長崎地裁は、諫早湾の干拓期事業で起きた漁業被害を認め、国に開門命令を出した。事業そ のものの訴訟でないが、こうした農業を食い物にした事業に歯止めがかかればと思う。
長崎高裁の、イラク派遣が憲法に抵触するとする判決と言いい、このところ裁判所も検討している。
国が減反政策という名の、農業者の切り捨てを延々とやってきた。コメが余っているとか言いながら、多くの食料を海外に依存する体制を作ってきた。しかしながら、全国各地で農地の拡大を行ってきたのである。
農業を潰しながら農地開発をやる、矛盾する政治姿勢は一貫している。農業予算が、一方的に土建屋に食われているのだ。こんな国家が他にあるだろうか?
その一方で、環境が破壊される。諫早湾では、多くの海浜動物が死滅し、干潟が失われてゆくのである。その目に見える経済的な被害が、漁業被害である。環境を浄化するシステムを破壊するのである。当然の結果である。
同じようなことが、北海道の根室原野の北を流れる、標津川の河口付近でも起きている。標津川は、落差の少ない蛇行河川であったが、国が開発と称してほとんどの所をショートカットしてしまった。
この標津川と、武佐川に囲まれた湿原地帯を、国営事業で牧草地にしたのであるが、地下水位が高くてまともな草が生えない。この草地500ヘクタールを放棄したのである。
ここを、いまさら40キロ以上にわたってショートカットしておきながら、2キロに満たないところ を、蛇行復元と称して40億円以上の国家予算を投じるのである。
これに、鳥や花が趣味の人や魚が好きな連中を、専門家に仕立て上げて取り込む巧妙さは、より狡猾である。
今回の判決は、少しづつ時代は動いているのかと思わせるものであった。