリフが満載なのもその証拠だ。

北がなんとかして資金を得ようとするストーリーをコメディタッチで描いた映画故、私もリラックスして鑑賞。

 

 


ジョン・ウィック:コンセクエンス

2023-09-24 19:24:44 | 映画鑑賞

亡き妻の思い出とともに生きるジョン・ウィックシリーズの第4弾、ジョン・ウィック:コンセクエンス。

ただただ亡き妻への思い出を胸に、妻の思い出が詰まった愛犬と愛車の為にNYのロシアン・マフィアに恐ろしい数の銃弾を撃ち込むというシンプルなストーリーだったジョン・ウィックのパート1。

イタリアマフィアの兄弟戦争に巻き込まれそうになるのを断ると、マフィアから自分の家を爆破され仕事を手伝わざるを得なくなるパート2は、伝説の殺し屋は、引退も自分の自由にはさせてもらえないという悲哀に満ちたものだった。

無法地帯かと思われた殺し屋業界だが、ヒエラルキーがキチンと出来ており、「コンチネンタルホテルでの殺しは不可」という殺し屋界の掟を破ったことで、トップの怒りに触れ、全ての殺し屋から命を狙われることになるジョン・ウィックが世界中から狙われる事になったパート3になるジョン・ウィック:パラベラム。

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彼の心の中に生きるのは妻の思い出だけであり、台詞の代わりに聞こえるのは、銃声と激しい息遣いのみという映画が、パート4まで続くとは思ってもみなかった。それも2時間49分という長尺で帰って来たのだ。1作目と比べると約1時間も増えたその上映時間に、妻の思い出活かす為には銃を撃ち続けて自分が生きなければならないという殺し屋の哀しさを感じればいいのだろうか?大団円に向かっているとは分かっていても、その思いは非常に熱くてそしてやや重い。

日本人のシマズ(演:真田広之)と盲目ながらも殺しの達人であるケイン(演:ドニー・イェン)というアジアのアクション界の両巨頭を迎えたアジア観溢れる大阪での戦いから、パリの夜に綺麗に浮かび上がるエッフェル塔を横目に見ながら何時までも終わらない凱旋門の周りの周回ドライブ?、池田屋事件の階段落ちを何十回も繰り返すかのようなサクレクール寺院に向かう途中での瀕死のアクション。どの場面もライティングが綺麗な中、銃や刀の音が響き渡るシーンが続く。弾丸を通さないフルオーダーのスーツを着用していても生きているのが不思議な程だ。

とにかく終わらないアクションの嵐に驚愕し、復讐という感情がどれだけのエネルギーを生みだすのかと、その切なさを感じる。報いを受けたとしても、それが妻への思いに繋がるのなら、それも一種の幸せだろうか。

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エンディングロールのスタントメンバーの人数の多さに驚く。あの凱旋門やサクレクール寺院の場面の様子を考えたらそれも当然か・・・

シマヅの娘を演じるのはシンガーソングライターのリナ・サワヤマ。私は歌声しか知らず、日本語を話している姿を初めてみる。

 


ミステリと言う勿れ

2023-09-17 19:28:55 | 映画鑑賞

広島の美術展を訪れた事で、広島の宮島を舞台にした遺産相続の事件に関わる事になる大学生の久能整。過去から現在に至るまで遺産相続にまつわるトラブルで死者を出していた旧家の女子高生から、「自分も含めたいとこ同士4人が遺言書に従った謎を解く中で起こるであろうトラブルを解決して欲しい」とアルバイトを持ち掛けられたのだ。

常識を疑い、自分の今までの経験と勉強で得た膨大な知識というフィルターを通して、世の中の出来事を把握。多分そうだろうという推測を嫌い、全部の出来事には理由があると、とことんまで突き詰めて考える。カレー好きで自分の中に壮大な宇宙を持っており、友人や恋人がいなくても大丈夫という彼が、広島の旧家で呪われている一族の謎を解く。

角川映画全盛期に金田一耕助が謎を解く横溝ワールドの面白さを満喫した私には、一族とその関係者が一同に会する謎解きスタイルはとても懐かしい。久能整のフィルターを通した令和の犬神家の一族を見ているような気分になる。

しかし、横溝ワールドと決定的に違うのは、おどろおどろしい場面が一つもないところ。久能整のこだわりにくすっと笑い、彼が導き出した答えがそれぞれの登場人物に優しく寄り添おうとしているのを見て、相手に対して決めつけない自由さと彼のこだわりを感じる。令和の優しい謎解きを堪能する。

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私の後ろで観ていた人は、漫画もテレビドラマも未見だったようで「ちょっとなんだか分からない所が多かった」と言っていた。テレビドラマを少しだけでも見ていた方が映画を楽しめると思う。

 

 


赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

2023-09-16 20:21:12 | 映画鑑賞

旅の途中でシンデレラと出会った赤ずきん。魔法使いの力で綺麗なドレスを着せてもらい、同じように魔法の力で御者になったネズミが運転する馬車でシンデレラと一緒に舞踏会に行く途中、事故に遭遇してしまう。成り行きから、更には自分たちが馬車で人を轢き殺したのではない事を証明する意味もあり、宮殿の中で謎解きを始める赤ずきん。

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私は原作本の存在を知らなかったので、舞台設定やキャラクター設定にやや戸惑い、更にコメディなのかパロディなのかという設定にもかなり戸惑う。私はいわゆる福田組と呼ばれる福田雄一監督のドラマも映画も未見だったせいか、「どんな基準でNetflixの審査を通ったのだろう?」と思う位、とにかく全部に戸惑ってしまった。

ただ、橋本環奈演じる赤ずきんが、ミス・マープル的な自分の経験から来る洞察力を駆使するパターンではなく、エルキュール・ポワロ的に何気ない会話から思考、行動を把握して推理するパターンだということが分かってからは、中々の強心臓ぶりを見せる橋本環奈演じる赤ずきん探偵の活躍だけを見るべく、ノンビリ鑑賞。

 

 


オオカミの家

2023-09-11 21:28:08 | 映画鑑賞

チリの山間部にあるコロニーで暮らしていたマリアは、ブタを逃がしてしまったことを叱責されてコロニーから脱走。

逃げ込んだ小屋で出会った2匹の子ブタに「ペドロ」と「アナ」と名付け世話をしながら暮らすマリアだが、いつからか彼女を探すオオカミの声が聞こえてくるようになるのだ。

実際に見えている物と彼女の心の中にある物とがリンクして画面に映し出されているのだろう。

マリア自身の姿も彼女が可愛がっている2匹の子ブタも、そして彼女が逃げ込んだ小屋も、どれもあっという間に姿かたちを変えていく。輪郭も色も質感も全て変幻自在だ。ある時は大きく、ある時は形ある姿が崩れ落ち、そしてある時は叫び声の替わりに目から黒い涙のような液体を流す・・・

カメラは絶え間なく揺れ動き、どこに向かっていけばいいか分からない不安定な彼女の心の中が姿を変えて映し出される。歪みが不安を生み、不安が更なるゆがみを生む。それらが増長していく様があまりにも自由にグロテスクに描かれる。

彼女の不安を増長させるのは、遠くから聞こえてくるささやきである事が段々と分かってくる。「怖がる事はない。言う事を聞いていれば安全だよ。守ってあげられるよ。」飢えと不安に疲れてしまい、遠くから聞こえて来るその言葉に身を委ねたくなる葛藤と戦っているのだろうか。一見優しく聞こえるその言葉の数々は、征服し、制圧しようとする者の言葉だ。

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【追記】

南米チリは、2023/9/11に1973年の軍事クーデターから50年目の節目を迎えたとの事。このタイミングで見るべき映画だったと思う。

1970年、アジェンデ元大統領は、世界で初めて民主的に選ばれた社会主義政権を率いたものの、3年後にピノチェト将軍によるクーデターにより追いつめられ大統領府で自決。ピノチェト軍事政権で経済成長はするものの格差は残り、反対派への拷問や思想弾圧等が行われた事から今でもアジェンデ元大統領の人気は根強いとの事。

 

映画『オオカミの家』予告編


福田村事件

2023-09-03 19:48:08 | 映画鑑賞

1923年9月1日に発生した関東大震災。その5日後の9月6日。香川讃岐からの薬売りの行商団のうち9人が千葉県東葛飾郡福田村で自警団に殺害される。疑心暗鬼になった村人たちが、行商団を略奪や放火をしていると噂されている朝鮮人と誤解したからだった。

未曽有の地震に、東京では建物は倒壊し火災が発生する中でデマが飛び交い、それはあっという間に関東近県に伝播し、内務省の指示により各地で自警団がされた中での出来事だった。

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地震が起こる前の福田村の様子が非常に丁寧に描かれる。在郷軍人会を中心とする村の保守的な面々とデモクラシーを語る村長との微妙な力関係。家族を守る、村を守る。そんな思いの元に形成されている村人たちの密な関係は、ともすればそれに同調しない人々を異端児扱いする雰囲気に流されがちだ。そして違う思いを持つ人間を探しだす事は、残りのメンバーの結束を高める事にも繋がっているのだ。

「自分たちが被害を受けない為、自分たちを守る為に」という思いから始まった行動は、あっという間に大きな波になる。いつの間にか、自らが被害者にならない為に人を殺める事には意味があるという大義名分が出来上がり、自分たちが加害者になっても収まる事はないのだ。その形のないうねりは、恐ろしいパワーを持つ。疑義を唱える者の小さな声はあっという間にかき消される。

大きなうねりが出来てしまった後では遅いのだ。ただ、その大きなうねりはあっという間に簡単に出来上がり、出来上がってしまったら、それそのものが得体の知れないパワーを持ち独り歩きするのだ。

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私は「自分が被害者になったらどうしよう・・・」という恐怖は感じても、「自分が加害者になってしまったらどうしよう・・・」という心配はした事がなかった。自分がいかに傲慢だったか思い知らされる。恐怖を前にし、デマが飛び交っていたら、正しい判断を下せる人間でありたいとは思うが、そんな自信は一つもない。

当時の唯一のメディアである新聞もデマを広げる事にいとも簡単に加担する。それも恐ろしい。

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【追記】

東出昌大、ピエール瀧、コムアイ、水道橋博士・・・・やや癖強めのキャスティング・・・

 

 

 

 


君は行く先を知らない

2023-08-26 21:14:51 | 映画鑑賞

イラクの乾燥した土地を走る車の後部座席に乗っているのは、足にギブスをはめた中年男性とそのギブスに可愛らしいいたずら書きをする幼い少年。後部座席の二人が言葉遊びのようにも思えるとりとめのない話をし続ける中、緊張した面持ちで助手席に乗っている母親と思われる女性と、運転席の青年は殆ど言葉を発する事もない。

家族旅行らしいことは分かるが、車中で旅先での予定が話される事はない。尾行を気にする両親、こっそり携帯を持って来た幼い少年の携帯電話を両親が取り上げる様子から何か理由がある旅であることが分かる。両親は家も車も処分し、車を運転する長男を国外逃亡させようとしているのだ。

逃亡する兄である青年とは年が離れており、何も知らされていない少年にとっては、愛犬を連れたドライブが最高の非日常的な出来事なのだろう。息つく間も惜しんでおしゃべりを続け、大はしゃぎだ。華やかな気持ちで息子の旅立ちを祝えない両親とは違い、何も知らない少年にとっては突然の離別が少し先に待っている事など思いもつかない事なのだ。

車が進めば進むほど別れの時間は近づいてくる。ギブスの中に自分の感情を押し込めたような父親と、溢れる感情を押し殺すような表情を見せる母親と、兄が旅立つことも知らずただ車の旅を楽しむ少年。

この地に残る3人の姿を通して、言葉少なにこの地を立つ青年の不安を思う。この地に残る3人は、今後どんな風に遠く離れた青年の事を思うのだろうか。

Ebi - Shab Zadeh(Official Video)


リボルバー・リリー

2023-08-20 19:35:55 | 映画鑑賞

関東大震災後の東京。自宅を男達に襲われた少年は、リボルバーを持つ小曾根百合という女性に助けられる事になる。少年が持つ秘密は日本陸軍が喉から手が出る程欲しいものだったようで、追ってくる彼らに、洋装に断髪というまるで絵にかいたような大正時代のモダンガールである百合が対峙するのだ。

第一次世界大戦後の不況、そして関東大震災からの復興途中という時代背景。資金難に打開策を探したい軍部の思惑。大正ロマンと大正デモクラシーを背景に(♪ラメちゃんったら ギッチョンチョンで パイのパイのパイ パリコとバナナで フライ フライ フライ♪♪という東京節が流れる中)引退した伝説の諜報部員である百合が秘密を胸に秘め、数だけみれば勝ち目がない戦いにドレスを身につけ、手にしたリボルバーだけで挑む。

綺麗な姿で戦いに挑むというのは彼女の理念の表れらしいのだが、どうみてもリアリティはゼロだ。演じる綾瀬はるかは非常に綺麗に撮られているのだが、彼女の演じる役柄にフォーカスされている感じがない。アクションシーンにスピード感は少なく、更にリアリティは遠ざかる。

百合を助けるシシド・カフカと古川琴音という女性3人のチームワーク、百合を助ける海軍出身の弁護士を演じる長谷川博己。ストーリーが思いのほかシンプルなので、百合を巡る人々とのバディ感を醸し出す時間的余裕もたっぷりあったと思うのだが、それも案外あっさりとしたものだ。

とにかく、銃弾が飛び交う中に果敢に切り込み、弾があたっても倒れない百合。リボルバー・リリーというタイトル通り、綾瀬はるか演じる百合の一挙手一投足にフォーカスした映画だ。

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ジェシーが非常に情けない陸軍軍人を演じている。ステレオタイプな役柄設定にも関わらず、自ら見せ場を作っていると思うのだが、なんとなく演出から置いてきぼりな感じが否めない。

 


クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男

2023-08-11 20:49:36 | 映画鑑賞

脚本家としてキャリアをスタートしたクエンティン・タランティーノの足跡を時系列で追っていくドキュメンタリー。

作品の復習と合わせて、出演俳優たちだからこそ語る事が出来るエピソードの数々。トゥルー・ロマンスでは自分で演出したくとも資金的な問題からかなわなかった事。レザボア・ドッグスの黒のスーツは俳優たちの自前だったことや、スーツに見える黒い洋服で代用されていた事。キル・ビルでユマ・サーマンのスタントをこなしたゾーイ・ベルへの演出と、一流のスタントマンである彼女に俳優としてかけた言葉。長い間傍で彼の活躍を見ていたマイケル・マドセンの言葉と、彼とハーヴェィ・ワインスタインとの関係を理解する手がかりになるエピソードの数々。

映画好きとしては、101分の至福の時だ。

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出演者がカットがかかる度にカメラに向かって口にする言葉「ハーイ、サリー!」。その場にいなくとも映画に欠かせない編集という仕事を担うサリーの存在を大事にし、その思いを一緒に仕事をするメンバー全員に共有しようとするタランティーノの思い。「クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男」との邦題がついているが、何よりも彼が映画を愛しているというエピソードだと思う。

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ジャッキー・ブラウンやキル・ビルを見返したくなる。


しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~

2023-08-06 19:24:11 | 映画鑑賞

ノストラダムスの大予言ならぬヌスットラダマスの大予言の通り、2023年白い光と暗黒の光が雷のように空から落ちてくる。白い光は春日部に住むしんちゃんの元へ、黒い光は新橋の街角でティッシュ配りをしている自分の身を憂い、更には世の中を恨む青年の元に落ちるのだ。

謎の光によって不思議な力を得た二人だが、暗黒の光を浴びた青年はその力を自分を蔑む世の中への復讐の為に使おうとし、しんちゃんはいつもの通りお気楽なままだ。

しかし、そんなしんちゃんの力を借りて、暗黒の光の超能力を阻止しようとする国際エスパー調整委員会の二人登場。いつも通りの巻き込まれ型でトラブルの渦中に放り込まれるしんちゃんだが、超能力を手に入れてもその使い方はやっぱりいつもの通り。綺麗なお姉さんに近づきたいとか、なんだかおもしろい事をしておちゃらけてみたいとか、野心というものは一つもない。しかし、家族と友達が危機に巻き込まれそうになると、そのやる気にエンジンがかかるのもいつもの通りだ。

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子ども時代の虐めが発端となり、その後も一つもいい事がなかった人生を歩んでしまっていると思い、すべてに前向きに生きる事の出来なかった青年(松坂桃李がゲスト声優だ)と、非常に単純で暢気で、でも前向きなしんちゃんが向き合う。『オトナ帝国の逆襲』を思い出させるテーマだが、それに比べると問題への向き合い方もストーリーも非常にシンプル。でもそのシンプルさもしんちゃんらしい。3Dアニメらしくカンタム・ロボが超巨大ロボットで登場。

 


ドリーム ~狙え、人生逆転ゴール!~

2023-07-31 21:21:40 | 映画鑑賞

ホームレス・ワールドカップに出場するために急遽集められたメンバー達をまとめる監督は、トラブル続きで現役引退状態になっているサッカー選手のホンデ。

実母の詐欺トラブルで現役時代から雑音が絶えず、更に彼自身も芸能界への転身が噂され、これ以上現役を続ける事は事実上不可能だったのだ。

そんな中で、少しでも勝利に貢献すれば、すっかり傷ついたイメージの回復に効果的だろうとにらんだ芸能プロダクションの後押しもあり、渋々と監督業を引き受ける事になったのだが、蓋を開けてみると監督とは名ばかり。
なんと、この感動的な「ホームレス・ワールドカップ」に目を付けた放送局のプロデューサーが、実質的な監督だったのだ。

IU演じるプロデューサーの笑顔の下に隠された「視聴率ゲットの為に感動的なプログラムを」というやる気満々の野心。
パク・ソジュン演じる選手だったホンデの「まぁ芸能界に入るまでのイメージアップの繋ぎ仕事」というやる気のなさ。

この二つが融合して、なんだかまぁ、とりあえずやりましょうという、妙に脱力した雰囲気がそこかしこに感じられるのだ。
ただ、この二人の掛け合いの脱力さがこの映画の持ち味。プロデューサーは、感動を追い求めすぎると押しつけがましいといいながら、さりげなくストーリーを設定。やる気のないメンバーや、やる気があってもそれをうまく出せないメンバー等をバランスよく配置し、最終的に感動的なプログラムを作ろうと画策するのだが、もちろんそんな事が上手くいくはずもない。ストーリーを作りやすいメンバーを集めても、意図的に感動など作り出せるわけもない。
更に選手たちもそれぞれが事情を抱えて、「競技に集中します!」などと決意を固める状況でもないのだ。しかし、そんな選手たちの事情を知る事で少しずつ彼らのサッカーへの思いに答えようとするホンデ。

彼らの思いに合わせ、でもガツガツする事なくかなり緩い感じで、しかし冷たい目線はなく、一貫して愉快な映画として描いているのだ。
観る側も、作り手の思いを意気に感じて、温かい気持ちでみればいいと思う。

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2010年に韓国が初めて出場したホームレスワールドカップの試合を題材にした映画は、韓国では今年の4月に公開。ヒットが期待されるも、動員客数は112万人。7月末にNetflixで配信が始まり、グローバル部門で7位との事。


君たちはどう生きるか【追記】

2023-07-26 21:29:05 | 映画鑑賞

公開まで映画の内容に関する情報を明らかにしない手法で公開された、スタジオジブリの作品「君たちはどう生きるか」

公開2日目に観た際の感想は、「ネタバレなし」という縛りで書いてみたが、公開からしばらくたち、ネットや新聞でも内容に触れた記事も目に付くようになったので、忘れないうちに2,3書き留めておきたい。

入院中の母を空襲による火事で亡くした主人公の眞人は、父が亡くなった母の妹であるナツコと再婚する事を知り、更に既に彼女のお腹の中に新しい命が宿っている事を知っても非常に礼儀正しい態度を取る。ナツコはもっと甘えて欲しいようなそぶりを見せるが、それは無理というものだろう。

ややそっけない態度ではあるものの、悪態をつくわけでもない。彼なりに、自力で乗り越えなければならない事を分かっていての行動だと思う。更によく分からない世界に迷いこんだ後は、自分の意志で「父さんが好きなナツコさんを助けたい」という思いをキチンと見せる。

転校後、父の裕福な暮らしぶりから周りとなじめずに、石で自らの頭を傷つける突発的な行動をとっていた眞人は、不思議な世界に迷いこみ、そこから戻って来た時には、自分のすべき事と向き合える少年になっていたのだと思う。

反対に彼の父親であり軍需工場を営む父親は、その裕福な暮らしぶりの為に息子が学校で疎外感を感じている事も気づかないようであり、更には戦後も戦時中と同様に裕福な暮らしぶりであることがうかがえる。その様子からは、若い眞人が戦争という辛い経験を乗り越えて、ひとり大人になった事も気づいていないのではないかとも思わせるものがある。大人はもう自分の世界が出来上がっているのだ。

私は、不思議な経験をした少年が、大人になる過程を見せる物語だと思って映画を楽しむ。

 


ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

2023-07-23 19:16:13 | 映画鑑賞

敵に向けて撃ったはずの魚雷で爆発する潜水艦事故の原因は・・・・という不穏な始まり方をするデッドレコニング PART ONE。

決して国際通貨基金などではなく、不可能な任務を遂行するIMFのミッションは、「全人類を危機にさらす新兵器を悪の手に渡る前に見つけ出す」というミッション。恐ろしさは感じられるものの、なんだかその全貌がはっきりとしないミッションでもある。

イーサン・ハントことトム・クルーズのアクションへの飽くなき探求心を痛いほど感じるのは勿論だが、以前からの因縁で、イーサン・ハントに異常な執着を見せるガブリエルを中心に、以前の上司との複雑な力関係、そしてミッションの遂行も大事だが友情も大事にしたいという悩めるイーサンに、ミッションの遂行を促すルーサーとベンジーとの関係等、今回は以前にもましてアクションに絡めて人間関係の複雑さを全面に押し出されている。

ローグ・ネイションでの華麗なアクションが記憶に残るレベッカ・ファーガソン演じるイルサを始め、上手に手際よく人を騙す事で生きて来たが為にイーサンと共に逃げる事になるグレース(ヘイリー・アトウェル)、なんとも本心が見えない武器商人のホワイト・ウィドウ、そして切れ方が半端ない金髪の殺し屋等、女性たちも多彩だ。皆、見せ場があり、それぞれ自らの意志で選択し、それ故イーサンとの関わり方も印象的だ。そしてその女性たちを輝かせつつ、自らも光り、走る事を止めないイーサンことトム・クルーズ。時々アップになる顔に年齢を感じさせつつも、その肉体の動きに衰えは全く感じられない。

とにかく見る人に楽しんで欲しいという思いが感じられるので、その思いを全力で受け止めたいと思い楽しんだ163分。それでも前後編になってしまったのは、やり残したくないという思いの表れだろう。私はもう一度楽しめると思い、この手法を前向きに受け止めている。

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ローマでは狭い路地で黄色のフィアットを操り、コロッセオの前を走り抜ける。1万3000回も練習したというバイクで谷底に落ちるシーンはノルウェーのムーレ・オ・ロムスダールにある山の断崖絶壁。私には世界各地で繰り広げられるアクションシーンも楽しみの一つだ。

 


君たちはどう生きるか

2023-07-15 20:10:40 | 映画鑑賞

スタジオジブリの宮崎監督の10年ぶりの新作映画「君たちはどう生きるか」は、公開まで映画の内容に関する情報を明らかにしない手法で昨日公開。

この手法が取れるのは今まで築き上げた物があってこその事。周りのスタッフや関係者をどのように説得したのかが気になる所だが、この内容であれば、その手法も選択肢の一つかもしれないと思ったりもする。又監督の年齢的な事もあり、次の作品に続く為には成功し続けなければならないという呪縛が、以前よりは少なくなっている事も若干関係しているのでは・・・と思う部分もある。そういう意味からこのような挑戦もしやすい土壌があったのではないかと思う。ただ、この点については、純粋に監督自身の事に起因するもので、スタジオジブリ的には「・・・・」というのはあったはずだ。それについては色々意見の分かれる所だろうと思う。

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現時点でも、劇場でのパンフレット販売開始の時期は未定になっているようで、いわゆるネタバレ厳禁になっている中で感想を書くのは非常に難しい。ただ、映画の感想をあれやこれやツラツラと書くのは私の楽しみでもある。「ネタバレなし」というハードルがある中で、感想を書くというのも楽しい経験かもしれない。

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「君たちはどう生きるか」というタイトルを「あなたはどんな風にこの映画を楽しみますか?」という風に頭の中で変換して映画を楽しむ。ネット上ではもう少し辛辣な意味合いを含めてタイトル変換をしている人の意見も多数あったようだが、私は「好きに見ていいんだ!」と自由に判断し、逆にとても楽しかった。

今回は、この自由な展開をどんな風に考えるかは全部私の責任。世の中にある事の意味が全部分かってしまったら、そっちの方が楽しくないではないか・・・とリラックスして見る事が出来たのだ。

ストーリーは、監督の現役感がたっぷりと感じられる挑戦状のようにも思えるが、私は映画ファンではあるが、「となりのトトロ」も「風の谷のナウシカ」も「魔女の宅急便」も見ておらず、ジブリ作品に特に思い入れもないため、いわゆる宮崎駿監督の脳内散歩と言った雰囲気の映像の数々を楽しむ。

私には動きの表現や、唯一ポスターのモチーフにもなっている鳥の動きの数々が新鮮だったし、柔らかい動きやポニョポニョした質感が以前よりもパワフルな感じに受け取られた。

描かれる時代と家族の在り方に監督の意図するところがあったと思い、それについて思う所を書き残したいのだが、ネタバレになってしまうのでそれが出来ないのが残念だ。更に声の出演者についても自分の備忘録として書き残したいのだが、それも出来ない事なんだろう。

 

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「席ガラガラで草」ジブリ新作『君たちはどう生きるか』宣伝なし“スラダン手法”も「爆死必至」

こんなネット記事があったが、私が見た映画館ではどの上映時間もほぼ満席状態だった。因みに予約サイトで明日の状況をチェックしてみたが、今の時点で、ほぼ満席状態だ。


インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

2023-07-09 19:48:53 | 映画鑑賞

知性派でありながら肉体派、考古学者でありながら冒険家という二刀流で楽しさを見せてくれたインディ・ジョーンズの秘宝を巡る最後の旅だ。42年前に観たレイダーズ/失われたアーク<聖櫃>の楽しさを思い出しながら、鑑賞。

1940年代の因縁の対決に端を発する運命のダイヤルの話故、若々しい姿も見せるハリソン・フォード。容姿を若返らせるVFX技術の高さに驚く。大きなスクリーンでも見ても違和感が一つもないのだ。

アポロの月面着陸に沸き立つ1969年のアメリカが舞台になると、年齢に見合った姿を見せるも、秘宝が権力に利用されることを嫌うインディ・ジョーンズの精神は変わっていない事は伝わってくる。フェドーラ帽で鞭を操り。秘宝を守るという夢と希望に向かっていく姿は、シリーズ最終作でも変わる事はない。肉体派らしく繰り出すパンチも昔のままだし、地下鉄の構内から線路まで、馬で走り回り、ありとあらゆる危機一髪を回避する方法も昔のまま。

1980年代の3部作を思い出させる展開も各所にあり、懐かしい展開を面白く見ながらも、ストーリー展開にはどこかこじんまりした感じを持ってしまった。(大団円を意識しすぎている点もあったのだろうか・・・)これもインディ・ジョーンズというブランドに、大きな期待感を持ちすぎてしまったせいかもしれない。

最後の展開をどんな風に納めるのだろうとちょっと驚いたが、「知識こそ宝」というポリシーを貫こうとする考古学者であり冒険家というインディ・ジョーンズらしい姿でシリーズは終了。

大きい音もクリアで割れる事がない極上爆音上映で鑑賞。