上海協力機構(SCO)がタジキスタンで開催された。2001年にロシア、中国にタジキスタンなど中央アジアの国計6か国で始まった会議であるが、今ではインド、イラン、パキスタンなどが加わっている。要するに中央アジアの陸続きの国々が、安全保障の歯止めのようにして始まったのである。
しかしSCOはいまや、世界を席巻する機構に変貌した。ロシアはエネルギーの国家管理が順 調な上に、驚異的な値上がりである。中国は世界最大の経済成長で国力を伸ばし、これに次ぐインドが加わり、怖ろしいものがないような状態である。
SCOはグルジア問題で、しぶしぶながらロシアの支持に回った。この背景には、同床異夢の中国が歯止めとなったと思われる。しかしながら、これによって世界史は大きく塗り替えられることになる。
冷戦以後の、アメリカ一人勝ちの構図はいまや存在しなくなった。エネルギーの国有化と、巨大な人口を抱えながらの経済発展国は、アメリカには恐れる態度を持っていない。
これに加えて、歴史的経験を生かしながら温暖化や環境問題提言の主導権を握りつつあるEUが、ロシアなどと対峙しるようになってきた。とりわけ、グルジア問題では、これまでの主張の経緯とは関係なく、自国に好意的かどうかで判断を下すようになっている。
ロシアがオセアチアなどの独立を支持するなら、チェチェンにも同様の態度を持つべきである。グルジアが、ソビエトからいち早く離脱した精神を生かすなら、オセアチアを拘束してはならない。EUに加わりたい国だからという理由だけで、EUがグルジアを支持するのも身勝手である。
アメリカは、イギリスの次に大量の兵士を、イラクに送りこんでくれたグルジアに謝意を示したい。イスラエルとも友好関係にある。当然のように、サーカシビリを支持している。
世界は、アメリカとEUそれに不定形の様相はあるが、上海協力機構ととりあえずは3極化の構造を持ちながらも、確実に多極化している。しかもここには、中東諸国やアフリカは含まれてはいないのである。
世界中の国々は、小国であっても自らの主張を臆目もなくするようになったのである。日本は、アメリカの影に隠れて、従属するばかりである。その典型が、インド洋上のアメリカ艦船の給油である。こんな子供だましの「世界貢献」の虚構が、いつまで通用すると思っているのだろう。
食糧の自給もままならない、主体性のない国家をかじ取る人物がいない。世界史は、グルジア問題で大きな転機に立っているように思える。