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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

相曽賢一朗 & ヴァレリア・モルゴフスカヤ デュオ・リサイタル 2023

2023年11月23日 | クラシック音楽・オペラ
   恒例の相曽賢一朗 のヴァイオリン・リサイタルが、昨年同様「相曽賢一朗& ヴァレリア・モルゴフスカヤ デュオ・リサイタル」として、
    2023年11月22日(水)19時開演で、東京文化会館 小ホールで開催された。
   プログラムは、次の通り。

出演
ヴァイオリン:相曽賢一朗
ピアノ:ヴァレリア・モルゴフスカヤ

曲目
ラヴェル/ヴァイオリン・ソナタ(遺作)
エルガー/ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 Op.82
田中カレン/Ocean
バルトーク/ラプソディー 第2番 BB96a
バルトーク(セーケイ編曲)/ルーマニア民俗舞曲 BB68

   若かりし頃には、随分、デュオ、トリオ、カルテット、オクテットと言った調子で室内楽のコンサートにも出かけてクラシック音楽を楽しんでいたが、もう、随分昔の話で、今回のプログラムは、聞いたことがあるのかないのか、相曽賢一朗は、最近特に、玄人受けするというか、真っ向勝負で舞台に挑んでいる感じなので、全く新鮮な感じで聴いている。
   ラヴェル、エルガー、バルトークについては、半世紀以上もクラシック・コンサートに通い続けていても、いまだに良く分からないので、今回は、相曽賢一朗の美音に感動しながら聴いていたということに留めたい。
   以前に、1743年のガダニーニを弾いていると聞いたことがあったが、今回は何を弾いていたのであろうか、秋晴れの晴天に恵まれて澄み切った空気に共鳴したように、今夜は、特に、相曽のヴァイオリンの暖かくてピュアーな美しいサウンドが鳴り響いていて感動的であった。

   今回、注目したのは、田中カレンのOcean、
   ベルゲンのアウトゥンナーレ音楽祭から委嘱された作品とかで、East Beach, Hendry's Beach-Sunset, Butterfly Beachからなる小品だが、素晴しい海岸の絵画を見ているような実に美しいサウンドで奏で始めて、引き込まれて行く。パリで学んだと言うから、その音楽性とノルウェーの美しい自然とが調和した曲想であろうか、真夏に訪れたフィヨルドやベルゲンを思い出しながらノルウェーを懐かしんでいた。黙想して聴いていると、おそらく、脳裏に走馬灯のように風景が展開して、さながら、映画音楽のように聞こえてくる感じである。
   田中カレンさん、相曽賢一朗に促されて舞台に登場して挨拶した。コンサートの後も、二人の演奏者に寄り添っていた。

   アンコールで演奏したのは、ウクライナの作曲家ミロスラフ・スコリクの「メロディ」、  
   Melody, for Piano Soloだったが、今回は、ヴァイオリンとピアノに編曲されたデュオ。
   冒頭から、涙が出るように美しい曲で、現下の悲惨なウクライナ戦争のイメージが重なって、胸に迫って来て、実に切ない。
   貴公子の相曽賢一朗は威儀正しく淡々と弾いているが、ウクライナ人のヴァレリア・モルゴフスカヤは、おそらく、万感胸に迫る思いで、故郷の平和を希いながら鍵盤を叩いていたのであろう。
   スコリクは、2020年にキーウで亡くなったのでウクライナ戦争は知らないが、大戦後シベリアに追放されたり、クリミア併合などウクライナの悲惨さを痛いほど知り尽くしているので、平和への思いを、民族的な叙情性を哀調を帯びてメランクリックに歌わせたのであろう。相曽は、何も語らなかったが、ウクライナを思っての選曲であり、今、一番必要な貴重な曲であると思う。

   相曽賢一朗が、ロンドンに留学したのは1992年、その時、リバプールから電話してきて数日間寄宿して付き合いが始まり、我が家でミニコンサートが持たれてフアンになったキューガーデン在住の日本人小学校の生徒の親たちが、帰国後、1997年から始まった相曽のコンサート時に集まってロンドン会を開いている。この日も、相曽の新しいCD「追憶~ジョージアの調べ」に、婦人たちはこもごもサインを貰って、その後、二人の演奏者を挟んで記念写真を撮った。その同窓会メンバーも、いよいよ、後期高齢者で、いつまで続けていけるか、それが、問題でもある。

   相曽の海外生活も、既に、40年近くなっていて、昨年、いつも会場に来られていたご両親が亡くなられて、寂しくなった。
   芸大とアメリカとイギリスの最高峰の音楽教育を受けて、確固たる日本魂をバックボーンにして、クラシック音楽の故郷欧米にしっかりと地歩を築いて音楽を追究し続けている、これこそが相曽の真骨頂とも言うべき特色であり強みであり、余人を持って代え難い。益々の精進と活躍を祈っている。
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