展示終了も間近い東京国立博物館『特別展:仏像 一本にこめられた祈り』を見る。予想通り、長蛇の列であった。11月末で入場者30万人を越えたとのこと。最近では珍しいほどの人気である。館内でスポットライトが当たった仏たちは、いつもと違った場所でどんな気持ちなのだろうか。
今回の特別展の特徴は、日本に固有ともいえる木像一本彫の仏たちである。薄暗い堂内や埃だらけの道端に据えられた像とは異なり、今日は表裏の細かい所までライトが当てられている。
一体、一体、それぞれに考えるところがある仏たちだが、展示の後半に置かれた円空、木喰の作品に深く惹かれるものがある。とりわけ、円空の洒脱で素朴、人間味のある仏たちは、素晴らしい。仏教が国家や支配階級のものから、ようやく庶民の生活の奥深く行き渡ってきた時代、日本人の心の源があるかに思える。
展示の後半、木喰の「12神将像」、「十王坐像」を見る。神将といいながらも、一人一人笑みを浮かべた和やかな顔に彫られている。冥界の番人といういかめしい身なりにもかかわらず、どこにもいそうな穏やかな表情の人たちである。楽しく眺めていると、なんとなくラ・トゥールの「キリストと12使徒」と重なってきた。思いもかけなかった連想に戸惑いながら、夕闇迫った上野の山を後にした。
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