私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

オオカミの家

2023-09-11 21:28:08 | 映画鑑賞

チリの山間部にあるコロニーで暮らしていたマリアは、ブタを逃がしてしまったことを叱責されてコロニーから脱走。

逃げ込んだ小屋で出会った2匹の子ブタに「ペドロ」と「アナ」と名付け世話をしながら暮らすマリアだが、いつからか彼女を探すオオカミの声が聞こえてくるようになるのだ。

実際に見えている物と彼女の心の中にある物とがリンクして画面に映し出されているのだろう。

マリア自身の姿も彼女が可愛がっている2匹の子ブタも、そして彼女が逃げ込んだ小屋も、どれもあっという間に姿かたちを変えていく。輪郭も色も質感も全て変幻自在だ。ある時は大きく、ある時は形ある姿が崩れ落ち、そしてある時は叫び声の替わりに目から黒い涙のような液体を流す・・・

カメラは絶え間なく揺れ動き、どこに向かっていけばいいか分からない不安定な彼女の心の中が姿を変えて映し出される。歪みが不安を生み、不安が更なるゆがみを生む。それらが増長していく様があまりにも自由にグロテスクに描かれる。

彼女の不安を増長させるのは、遠くから聞こえてくるささやきである事が段々と分かってくる。「怖がる事はない。言う事を聞いていれば安全だよ。守ってあげられるよ。」飢えと不安に疲れてしまい、遠くから聞こえて来るその言葉に身を委ねたくなる葛藤と戦っているのだろうか。一見優しく聞こえるその言葉の数々は、征服し、制圧しようとする者の言葉だ。

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【追記】

南米チリは、2023/9/11に1973年の軍事クーデターから50年目の節目を迎えたとの事。このタイミングで見るべき映画だったと思う。

1970年、アジェンデ元大統領は、世界で初めて民主的に選ばれた社会主義政権を率いたものの、3年後にピノチェト将軍によるクーデターにより追いつめられ大統領府で自決。ピノチェト軍事政権で経済成長はするものの格差は残り、反対派への拷問や思想弾圧等が行われた事から今でもアジェンデ元大統領の人気は根強いとの事。

 

映画『オオカミの家』予告編



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