あなたならどうする 家族の延命治療
5月の連休が終わってしばらくすると、父はちょっと元気がなくなった。熱は7度を少し超える位。特に咳も出ず、食欲も普段と変わりなかったのだが、熱が下がった後に「誤嚥性の肺炎だった。」との診断を受ける。
食べ物の呑み込みが悪くて肺に食べ物が入ってしまうことで起こる肺炎だからとの説明を受けて、それまでの一般食が急にミキサー食となってしまった。食事の形態が変わったことと関係があったのかは分からないが、食が細くなり、目に見えて元気がなくなってきた。昼間もうとうとすることが多くなり、7月に入ると食べ物をうまく飲み込めなくなってしまった。
ゼリーのようなものもむせるようになり、水も上手く飲み込めなくなったと連絡があったのが水曜の午後。しばらく点滴で様子を見ていたのだが、その週の土曜日に病院に呼ばれ、病状の説明とともに今後の治療方針を説明された。
入院してずっと点滴治療をする方法と胃ろうを作る方法さらに何もせずにこのまま様子を見る方法の3つの方法があるが、どの治療を取るか、その場での選択を迫られることになった。
「今、決めるんですか?」と先生に確認すると「体力が落ちているので、どうするか早く決めた方がいい。胃ろうなら、今日ベットが空いていたらすぐ入院してもらい、体力が回復したら手術。入院から退院まで1ヵ月程かかります。」と分かり易く説明してくれた。
ただ、分かり易く説明してもらっても、考える時間は殆どない。
さらに、胃ろうの場合、手術をしてみないと胃ろうが作れるかどうかはっきり分からないし、身体の状態で胃ろうが出来ない人もいます。術後上手くいかない人もいるしと、もちろん後ろ向きな情報も一緒に説明を受けるので、ますます悩むことになる。しかし、今決めてくださいということだったので、まだ80歳前だし、もう少しのんびり施設で過ごさせてあげたいと胃ろうの手術を行うことにした。
胃ろうをすると、今のタイプの部屋にはいられないのだが、フロアを変えればなんとか対応できるという施設の人の言葉に後押ししてもらう形になった。
ただ、入院の日には手続きなどで半日ほど拘束される。
仕事が忙しく、とても急に明日休みます。などといえない状況だったので、「1週間入院を待ってもらえないか」とお願いしてみた。
「1週間も待てないかもしれませんよ。」とも言われたのだが、その前に「無理に胃ろうを作らずにこのままお父さんの持っていらっしゃる時間を過ごしていただくという方法もありますよ。」と説明を受けたことを思い、「もし1週間待てないなのだったら、それはその時で仕方ない」と思うことにした。
説明を受けて胃ろうの手術をすることにするまで時間にしたら20分程。
体調などと状況もあるので、なんとも言えないが、やっぱり事前にある程度考えておかないと、この短い時間で判断するのは、とても辛いものだ。
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父は結局胃ろうの手術をしなかった。入院を先延ばしにしているうちに、体調が少しずつ回復し、ミキサー食の食事を食べられるようになったのだ。
入院を見越しての事なのか、それまで服用していた大量の薬も一緒に止めてしまったのだが、薬の副作用がなくなったせいなのか、逆にそれまでより体調がいいと思える位元気になってきた。
ミキサー食だし、元気と言ってもレベルの度合いはあるが。。。
ただ、このままの体調が続くとは思わないし、この先誤嚥性肺炎の可能性が消えるわけではない。肺炎を何度か繰り返したりして、少しずつ体力が落ちていくのかもしれない。ただ、今回の事でいろいろこの先のことを考えるきっかけにはなった。
父の場合、胃ろうを作るために1ヵ月も入院することは、かなり体力的にもきつい状況だ。次は違う判断をすることになるかもしれないと思う。
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