本の街・神田神保町。しかし残念ながら、所謂紙の本離れの影響で古書店が減り、その代わりに増えたメシ屋も入れ替わりが激しいようです。そんな中、三省堂と書泉の間にあるラーメン屋が店じまいし、次は果たしてどうなるのやらと思っていたところ、昨日2~3週間ぶりに歩いて超びっくり! 何と……ちゃんとハラール対応の蘭州牛肉拉麺の店になるとは! 詳細はググると出て来ますが、オーナーは中国の漢語を話すムスリム (回族) ではなく日本人で、中国留学中に蘭州ラーメンの美味さにハマり、蘭州の老舗に弟子入りしたとか……。
中国を貧乏旅行や長期出張・駐在で訪れたことがある方でしたら知っているはずの蘭州ラーメンは、読んで字の如し、中国西北の蘭州に住むムスリムによって創始され中国全土に広まったものです。ただ、いくら製麺時にバンバン叩いて引っ張る(拉)とはいえ、その本質は小麦を使ったうどんであり、実は日本のラーメンとは似て非なるものです。
したがって、かつてNHKの『シルクロード』『大黄河』といった中国万歳番組を食い入るように視聴し、いつか必ずラーメンの聖地を訪ねなければならないと思った青少年の私は、その後初めての海外旅行で蘭州を訪ね、神聖不可侵なる日本のラーメンとは余りにも異なる風貌に落胆を隠しきれなかったものです (笑)。しかも、西北イスラーム風味ですので、肉系の出汁のスープの中にとにかくドバドバとラー油を注ぎ込まれた結果、余りの辛さにのたうち回り、以後必ず注文時に「辣的少一点! (辛いの少なめ!)」と付け加えるのを忘れないようにした次第。
それでも、中国でとにかく早く安く美味くメシを済ませようとする場合、蘭州ラーメン屋は誠に使い勝手が良く、慣れれば数日に一度は必ず食いたくなるシロモノであることは間違いありません。また、蘭州ラーメンにもバリエーションがあり、たとえば太麺の上に甘辛とろみ煮をぶっかけた皿うどん「干盤」は、辛すぎるのが苦手な人間にとっても実にマイルドで美味かったりします。
そんな蘭州ラーメン、既に池袋にもこれを出す店があるようですが、池袋は昼間行く機会がなく、しかもちゃんとムスリムに弟子入りしたハラール対応の「正宗」であるかどうか極めて疑わしいものがあります。ネット上にメニュー画像が転がっていますが、をいをい、豚角煮ラーメンを出しちゃダメだろって……(苦笑)。要するに、蘭州ラーメン味も出す漢人の店ということでしょうな。
というわけで、神保町に今度出来る店は、きちんと蘭州のムスリム老舗店に弟子入りしたという点で、日本初の由緒正しい蘭州ラーメン店であると言えましょう。オープンしたら是非早めに食べに行ってみたいところです。
この話題は新華社・人民日報社の報道によって中国国内でも知られているようで、たとえば「中国のラーメンがついに日本に逆襲」という見出しがつくなど、一方的にヒートアップしている気配があります。「中国で食う蘭州拉麺にはこんなに肉載ってないぞ!」「蘭州では牛肉麺と呼ぶのだ」「いや、この日本人が弟子入りした老舗よりも、あそこのあの店の方がもっと美味い」などといったコメントが記事にくっついているのは実に面白い……。いやその……何でも日本にお株を奪われた悔しさが中国民族主義の原動力で、だから「逆襲」と言ってみたくなるのは分かりますが、そもそも蘭州ラーメンに熱く期待する日本人がいるとしたら、中国に長居したことのある食いしん坊なヤローだけであり、全然日本のラーメンと蘭州ラーメンは別の食べ物だと思ってますから……。
ともあれ本当に、蘭州など中国西北の街で、アザーンを聴きながらすすった「あの味」と同じかどうか、期待したいところです。神保町という場所柄、美味い味でありさえすれば、中国を思い出す客がちゃんとつくと思うのですが……。
というわけで、全く鉄ネタではありませんが、とにかく中国貧乏旅行体験者としては嬉しい話題ですので、昔懐かしな画像を添えつつ記してみました。「緑亀」東風4や、シブい入換機である東方紅5が北京でもウロウロしていた時代は遠くに去り、紅皮車も絶滅寸前でしょうか。「赤いきつね」と「緑のたぬき」=うどん・そば、なんつって……(^^;)。いやいや、緑と赤は、蘭州ラーメンの彩り (どっさりパクチーと牛肉・ラー油) そのものだったりします。
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