グラフは移民による本国送金の受け入れ額(2006年時点、10億ドル)を示しており、右側□内の数値(予測)は、2005年GDPに占める外貨送金の比率である。原資料 World Bank
このブログのグローバル・ウオッチの対象である移民政策問題の焦点は、海外で働く自国民による母国への送金額である。それが母国の発展のために有効に使われているか否かの評価が海外出稼ぎの成否を判定するポイントである。最新の本国送金統計が公表されたので、少し検討してみよう。
World Bankによると、世界の移民からの本国送金は、2006年には2680億ドルに到達した。この額は、2000年の2倍に相当する。開発途上国出身の移民たちが本国へ送金する額が大部分を占める。その総計額は6年前の850億ドルと比較して1990億ドルと大きく伸びている。
外貨送金の受取額ランキングでみると、メキシコが第一位を占めている。ほとんどアメリカで働くメキシコ人からの送金である。250億ドル近くに達しており、GDP(2005年時点)に占める比率では3.3%になる。その額はインド、中国が受け取る外貨送金額より大きい。
しかし、メキシコを例にとると、それが母国発展に効率的に結びついているかという観点から見ると、第4位にランクされるフィリピンと同様に、非生産的消費などに飲み込まれてしまい、生産的な投資の分野で十分有効に活用されているようには見えない。もちろん、一部は町工場や小商店など雇用を創出するような用途に投資もされていると思われるが、送金額の大きさと比較していかにも効率が悪い。いつになっても海外出稼ぎが減少に向う形をとるにいたっていない。
フィリピンの場合は、海外からの外貨送金がすでにGDPの15.2%にまでなっている。しかし、フィリピンからの移民の流れは絶えない。そればかりか、海外出稼ぎは常態となってしまい、国内に安定的な雇用の機会が生まれがたくなってしまった。フィリピンやメキシコのような風土では、良い仕事は国内にないという感覚がかなり浸透している。
本来、自国の経済発展に活用されるべき海外出稼ぎの苦労の結果が、直接的な家族の生活改善などには役立つとしても、国としての発展に結びつかない問題は、従来からも指摘されてはきたが、再検討されるべき大きな課題である。
Reference
"Migrants' Remittances." The Economist November 2006.