アイルランドが、EUのリスボン条約に「ノー(否)」を突きつけて、「小国の反乱」として大きな話題となっている。チェコ、ポーランドなどの中規模国も同調するかもしれないと、フランス、ドイツなど大国首脳は苦い顔らしい。2005年のオランダのEU憲法条約否決が頭をよぎるのだろう。
アイルランドと聞くとすぐに思い浮かぶ詩がある。丸山薫の
「汽車に乗って」という詩だ。
汽車に乗って
あいるらんどのような田舎へ行こう
ひとびとが祭りの日傘をくるくるまわし
日が照りながら雨のふる
あいるらんどのような田舎へゆこう (後略)
この詩をどこで読んだかは定かではない。小学校の教科書かもしれない。しかし、不思議と全文、脳細胞に残っていた。「日が照りながら雨のふる・・・」という一節が大変印象的で、これは日本でいう「狐の嫁入り」という現象だということまで覚えていた。多分、先生の説明だったのだろう。しかし、なぜ、こうした現象が起きるのかまでは知らない。どこかの地方の言い伝えだったのかもしれないと思い、辞書を引いてみると、いくつか違った説明が出ている。
これも子供の頃、日本人以上の日本語の達人といわれ、エッセイが国語教科書にも載っていたCandou神父のお話をうかがった折、バスクにも同じ現象がありますよといわれて、不思議に思ったこともあった。なにがきっかけでこの話になったかはまったく覚えていないのだが、多分その時、晴天なのに雨が降ったのだろう。Candou神父は、フランスとスペインの国境にまたがるバスクから来られたのだった。バスク人と日本人は似ているところが多いというお話もあったような気がする。いつか調べてみようと思いながら、果たすことなく今日に至っている。
ニューヨーク滞在の折に、今では日本でもかなり知られるようになったアイルランド系の人々の祭日、セント・パトリックス・デー(3月17日)のパレードがあり、フィフス・アヴェニューを緑色の衣装や飾り物が覆い尽くす光景を見たことも、移民で形成された多民族国家アメリカへの興味を誘った。こんなことが重なって、アイルランドについて、少しずつ知識も増え、イギリス滞在の折に短期間ながら訪れるまでになった。気づいてみたら、かつて一時期、仕事でよく泊まったパリのホテルまでCELTIC*になっていた。
アイルランドは移民史の上では、長年にわたりアメリカなどへの移民送り出し国として知られてきた。日本では人気はいまひとつだったが、フランク・マコートの『アンジェラの灰』がその厳しかった移民事情を興味深く伝えている。それが、いまや受け入れ国になり、先端技術の導入などもあって大変活性化し、世界の注目の的になっている。ブログでも話題にしたことがあるが、 「アイルランド・モデル」の可能性まで語られている。一見地味だが、堅実で、国民性の際だっている国だ。この小国の反乱、どんなことになるのか、見守ってゆきたい。
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ケルト語[族]の意味。ケルト Celtic 民族は、今日ではアイルランド、スコットランド、ウエールズ、ブルターニュなどに散在。あの中村俊輔が所属するスコットランドのサッカーティームもCELTICだ。