ジョージ・W・ブッシュが同時多発テロの報復として、侵攻理由をでっちあげて的外れのイラクに攻め入ってから明日で20年経つ。暴力を暴力的に解決することは困難だという適例である。テロをアメリカが受ける理由を問う言葉は、どこからも発せられることはなかった。
超大国アメリカの気に召さない政権が中東に数多くあるが、イラクはその一つであった。それまでのイラクは、同じモスクでシーア派もスンニー派も祈りを行い、同じ地域に共存し婚姻関係すらある間であったが、ブッシュがこれを壊した。フセインの独裁、専制の体制は、非民主的でああるが、人々の暮らしは和やかではあった。
貧国イラクに、世界最大の国家が巨大な軍が侵攻し、国内の人命、文化、社会、歴史等々あらゆるものを破壊した。劣化ウラン弾の使用やクラスター爆弾など非人道的武器も使用された。
大量破壊兵器もなければ、せいぜいイスラエルを攻撃できる程度のスカッドミサイルしかなかった。イギリスのブレアーにロンドンまで届き、核攻撃にあうと恫喝し、国連や世界中がアメリカの侵略に反対したが、イギリスと取り込んで、「連合軍」という名を冠し攻め入る姿は朝鮮戦争のままである。
ブッシュが煽った宗派対立は、その後の中東地域に凄惨な殺戮を生み、未だに出口さえ見えない。中東の混乱の元凶は、イスラム国(IS)を生んだことに象徴される。際限ない党派抗争へ、アメリカなど西欧文化数強への憎悪の拡大、誘拐事件による資金確保など、悪行の限りを尽くした。
アメリカは軍事侵略によって行った非人道的な殺戮、拷問、レイプ、収奪は何百年経とうとも許されるものではない。特にイスラムの人達が嫌う拷問や殺人が無数の場所で行われた。
グァンタナモでは全裸の通電や鞭打ちなど、言語を絶するものが日常行われてた。ビンラディンなどは、拘束することなく国家テロ行為によって殺害している。イスラム教が最も遺体を海に廃棄する、水葬で新たな聖地が生まれないようにしている。イスラム教徒にとっては最大の屈辱である。
ビンラディンたちが、当時多発テロを行ったのであれば、あれだけのことをするには(彼らの主張する)正当な理由があるはずである。その分析は全くなされず、ブッシュは報復だけをおこなった。「テロの側につくか正義につくか」というフレーズしか、ブッシュは用意していなかった。
アメリカの隷属国家日本は、南部の都市サマーワに自衛隊を派兵したが、復興支援として建設した発電所は施設は4年余り使われたが、それ以後は使われず廃墟となっている。日本はアメリカ支援のポーズをとっては見たが、自衛隊の海外派兵できるという前例を得られた。
プーチンは19年後、大国の論理をブッシュに倣って隣国ウクライナに攻め入った。ウクライナを従属国家にするという目的は、どうやら達成は出来ないであろうが、アメリカの非人道的という非難をそのままプーチンは返している。イラクで何やったのだと。こうした大国の横暴は、局権を持つ国連の常任理事国に、大国がデーンと居座っているからに他ならない。
アメリカが学んだことはウクライナに武器供与はするが、血を出すのはお前たちだとする姿勢を通していることである。