時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

新しい年へ力をもらう(2)

2008年12月28日 | 雑記帳の欄外

Photo:YK 


 Eメールの時代、送受するクリスマスカードの数はすっかり減ってしまった。それでも毎年楽しみにしている何枚かがある。メールにはない手書きの文字の暖かさ、人間味が伝わってくる。そして、いつもなにか力づけられる。

 昨年、ブログに記したことがあるカナダの友人の手紙(新しい年へ力をもらう)は、今年も大きな感動を与えてくれた。腰部に障害があり、昨年まで自立歩行が困難であったこの友人は、今年何度目かの手術を受け、なんとか立てるようになったのだ。長らく勤めた大学を引退後、まったく異なった領域である園芸に生きがいを見出した彼は、水を得た魚のように大活躍!今年は手術後のリハビリを兼ねて、なんとスペインまで旅をしたとのこと。昨年は庭園や植物改良の情報を得るために、車椅子でロンドンのキューガーデンを見に行っている。

 レバノンで復興支援の活動をしていた息子が帰宅した折、念願のファウナ(ある地域・時代の動物相)
創生の一端として、馬の放牧地を作ったとのこと。今年は広大な草原の一部を木柵で囲むことができ、自由に馬を遊ばせていると伝えてきた。狭い厩舎から出ると、馬も自然に戻り、生き生きとしてくるらしい。元気のない人間はどうすればいいのだろうか(笑)。

 今年は別の友人からの手紙にも、大きな驚きと喜びが満ちていた。この人はアメリカで長らく小さな会社の経営に当たっていた女性だが、数年前に退職し、友人(この方も女性)と二人でNPOを立ち上げた。今は二人とも70歳近い。このNPOは、さまざまな理由で、精神的にトラウマ(大きな心的外傷、Traumatic Brain Injury )を負った人たちのケアに当たることを活動内容としている。いくつかの話から想像するに、それ自体とても大変な仕事である。職業上の資格も要求され、開設自体容易ではない。スタッフの養成、管理も必要だ。

 実は、このNPOの二人の中心人物が共に、言葉に言い尽くせないトラウマを負っていた。その出来事自体が衝撃的であった。かなりの時が経ったので、記してもよいだろう。ある偶然の機会にそのことを知ったのだが、10数年前、フロリダに引退していた彼女の母親(一人暮らし)が、ある日自宅で何者かに殺害され、金品を奪われていた。警察捜査の結果、逮捕された犯人は、いつも庭の芝刈りを頼んでいた隣家の若者だった。母親はこの若者を大変信頼していたらしい。そして、母親思いだった娘である友人の悲しみは想像に余るものがあった。しかし、彼女はそうしたことをほとんど誰にも話さず、癒しがたい心の傷を負った人たちを救おうとこの活動を始め、社会人として立派な仕事をしてきた。そして、今年その活動に対して、連邦政府から表彰を受けた。

 彼女の良きパートナーとして、このNPO活動を続けてきた女性も大変素晴らしい人物だ。しかし、数年前に彼女も大きな事件で衝撃を受けた。それでも立ち直り、立派な仕事をしてきた。しかし、さすがに今年は重圧に耐えかねたのだろう。1年間仕事をオフにしたという。それでも裏側でしっかりとパートナーを支え、お祝いのパーティなどを内緒で企画し、人々を感激させた。皆がお祝いに贈ったものは、最新のマウンテン・バイクだった。

 アメリカという国、決して住みやすい国ではない。とりわけ、この数年は国力が低下、国論が分裂するほど荒涼たる精神世界が展開してきた。これまでのクリスマスカードにも、その一端がいつも記されていた。しかし、今年のカードは喜びと希望で溢れていた。オバマ効果もあるかもしれない。しかし、それだけではないように思えた。カードは次のように結ばれていた:

「新年は必ず良い年になると確信してます。次の世代のために、緑溢れ、平和で素晴らしい世界になるように力を貸してください。」 

We are definitely more optimistic about the coming year.  I hope you will join us in working to create a greener, more peaceful and more loving world for the next generation! 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする