仕事で毎月給与計算をし、年末は源泉徴収票を印字して給与明細と一緒に社員に配布したり、各市区町村から送られてくる給与取得等に係る特別徴収税額の決定通知書を社員に配布したりしている。
そんな風に所得税そして住民税が身近なせいか、ふるさと納税の制度が導入された際、ちょっとだけ複雑な思いに駆られた。
「皆の給与を間違いがないように集計し、給与所得者の人には源泉徴収票を配布し、税務署には源泉徴収票を集計した法定調書合計表と提出し、給与所得者の人が居住している市区町村には給与支払報告書をそれぞれ送り、翌年度の住民税を計算出来るように処理しているのに、そこにふるさと納税が加わる事で、せっかく集計した数字を使って計算された住民税がそのまま使われなくなるのだな・・・」と何となく空しくなったのだ。
今は動画スタイルになってしまったが、以前は年末になると税務署主催の年末調整説明会があった。そこには税務署関係者だけでなく、市区町村の住民税担当者も出席され「皆さんが企業で事務処理をしていただいている事が正しい税徴収に繋がり、円滑な行政サービスに繋がります。。」などと、形だけでも企業の担当者の事務処理の苦労に対して労いの言葉があったりしたのだ。
どうしても税金計算等は社員からもあまり有難がられない業務。形だけでも慰労でも、なんの慰労もないよりは少しは意味があるものだった。
勿論、各企業や個人が各市区町村に報告した数字を元に住民税が計算され、そこからふるさと納税の計算に回るのだから、使用されてない訳ではないのだが、(特に都心部で)「住民税の他所への流出で、住民サービスに回る分に不足が出ている」という件がニュースになっているのを見ると、なんとも複雑な思いになる。一度は居住地で使われる為に計算された住民税が、他所に移されて、もともとの場所では税金が足りなくなるなんて・・・
仕事柄からか、ふるさと納税の制度が導入された際、そして今も時々ふるさと納税について、話をすることがあるのだが、その際にふるさと納税をした市区町村の名前の口にした人はただの一人もいなかった。「ふるさと納税で○○を貰った」
皆一様にそんな言葉を口にする。結局は返戻品なんだ・・・寄付額1兆円規模の壮大な通販だなと改めて確認する瞬間だ。