寝室に美女のポスターがかかっている
同居人が見たら文句を言いそうなセクシーなものではなく
ただ普通に着物を着ているだけの女性がそこにいる
美女の定義は人それぞれだが、自分はこのポスターの女性を見ると
憧れの気持ちを禁じ得ない
正確にはこの女性ではなく、この女性の映画で演じた役の女性が
最高に美しいと感じている
その映画は始めるやいなや、ぼんやりと一人の女性が浮かびあがる
セピア色で思い出のように、それが映画のその後を暗示させる、、
森田芳光監督、夏目漱石の「それから」がその映画で
その美女は三千代役の藤谷美和子だ
映画は衣擦れの音、サイダーの音、百合の花の香り、明治時代の佇まい
物静かな会話は奇妙な緊張感を醸し出している
松田優作演じる代助は思いを隠している
藤谷美和子演ずる三千代はそれを感じ取っている
口に出して言いたいことが言えない、、そのもどかしさ
この映画をテレビ番組で見るのは辛い
緊張感がCMで途切れてしまうからだ
抑えた演技が見る方の想像力を掻き立てる
藤谷美和子は、かっぱえびせんのCMで知られる存在になった
その後は知らないが、この「それから」での存在感は
ワーグナーが女性による救済とか
ゲーテの永遠に女性的なるものによる救い(?)
と言った言葉を思い出させる
この女性の有り様(一緒に道徳を外れる覚悟)は
救いという言葉しかふさわしくないような気がする
それにしても、この慎ましやかさは、、たまらない
(藤谷美和子はその才能を発揮せずに生きているのがもったいない)
そのポスターの女性は