時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

ロレーヌの春(5)

2007年03月09日 | ロレーヌ探訪
  ヴィックからメッスへ向かって北上して行くと、次第に見たような光景が眼前に広がってきた。かつて訪れた土地の記憶の断片がここでもよみがえってくる。この時期、ロレーヌの天候は大変変わりやすいという。確かに30分くらいの間隔で晴れたり、曇ったりしている。しかし、視野は広大で爽やかな感じがする。とりわけ、雲間から射してくる日の光は美しい。今年は野猪や鹿が自動車道路に出てくることが多いとのこと。途中で狩りをしている光景にも出会った。この地の人々にとっては、美味な食材であって楽しみでもあるようだ。




  ヴィックの近くのマルサール Marsalには、セイユ川の渓谷地帯の岩塩坑(池)での採掘状態を展示する小さな博物館もある。ここはあの築城家ヴォーバンが設計した城郭地帯の一角である。あたりには深い森に囲まれた美しい自然公園が広がっている。



  ロレーヌの自動車道路はよく整備されているが、みわたすかぎり自然が残されている。脈々と続く丘のいたるところに、ほとんど人の手が入っていないような深い森が残されている。



  メッスはナンシーと並び、ロレーヌの重要な拠点都市である。現在の人口は20万人近い。ブルボン王朝が支配したフランスとは異なり、地理的にドイツに近く、北方文化の影響を強く受けている。これはドイツの都市だということは、かつて訪れた時の第一印象であった。郊外のレストランで友人がウエイトレスにドイツ語で注文しているのを聞きながら、ドイツ語文化圏なのだという認識が残っている。メスには司教座が置かれていた。今に残る教会などを見ると、ゲルマン的ゴシックの伝統が脈々と流れていることを強く感じる。






  一時期はパリの王室画家などで過ごしたとはいえ、ラ・トゥールは、その生涯のほとんどをこのロレーヌの地で過ごした。その精神的基底にはゲルマン的、ゴシック的なものがしっかりと根付いている。ロレーヌという地域の文化的・精神的状況を理解するには、深い洞察力が必要なことを認識させられる。



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