都営10-000形の引退が進む中、ある意味で極めてマニアックな存在であった10-300Rがいち早く全車ひっそりと消えていったのは、ある意味で10-000形全体の地味~な存在感を象徴するエピソードだったのかも知れません。しかし別の角度から見ますと、この編成に対する都営当局者のサバサバした割り切りを見て取ることが出来ます。保安機器の変更に伴って初期編成を廃車にする一方、すぐに廃車とするには勿体なかった一段窓の中間増備車を活用するため、10-300とほぼ同じに見える「走るんです」ボディの先頭車を造ったというのが、この編成の縁起です。とはいえ、このような措置はとにかく過渡的なものに過ぎず、新車大量新造の予算がつけばいつでも見映えの悪い編成は廃車!という方針を立て、まさにそのようになったということなのでしょう。
そこで例えば東急であれば、最新の緑椅子サハの新造にあたり、潰した6ドア車の台枠やドアを再利用していると思われます。しかし10-300の最新増備車の場合、10-000形の先頭車としての台枠・下回りと、10-300の先頭車としての台枠・下回りでは、吊す機器の配置が全く異なるとドシロートなりに思われるわけで、多分流用していないものと思われます (溶かして再利用することはあり得るかも知れませんが)。
「走るんです」ボディを造っても速攻で (?) 廃車になった事例としては、東急5000系6扉車の記録に勝るものはないでしょうが、これは安いサハに過ぎず、台枠も再利用していると思われますので、何となく分からないでもない措置です。しかし、金のかかる先頭車が事故でもないのに僅かな年数で廃車となったという事例は寡聞であり、強いて言えば富山地鉄クハ90のようなバッタモノ珍車や、鉄道郵便の登場により呆気なく用途を失ったクモユ143、あるいはお試し的要素が強すぎた常磐線の二階建てクハ415のような特殊な車両ばかり思い出します。一定数が製造されてそれなりの存在感を誇り、それにもかかわらず全車あっけなく廃車!という新記録は、今後もしばらく都営10-300Rが保持し続けることでしょう……。
そんな都営10-300Rの過渡期の功績を篤く称えるとともに、鉄コレとしての発売を強く期待するものです……。「結局はそれが言いたいのかよ!」とのお叱りを受けそうですが、まぁそういうことです (^^;)。かつて京浜東北線の103系において、ATC化に伴い高運冷房クハ103が集中的に投入されたものの、中間車はことごとく非冷房のボロ……という編成が大量に走っていたのを未だに生々しく記憶している世代として、この手の編成にはどうしてもジワジワと反応してしまうのです (笑)。