離婚し、息子を連れて実家に戻り、家業の文具店の手伝いをする女性。林業を生業とする男性と出会い再婚し、再び幸せな生活を手に入れたはずだったのに、夫の突然の事故死。そして夫が生前他人に成りすまして暮らしていた事を知る事になる妻。夫は誰だったのか。妻は離婚の際にも世話になった弁護士に夫の身元を確認する仕事を依頼する。まるで探偵かのように男が誰だったのかを熱心に調べ続ける弁護士。
妻と子どもたちが知っている男は優しく、そして毎日の生活は幸せだったはずだ。ただ、男が別人の名前を名乗っていた事でその幸せな記憶はあっという間に危ういものになる。弁護士も男の身元を熱心に調べ続けるうちに、なぜかその心持は同じように危ういものになっていくのだ。
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男が誰だったかよりも幸せだった生活を確認する家族と、男が誰だったかを探し続けるうちに別の何かを探し出す事になる弁護士。自分が何者であることを確認する事にどんな意味があるのか。オープニング、一人の男の後ろ姿の絵と一人の男の後ろ姿しか映っていない鏡・・・そしてエンディング。
自分が二人の男の人生を見せられていた事に気づき、驚く事になるのだ。
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追記:
対人関係ごとに違う姿を見せる「分人主義」はアイデンティティの崩壊にもつながるのではないかと色々考えさせられたが、文章力の無さ故、そのあたりを上手く感想に織り込む事が出来なかった。