「殺し屋」に依頼された仕事を断るという選択肢はない。依頼された仕事を断るということはイコール自分の死を意味することなのだ。殺しは成し遂げられてこそ秘密裏に葬る事が出来る。そうでなければ、どこからか綻び始め、秘密が守られる事はない。
齢70を超え、記憶障害から自分の引き際を感じた殺し屋が最後に受けた仕事は、寝ている少女の殺害だった。しかし殺しを生業にしているからこそ、自分で決めた一線を越えたくない男は断るという究極の選択をする。殺し屋を生業にしている者は引退の時期が難しい。期せずして自分の引退を懸けて殺し屋としての矜持を守ることになるのだ。
*****
アクション映画を好きで沢山見て来た私にとっては、演じるリーアム・ニーソン自身の選択、「アクションスターとしての最後をどんな風に観客に見せるべきなのか?」その一つの答えを見せて貰ったような気持ちになる。勿論これが最後の答えではなく、又別の形で最後に向けての姿を見せてくれるとは思う。ただ消えゆく記憶を少しでも残そうと腕にサインペンで殺しのルールを書き込み、殺しの現場に向かおうとする姿は、映画の中の姿とはいえ、なんとも感慨深い。
FBI職員役のガイ・ピアース、不動産王として街に君臨する富豪を演じるモニカ・ベルッチ。二人の演技も私にとっては渋く味わいのあるものだった。
*****
ミステリー作家 ジェフ・ヒーラールツの小説が原作。2003年にベルギーで映画化されているようで、そのリメイク作品との事。ラストの描き方は意見の分かれる所だと思うのだが、小説が原作と聞いてあの描き方に納得する。