金大中(キム・デジュン)前大統領は10がつ30日、「1973年の金大中拉致事件は、朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の指示で行われたのは明らかだ。遅くなったが、韓国と日本の両政府は真相を確実に明らかにし、責任を取るべき人物は責任を取らなければならない」と記者会見して述べた。
日本を訪問中の金大中前大統領はこの日午後、京都市内のあるホテルで記者会見を開いた。この席で金前大統領は、「日本政府や韓国政府の双方が、拉致事件後の処理においてわたしの人権を無視したことに抗議する」と強く訴えた。
また、国家情報院の過去史真相糾明委員会の調査について、「拉致の目的は、わたしを殺害するためのものだったのは明らかだ。その点をはっきりと指摘できなかったというのが遺憾だ」と述べた。彼は同時に、足かせや重しを船上ではめられて、殺害されるものと思ったとものべている。
これを政治決着させたのは、田中角栄である。中国との関係改善に躍起になっていた、田中首相にとってこの件を長引かせたくなかったのだと思われる。
今回韓国政府が、正式にこの件に関して謝罪したことは評価しなければならない。日本政府は、率直に認めるべきである。
ここで重要なのは、この韓国政府が行った拉致と同じ時期に、北朝鮮が数限りない一般国民の拉致事件を引き起こしていたことである。日本はこうしたスパイが、ほとんど自由に跳梁跋扈していたことを、30年以上経って認める無神経さこそが問題である。
先金大中の人権も無視されたかもしれないが、日本の主権も無視されたのである。この頃、30年前に拉致にかかわった人物を指名手配したようであるが、とても不思議な構図である。いまさら何をと言いたくなる。
横田めぐみさんを救出する会を、友人たちが立ち上げた頃、事務局の友人はどこでも嫌われ、門前払いであった。警察も厚生省も、全く聞く耳すら持たなかったのである。
国民は国家庇護のもとにある。その国民の人権と財産を守る義務が国家にある。その最低のことを放棄したばかりか、非難さえするような国家とはどんな存在なのか。金大中拉致事件も北朝鮮の拉致も同じである。外国の政府機関が、ほとんど自由に拉致できるような、ズブズブの危機管理能力がなかったことを、この事件から思い起こすべきなのである。