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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

西尾維新 『悲亡伝』 感想

2015-12-16 23:32:31 | 西尾維新
ようやく読み終えた。
だんだん500頁を読む時間をとるのが難しくなってきた。
とはいえ、やっぱり読んじゃうんだよね。

ということで、とりあえずスペース、空けときます。























































長い、ながーい、
とてつもなくながーい四国編を終えての、
ようやくの新章開始!
面白かった!

いきなりの世界編で、チーム空々、改め、空挺部隊wの面々が、
世界中の対地球組織に内偵に向かう、という話。

いささか冗長といえば冗長だけど、それはまぁ、西尾維新だから、お約束として。

それでも、この第7巻が、新章である「世界編」の四部作の第一巻であることを考えれば、登場人物や関連組織の情報を整理し、新旧のキャラの間で情報の平仄を合わせた、という点では、よくまとまっていたんじゃないかな。

もっとも、終始笑かしてくれたのは、地濃鑿だったわけだがw
いやー、彼女の空気の読めなさは凄いわ。
というか、あのブレなさはねー。
キャラ的にも、こんなジョーカーキャラ、見たことがない。
というか、ワイルドカードw
オールマイティw

ともかく地濃鑿だったらやらかしてくれる、という期待があるだけで、どんなご都合主義的展開も可能になるところが凄い。

ある意味で、空々くんの対になる、凄さだよね。

まぁ、地濃鑿が何が面白いか、ってところは、実際に『悲亡伝』を読んでくれ(笑
引用するのもバカらしいw

ともあれ、彼女がいてくれたおかげで、なんかここ真剣で神妙だな、というシーンが突然笑い、というか冷笑の場に変わり、作中の他のキャラの発言が、あれ、それ都合良すぎでしょと読者的に思うところには容赦なく地濃が突っ込む。

という具合に、とにかく万能!

地濃鑿は、ホント、四国編の最大の収穫だね。

この空々くんの伝説シリーズは、どこかしら戯言シリーズのリメイクのようなところがあって、あのシリーズに負けず劣らずの強者キャラ揃いなんだけど、それでも、地濃鑿は頭一つ抜けてる。それくらい、便利・万能キャラ。

空挺部隊には、四国編から魔女、魔法使い、元魔法使いが総勢7人加わっているのだけど、魔法使いチームが例の天才三人だったりするわけだが、彼女らが「天才」と記されるたびに、いやー、それはあくまでも人間の世界の尺度でだろ?と突っ込みたく成るくらい、地濃は人間を超えてる。
いや、空々くんもそうなんだけどさ。

で、あんまり地濃のことばかり書いていても先に進まないので、世界編第一巻としての『悲亡伝』の流れについて記すと、

要するに、対地球共同戦線を敷くための、世界連合を作ろうと言うのが、世界編の大きな背景。

その動きに対して、左右左危博士が、それつまらん!とばかりに、独自路線を展開しようとしてそのための時間稼ぎに使われたのが空々くんたち空挺部隊の面々、ということで。

しかし、左博士、ぶっ飛んでるようで実は正攻法派。
ここは、結構しびれたんだけど、四国編で、氷上女史が魔法と科学のコンボを実践してみせたのにヒントを得て、その合体技を対地球用に開発しようとする。しかもその開発を宿敵・地球にさとられないよう、衛星軌道上で行う、という。

まぁ、前巻で、かんづめら魔女の起源が火星陣という設定が出てきた時点で、あー、これ、宇宙あるな―、とは思っていたので、衛星は順当だなぁ、とものすごく納得。

それと、魔法と科学のコンボの実践者として意外と氷上さんがフィーチャーされそうなところは、ちょっと意外だけど、でも、これも納得。

というか、魔法と科学の合わせ技の開発!って地撲と絶和が合流した意味をちゃんと持たせることもできて、まぁ、半分くらいは後付設定なのだろうけど、でもこれも納得。

こういうところ、西尾維新は、帳尻を合わせるのが上手いよね。

あとは、世界連合をつくろう!というのも、人類共通の敵が現れるなら、まずは誰もが想像することで、それを画策したのが、ロシアとイギリス、というのが、なんていうか通好みw

その上で、世界連合の雛形に置かれたのが、アフリカにある「人間王国」と、救助船「リーダーシップ」ってのが、もうね。
今現在の世界の現実をちゃっかり持ち込んでて、ここも脱帽。

人間王国のような、対地球軍事国家をアフリカで設置、ってもうブラックユーモアありすぎだし。それ元ネタは、スーダン?ソマリア?って感じだし。
ミトコンドリア・イブによる、人類発祥の地、ってネタの使い方も上手いよね。
実際にアフリカをそういう風に位置づけることはありそうだし。

対して、救助船「リーダーシップ」って、天才だけ洋上の船に集めるって、それ、ノアの方舟かよ、って感じだし。
もしくは、いわゆるハッカー的海賊主義だよね。洋上に陣取るなんて。

ともあれ、世界連合的な動きを作る上で、一方で、既存のイギリスやフランスのような国民国家を解体させる動きを描き、もう一方で、そんな国民国家とはハナから関係ないロジックで、軍事国家を作ったり、洋上準国家を作ろうとする。この動き自体は極めてリアリティがあるから。

その上で、左博士たちは、宇宙に進出、衛星軌道上の人工衛星『悲衛』を拠点にする。

で、次巻が『悲衛伝』って、なにこれ、狙いすぎでしょ!と思うしね。

しかも、ロケット打ち上げのことまで考えてロシアを最終合流地点にするとか。

なんて社会派なんだよ、西尾維新、ってびっくりしたよ。

だって、次回は、人工衛星内、もしくは宇宙遊泳が舞台なんでしょ?

で、宇宙に有人ロケットを飛ばせるアメリカとか中国とか欧州とかの宇宙機関を使って、今回、人間王国やリーダーシップに逃げ込んだ、英仏中露の対地球組織の面々が、宇宙に上がってくる、ってことになるのだろうしね。

四国編が、もうなんだこれ?地球撲滅と関係ないじゃん、と思うくらい内輪の争い、しかも魔法使い衣装でのゲーム、というわけわからん設定だったのに対して、

世界編になった途端、時事ネタ満載の社会派の風を装った展開になるんだからw

なにしろ、国民国家解体、アフリカ、海賊、宇宙、だもんね。

それをCOP21なんて現実にやってる時に物語にしちゃうんだから。
参ったよ。

いやー、残り三冊、楽しみだなぁ。
まだ、1500頁もあるのかw

それに、空々くんの「魔人」話はほったらかしなままだしね。
いやー、楽しみだよ、ホントに。

あ、そうそう、悲恋にまさか花屋瀟の心と記憶をインストールするとは思わなかったよ。
個人的には、四国編で見られた、花屋瀟や剣藤犬个の人格の混成体というのがよかったのだけどね。まさか、あんなにクリアに花屋瀟が再臨するとはね。
悲恋、便利だな。
これは、最後には、剣藤犬个も悲恋で再臨するというフラグなのだろうか。
その時、空々くんはどうするんだろうね。

そういう意味では、鋼矢の動きも気になるね。
実質上の空挺部隊No.2であるにも関わらず、今回は貧乏くじを引いてしまって青息吐息なわけだから。
次巻での活躍に期待。
いや、是非とも再び空々くんとコンビを組んでほしいなぁ。
でも、鋼矢は、いわば剣藤犬个の代役という位置づけだったから、いくら悲恋経由だとしても、剣藤犬个が再登場するようになると、鋼矢の立ち位置は微妙になるかな。

だから、悲恋経由の花屋と剣藤の再登場によって、この先の空々くんを巡る人物たちの関係も複雑化するし、その関係の行方も、今後の読みどころの一つだよね。

まぁ、氷上さんは、もうプッツンしちゃってるわけだけどw

ということで、人工衛星『悲衛』での空々くんたちの活躍、楽しみだよ。

それにしても、人間王、怪しいなぁ。
あと、リーダーシップの黒幕、まだ出てきてないよなぁ。
やっぱり、アメリカ絡みなのかなぁ。
そのあたりの権謀術数も気になるところだね。

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