貧しい大家族で育った少年は、奨学金を手にするチャンスを目の前にしながらも、大家族を仕切る祖母の命により働きに出ることになる。
貧富の差は何があっても乗り越えることは難しいのだが、貧しい家族の中でも年長者から若者に対する富の搾取があり、一人抜け駆けする事は許されず、自分がいる世界から簡単に抜け出すことが出来ないようになっているのだ。単純な貧富の差だけではない壁が少年の前に立ちはだかる。
そんな中、少しの機転で裕福な家族の運転手として都会に出る事に成功する少年。
裕福な家庭の息子は、彼にも友好的に接してくれるのだが、そんな態度も、彼が自分のいる貧しい世界から抜け出すのには、なんの助けにもならない。むしろその差を余計に実感させるだけだ。
貧困にあえぐ者は、皆抜け出したいと願う。そしてそれを実行する方法を想像はしても、実際に行動に起こすまでには至らない。過去と決別するには、大きな代償を伴うからだ。
彼はある一線を越える事を決心して貧困から抜け出すのだが、貧困から抜けだせて幸せなのか、成功と一緒に幸せも手にする事が出来るのか・・・
過去を捨てて貧困から抜け出す様子を複雑な思いで見つめるしかない。
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裕福な家庭の息子の妻を演じるのはプリヤンカー・チョープラ・ジョナス。彼女はエグゼクティブプロデューサーとしてもクレジットされている。
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知人がムスリムのインド人の男性と結婚したのだが、彼は「インドではヒンズー教徒でなければ社会的に成功することは難しい。会社を運営しているのも皆ヒンズー教徒だ。ヒンズー教徒の会社に就職は出来ないから、ムスリムは皆自分で商売をするしかない」と話していた。それを思い出すようなエピソードが映画の中でも出てくる・・・格差は貧富だけではなく宗教に根付いた話でもあるのだ。
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インドではコロナの死者が一日4000人を超え、1日の新規感染者数も40万人を超えているとの事。このニュースを聞いたすぐあとにこの映画を見たからか、更に複雑な思いに捕らわれる。
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