宣祖(ソンジョ)が王だった時代の朝鮮。
両班の息子ジョンリョと友情を結ぶ奴婢の息子チョンヨン。
武術の科挙の試験に合格しない息子の為に両班である父が選んだのは剣術に長けたチョンヨンの身代わり受験。奴婢である身分から抜け出す為、友人のジョンリョの為、試験を受けて身分も友情も確固としたものになるはずだった未来は、ジョンリョの父の不義理と、日本的に言えば文禄・慶長の役(朝鮮では壬辰・丁酉の倭乱)の混乱により、堅い友情を結んでいたはずの二人の歯車が狂ってしまうのだ。
倭寇の侵攻により荒廃する国土に更なる混乱を起こしたのは、民を見捨てて早々に逃げ出した宣祖(ソンジョ)の行動。民衆の怒りが爆発し、両班の住居が焼き討ちにあう中、ジョンリョの妻を助けようとするチョンヨンだが、ジョンリョの妻は奴婢である彼に助けられるのを良しとせず、自ら命を絶った事で二人の友情は修復不能になる。
庶民が立ち上がって義兵となり、倭寇として残った者もいる荒廃した中、チョンヨンを信じきれないジョンリョは彼への復讐を心に王を守っていくのだ。
戦のシーンは大きなスクリーンで見たくなる迫力がある。全てに疑心暗鬼になり自分の権力を守るだけに興味がある宣祖を演じるチャ・スンウォン。奴婢から抜け出せなかった悲しみと、友と思ったジョンリョとの対峙に心が揺れるチョンヨン。更には残留した倭寇を演じるチョン・ソンイルが操る自然な日本語。個々の役柄と戦のシーンは非常に迫力があるものの、一番の肝となるチョンヨンとジョンリョの友情が歴史の中で翻弄される悲しみが空回りしてしまうように感じられるのはなんでだろうか。
カン・ドンウォン演じる奴婢のチョンヨンの思いに比べると、チョンヨンを身代わりに仕立てて手に入れた武官の地位に固執するジョンリョの焦燥感を私が上手く理解できなかったせいだろうか。