1960年代の台湾。国民党体制の元、反対派の共産主義を弾圧する時代は、自由な思いに対しても猜疑心を生む暗黒の時代でもある。そんな中でも生徒たちの自由への思いを育みたいと、こっそりと読書会を開く若い教師たち。
学生たちも、皆同じような服装、同じような髪型で、心の中の自由な思いには蓋をして過ごす毎日。しかしそのような日々を過ごせば過ごす程、心の自由を求める思いは強くなっていく。
そしてそんな中で生まれる、愛する人へのちょっとした嫉妬、憧れの人への淡い思い。心の中の自由が許される時なら、恋人同士の、若者同士のちょっとした諍いで終わるはずの事が、周りを巻き込み、大きな渦になっていく。情報統制は猜疑心を産み、心の中のちょっとした迷いは、個人がコントロールを出来ないような大きな悲劇を起こすきっかけになっていく。思想統制が行われる中、自分の愛を守ろうとする行為が、逆に自分の愛する人を苦しめる事になり、更に苦悩することになっていくのだ。
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教室でうたたねをしてしまった女子高生。目が覚めた時には暗い校内には誰もおらず、まるで廃墟のような暗闇が広がっているのだ。
蠟燭の明かりだけが頼りの暗い校内で、顔の見えないお化けに追いかけられる恐怖。自分と後輩の男性学生しかいない中、訳も分からず逃げ惑うしかない恐怖。そんな悪夢は恐怖の始まりでしかなく、悪夢を引き起こすきっかけになった密告の謎が少しずつ明かされていくのだ。
私は1960年代 白色テロに揺れる台湾を描いた映画だと思っていたので、ホラーテイストで始まり、ミステリー色がどんどん濃くなっていく展開に驚く。ストーリーが進んでいく中で、顔がはっきりしないお化けのクオリティが微妙なのは、心の自由を奪うという行為がいかに愚かな事かということへの抗議だと解釈。
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私は映画館に置いてあった「非情城市」「クーリンチェ少年殺人事件」に続く、白色テロ時代を描いた衝撃のダーク・ミステリー!という宣伝文句だけを読んでの映画鑑賞だったので、ホラーゲームが原作だということは鑑賞後に知った次第。
勿論私が手に取ったチラシにも、その事はキチンと書いてあったのだが、小さく細かい文字には見向きもしなかったため、何も知らずに映画を見て、その後、この映画が生まれることになった背景を知った次第。
純粋にホラー映画として興味を持った人、ゲームが原作であることで映画館に足を運んだ人、そして私のように台湾の歴史を扱っている事から興味を持った人・・・様々な興味の持ち方が可能な映画だし、入り口は違っても、自由という事について考えたくなる映画だと思う。
返校 Detention トレイラー
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