日本の裁判史上で唯一「自衛隊は憲法違反」と判断した、長沼ナイキ訴訟の一審札幌地裁判決から9月7日で50年になる。丁度半世紀を迎えたことになる。
その後判決は札幌高裁で、「政治性の強い国家の行為を司法審査の対象外にする(統治行為論)」として憲法判断を避け、最高裁も高裁判決を支持し判決は確定した。
長沼ナイキ判決を下した福島重雄裁判長は、自衛隊違憲判決以降、東京地方裁判所手形部、福島家庭裁判所、福井家庭裁判所と異動したが裁判長を務めることはなく1989年8月31日に定年を前に退官している。地方の下級判事を転々とされたことを、他の判事はしっかり見ているのである。
これ以降自衛隊違憲どころか、憲法を巡る訴訟の数多くの訴えのすべてに対して、日本の裁判長全員が判断を避けてしまうこととなったのである。
国権がつまり立法も行政も、福島重雄を人身御供にして司法の人事まで支配しているのである。
福島判決は、自衛隊と憲法を巡る議論に一石を投じ、憲法前文を根拠に「平和的生存権」を初めて法的権利として認めた。司法はその後、政治性の高い自衛隊の憲法判断を避け続けているが、安倍晋三を守り通した裁判長は、異例の出世の道を歩んでいる。日本は司法の独立性が、完全に失われた国家となっている。
現在富山で弁護士をされている、判決を下した福島重雄さん(93)は、「当たり前のことを当り前に書いただけ」と述べている。
早稲田大学憲法学の水島朝穂教授は、「自衛隊の違憲判決は存在するが、正面から合憲判決は存在しない」と指摘している。
<第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。>