1979年の韓国。朴正煕大統領の暗殺後の民主化ムードの中、生前の朴正煕大統領の元での中堅メンバー達が中心となって結成されたハナ会と、この機会に新しい体制を目指す勢力との対立が目立つようになる。
1979年12月12日の夜「機は熟した」とハナ会を率いて行動を起こす後の大統領である全斗煥と、彼とハナ会の行動を止めようとする軍人の、たった一晩の戦いを描いた映画。
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10月26日の大統領暗殺後、2か月も経たないうちにクーデターを仕掛ける全斗煥の後ろ盾になったのは、軍内部の秘密結社でもあるハナ会。電話を全て傍受し首都ソウルを守ろうとする軍の動きを把握し、各師団に所属するハナ会メンバーの存在を最大限に利用する。権力を手に入れようと欲望むき出しの集団の前に正攻法で挑もうとする軍人のイ・テシンは結局力尽きるのだ。
歴史的な記録や資料を基に創作も交えて描かれる9時間の攻防。結末が分かっていても、圧倒的な緊張感と分刻みの駆け引きで142分を一瞬たりともダレることなく見せる。
政治的な欲望を隠す事もせず「負ければ反乱、勝てば革命」と気を吐き、驚く程ビジュアルも似せて後の全斗煥を演じるファン・ジョンミンと、軍人として行うべき事は国防のみと、ブレることなくソウルを守り切ろうとする軍人のイ・テシンを演じるチョン・ウソン。
この二人を筆頭に軍人を演じる俳優達の力技の演技の数々。そのリアルさに息を飲む。
そしてこの9時間の出来事が、民主化要求を求めた市民たちを虐殺した翌年5月の光州事件に繋がっていくのかと思うと、軍人が政治的権力を持つ事に固執する事の怖さを感じずにはいられなかった。ただ、この後そんな風に権力を握った彼らもいずれは負け犬のように表舞台から降りる事になるのだ。権力に固執する恐ろしさをエンタメとして昇華して見せる映画の熱さの裏にある現実をも感じる。
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韓国版のポスターは、ファン・ジョンミンが全斗煥の見た目に寄せている事が更によくわかるようになっている。
これだけの登場人物で描かれる12月12日の夜の出来事。