トランプの対イラン政策はめちゃめちゃである。アメリカは国家として、国連常任理事国とドイツを含めた核合意に調印した。各国が不満を持ちながらも、最低条件として結ばれた条約である。こうした地味な積み重ねこそが、戦争のない地球の道になるはずである。
トランプはアメリカを一方的に離脱させた。核保有や開発の可能性があるというものであったが、事実関係ではなく文言からの説明しかない。
内実はイスラエルの同盟強化が目的である。娘婿がユダヤ教徒であることと、アメリカ国内のユダヤ系と福音派の支持を固めるためである。もう一つ理由は、石油と軍需産業で繋がっている、イランと対立するシンア派のサウジアラビアのためである。
トランプのアメリカファーストは、トランプファースト以外何物でもない。
イランがアメリカの無人偵察機グローバルホークが、イランが国境に侵入したとして撃墜された。アメリカは公海上と主張するが、明らかな挑発である。イランを武力攻撃する理由を探しているのであろうが、タンカー攻撃も同類の事件ではないか。過去アメリカはこのようなことを数限りなくやってきた。古くはメイン号爆破事件、プエブロ号事件、トンキン湾事件、イラクの大量破壊兵器所有事件等々である。どれもが、武力侵攻の口実のためのアメリカの自演であった。
無人偵察機の撃墜は国境すれすれの飛行であり、国内を偵察するようでまない。タンカー爆破も石油のある場所を狙ったのでもなければ、汽水線以下でもない。どちらも脅しの手口を脱していない。
トランプは武力攻撃を10分前に中断したということであるが、ペルシャ湾には中東の大国を攻撃することができるほどの兵力を集結していなかった。単なる恫喝でしかなかったのである。
その一方で、イランの最高指導者のハメネイ師を制裁対象としたのは、話し合いをしないというメッセージである。ハメネイ師の愚かな発言だという反論を受けて、シラン施設の「消滅」を警告している。武力制圧でもやる気なのは、ボルトンくらいだろうか。現実味のない、永久対立宣言でもある。
イランは中東では珍しく、シーア派を国教とするペルシャ民族の、ほぼ単一宗教のほぼ単一民族の歴史ある国家である。ヨーロッパ民族のルーツとされるアーリア民族といわれ、ドイツのヒトラーがユダヤ人虐殺の根拠になった民族の原点である。現在でもドイツと親交は深く第二次世界大戦で、最後まで日本とドイツを支援した国家でもある。先人が築いた親日国家を利用した安倍晋三の訪問を受け入れた理由も今回で消滅した。
次期大統領選挙を念頭に置いた、トランプのバカ発言が続いている。アメリカは何のメリットもないのに、世界に警察をやっているというのである。メリットはいっぱいあるが、どれもこれもアメリカが権益を守るためのものである。アメリカが離脱するはずがない。
アメリカは知らん、お前たち自分で守れというなら、世界から一斉に手を引けばいい。日米安保条約を破棄してくれるなら、ノーベル平和賞に値する。就任早々に側近に、「おま知ってるか、日本はアメリカ軍基地に金出しているのだぞ」言ったとされるが、政治に無関心の成り上がりが思わず大統領になった男らしい発言である。無知は仕方ないが、大統領となると世界を騒がす。