私は殺し屋を演じているレオン・ライのファンの為、映画館でも複数回、レンタルビデオでも何度も見ている。そして見る度に「自分の好きに見ていいんだろうな・・・」という思いに取らわれる。
殺し屋と仲介人、殺し屋が雨の夜に出会った女との話、フラれてしまった女の話。どのエピソードもはっきりした輪郭なく、時間の流れともに姿を変えて皆の前から居なくなり、また別の話が語られる。
香港の夜に生きる若者たちを、ストーリーで見せるというより音楽と映像で見せていく話だ。ストーリーに大きな流れはなくとも、エピソードの積み重ねとどんな風に生きているのかを語っていく。
公開当時、いろいろな媒体でレオン・ライがこの映画について語っているインタビュー的な物を目にしたが、演出家の指示通りに演じたという内容が淡々と語られているものがほとんどだった。映画の中の殺し屋的にクールと思える語り口だった。同様に監督も彼の演技についてあっさりとしたコメントだったことを記憶している。
観客には二人の相性云々ということは関係ない。
ただ、自分の好きにみるだけだ。
クリストファー・ドイルは女優陣の顔を下からなめるようなアングルを多用し、かなり生々しく撮っている。そんな中、レオン・ライ演じる殺し屋と雨が降る中、人気のないマクドナルド(ケンタッキー・フライド・チキンでしか撮影許可が下りなかった為、撮影の際に中をマクドナルド仕様に仕上げて撮影したのだという)でテンション高く過ごす場面を演じていたカレン・モクが雨の香港を一人満喫している様子が印象的だ。映画のポスターが彼女の姿なのもうなずける。動きが何とも動物的でしなやかなのだ。
******
何回目かの香港で、この映画の最初の暗殺シーンを撮影した湾仔のお店の場所を訪れた事がある。
昼間だったので緑色の蛍光灯はついていなかったが、ざわついた雰囲気はこの映画のままだった。