
入場の際に渡されたリーフレットには、ハンガリー出身のユダヤ系建築家のラースロー・トートの短い略歴と一緒に、彼が再出発の地に選んだアメリカで設計したプロテスタント教会内の印象的な十字架のサインや、彼に設計を依頼したハリソンの書斎に置かれた長椅子等が写真入りで紹介されている。
映画はこのラースロー・トートがアメリカに渡ってからの30年の人生が描かれるのだが、リーフレットの下には『本書の内容は一部を除きすべて架空の内容です。』との一文。ただ、その一文が信じられないようなリアルな彼の人生と彼の携わった建築物の荘厳な佇まい。
15分のインターバルを持ってしても215分という時間は長く感じられる。ただ、太陽の動向に合わせて光が差し込み十字架を浮かび上がってくるように設計されているコンクリート製の教会や、巨大な採掘場、アメリカでの生活になじめない苛立ちなど繰り返し描かれる事で30年という時間の重さが感じられる。
アメリカへの移住が送れる妻と姪を一人待ちながらも、肉体的な辛さから麻薬に溺れる。実業家ハリソンの気まぐれに翻弄され、コストカットを宣告されても建築家として譲れない部分に対しては激高する様子を見せる。「自由の国」と思っていたアメリカが自分達を受け入れない事に対する消えない苛立ち。
オープニングに映し出される逆さまの自由の女神。イスラエルこそ自分が帰る場所とアメリカを去る事になる姪の存在など、移民の彼らを翻弄するアメリカの事を色々考える。
******
建築家の人生を描いた映画らしく、真っすぐな道を進む様子が映し出される中、クレジットが右から左に流れていくオープニングとクレジットが斜めに流れていくエンディング。