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2月11日が、国連が定めた『科学における女性と女児の国際デー』だったということを知り、小学校高学年の頃の出来事を思い出した。
小学校5年生頃の秋口だったと思う。担任の先生が「隣の小学校の先生が、毎週、土曜日の午後に理科の特別授業を毎週行っている。ついては、私達の学校からもその理科の授業に参加したい人を募る事になった。ついては、やってみたい人はあとで職員室に来るように」という話を帰りの会で皆に呼びかけていた。
小学校高学年にもなると、ピアノや習字、そろばん等の習い事が忙しく、土曜日の午後ずっと公園で遊ぶという近所の友達が段々減ってしまっていた。父親は土曜日も仕事だったし、母も私の昼食用の焼きそばの準備を終えると、又近所のパート先に戻っていったので、土曜日の午後は常に暇を持て余していた。新しく出来たばかりの学校故、図書館の本も少なく、借りられる本はもう全部借りてしまっており読む本もない。テレビばかり見ていても後で怒られるだけだ。私も習い事の一つでもしたかったが、「そろばんもお習字も学校の授業でやれば十分」という母は、なんとなく習い事をしたいという私の言葉を聞き流すだけだった。友人のようにピアノの一つでも習いたかったが、「ピアニストになるの?ならないでしょ?なら、習う必要はないよね」と、現実的な言葉で子供に二の句を継がせない手法を使われれば返す言葉などない。
そんな私にとって、土曜日の午後、他校に行き、理科の実験を行えるというイベントはとても魅力的だった。理科の実験に特別な興味はなかったが、学校の授業内での実験はビーカーだのアルコールランプだの5,6人の班に一つで、元気いっぱいの男子たちが主導で班の実験が行われる事が多く、「今日は実験を頑張った」という充実感を感じた事もなかった
隣の小学校の先生は、1年間の間、土曜日の午後に実験中心の理科の授業を行い、その特別授業の結果を報告するというミッションに挑んでいたらしく、上半期の終了後、10月から3月の下期の新しいメンバーを募っていたらしい。(50年近くも前の事だし小学生の理解力だ。詳細は違うかもしれない・・ただ、当時、私はそんな風に理解していた)
担任の女性の先生は、理科を好きとは思えない私が一人でやや前のめりに職員室にやってきたのでびっくりした風だった。ただ、「両親は忙しので隣の小学校に送ってはくれないが、場所も知っているので、一人で自転車で行けるから大丈夫です。えっ?雨が降ったら?合羽を着れば大丈夫。」と、午前の授業が終わったら、急いで家に帰り、昼ご飯を食べたら自転車で隣の小学校に一人で向かうと言う私の事を、先方の先生に早速報告すると言ってくれた。
どうやら、私以外に土曜の午後、理科の実験をするために隣の小学校に行くというミッションに手を挙げる人が居なかったらしいのだ。
「これで、退屈な土曜日の午後を楽しく過ごせる事が出来る」と私はちょっとワクワクしていた。授業ではないのでテストもないだろう。自分一人で特別なイベントに参加できる事をこっそり喜んでいたのだが、そんなワクワクは長くは続かなかった。
翌日、先生に職員室に呼び出されると、「せっかくやります。と言ってくれたのに、とっても申し訳ないんだけれど、先方の先生から女子生徒でなく男子生徒でと連絡があって・・・」と、先方から断られた事を伝えられたのだ。
「4月から9月の特別授業には隣の小学校の女子生徒が参加していたので、10月からの後半は男子生徒がいいということらしい」と先生は苦しい説明をしてくれた。
子ども心にも、私が傷つかないように先生が薄っすら嘘も交えて私に説明してくれているのが分かった。既に済んだ特別授業に本当に女子生徒が参加していたかどうかは分からない。
ただ、面接して私が気に入らなかったから断られた訳でもなく、ただ、私が女子生徒だったから断られただけなのだ。両親に申し込んだ事を話していなかった事も幸いだった。
母に知られれば「余計な事をしようとするから嫌な思いする事になるのよ」と、私が悪いわけでもないのに、小言を言われる事が確実だったからだ。
更に幸いだったのは、参加を希望したことをクラスでも誰にも話していなかったことだ。翌日、隣の班の男子生徒が「先生から隣の学校の理科の実験に参加したら?」と声を掛けられたと話しているのが聞こえてきた。私も暇だから参加してみようかな?という程度の軽い気持ちだったので、がっかりする気にもならなかった。そんなものだよね・・・と思い、楽しそうに話している男子生徒の言葉を遠くに聞いていた。
その後、誰にもこの話をすることなく、今日になってしまった。50年以上前の事でも鮮明に覚えている事を考えると、子ども心にもなんだかな・・・と思った出来事だったことには間違いない。