先日、セールスフォースのシンポジウムで、トヨタの豊田章男社長たちとの鼎談で、コリン・パウエル元国務長官が、登場し、非常に興味深いカレント・トピックスについて語っていたのだが、私の第一印象は、非常に心の優しい温かい人だと言うことであった。
アラブの春についても、貧しい人々に職と教育を与えることによって貧困をなくすことが如何に大切かを語っていたし、企業のイノベーションや雇用の創出の大切さを力説していた。
この鼎談で、著書についていくらか触れていたが、直接本に書いてあるとして、語った一つは”小さなことをチェックすべし”と言う点であった。
この項目は、この本の冒頭の第1章コリン・パウエルのルールで、気に入った名言や格言を列記した13カ条のルールの一つである。
本では、マザーグースの一節を引いて、所謂、ヒマラヤの蝶の羽ばたきが大災害を齎すと言った小さなことが重大事を引き起こすように、人は出世すればするほど、虚飾とスタッフに囲まれてほかが見えなくなる、現場で何が起きているのか、確認する必要が高まると言うのである。
一つの方法は、高級感あふれる役員専用フロアーから出て、予告なしに、階下の現場に降りること。
それに、普通なら自分のところまであがってこない子細を直接伝えてくれる非公式なルートを利用したと言う。
部下と言うものは「小さなこと」ばかりの世界で生きている。リーダーは、公式でも非公式でも、なにがしかの方法でその世界を把握しなければならないのだと言う。
この意識の根底には、現場重視の強烈な思い入れがある。
この本の各所に置いて、この点が強調されているのだが、第3章人を動かすで、”現場は正しくスタッフがまちがっている”として、新しい隊に赴任すると、「現場の意見を尊重する」と宣言し、経験から言ってもだいたい70%は現場が正しいのだと言う。
日本の現場力重視の経営と相通じる哲学である。
興味深い逸話は、国務長官として、ブッシュ大統領への「メキシコ関連の案件についての概要説明」の時に、この説明を、顏も知らないメキシコ担当の若い内勤スタッフ2名に任せた。
内勤スタッフは、実務で汗をかく若手外交局員であり、メキシコ国内で何が起きているのかを一番よく知っているのは彼らだと思ったからだと言うのである。
もう一つ、この鼎談で、話題になったのは、決断は直観であると言う点である。
直観とは、閃き。経営は、アートであると言うことにも通じるのであろうが、今日経営者の45%が「事業を運営する上で事実や数字よりも直感を信じている」とする調査や、「直感は、意思決定プロセスの中枢を占めており、分析は精々直感による意思決定の支援ツールに過ぎない」とする直感の働きを説く説もある。
もう少し科学的に言うと、ノーベル賞経済学者H.A.サイモン教授が、「チェスのベテランはパターンを見て、その状況に関して自分の知る情報を記録の中から取り出すことが出来る」と言っており、同様に、優れた経営者は、直感、すなわち、経営者の頭の中で、その蓄積された膨大な知識・経験やデータの中から検索・パターン認識と言う瞬時の判断・分析のプロセスが策動して判断を下している、と言うことであろうか。
パウエルは、優れたリーダーは、優れた直観を持つことが多いとして、判断が難しい局面に立たされた場合、利用できるだけ時間を使って情報を集め、比較的良いと思われる複数の選択肢から、自分の直感を信じて適切な答えを出すと言う。単なる勘だけではなく細かく直観による意思決定について語っている。
ここで、判断に間違いの可能性があった、アイゼンハワーのノルマンディー上陸作戦とグラント将軍のピータースバーグの戦いについて、直観的な戦略決定について述べ、自分自身のフィリピン軍事クーデターの回避のケースを語っている。
豊田社長は、経営での直観的な要素に同意しながらも、その影響が、末端の人々の生活に及ぼす影響を考えれば、3秒での直観的な判断には躊躇すると言っていたのが興味深かった。
これまで触れた2点は、このパウエルの本のほんの片鱗で、もっともっと多くの重要な人生の卓越した先達としての教訓が鏤められていて感動的である。
状況がどれほど厳しい時でも自信を失わず、楽天的な姿勢を保つように心掛けてきたと言っているように、何かに感染しても、一晩ゆっくりと休めば、あくる朝には、また、新しい人生が始まるのだと言う、非常に前向きの人生哲学が爽やかであり、それに、常にベストを尽くせ、見る人は見ていると言う絶対に人生に妥協のない強烈な敢闘精神が胸を打つ。
この本の原題は、”IT WORKED FOR ME " 「私はこれでうまくいった」
パウエルが歩き続けた人生で得た感銘深い名言や格言、あるいは、貴重な教訓を例示しながら、自分のうまくいった人生における逸話を随所に鏤めながら語った人生の書である。
それに、元々、戦略や戦術などと言うのは、軍事が本家本元であり、統合参謀本部議長にまで上り詰めたパウエルのIn Life and Leadershipの書ではあるけれども、随所に、あらゆる組織の経営・運営に必須の貴重な戦略論が見え隠れしていて、啓蒙示唆に富んでいることは言うまでもない。
アラブの春についても、貧しい人々に職と教育を与えることによって貧困をなくすことが如何に大切かを語っていたし、企業のイノベーションや雇用の創出の大切さを力説していた。
この鼎談で、著書についていくらか触れていたが、直接本に書いてあるとして、語った一つは”小さなことをチェックすべし”と言う点であった。
この項目は、この本の冒頭の第1章コリン・パウエルのルールで、気に入った名言や格言を列記した13カ条のルールの一つである。
本では、マザーグースの一節を引いて、所謂、ヒマラヤの蝶の羽ばたきが大災害を齎すと言った小さなことが重大事を引き起こすように、人は出世すればするほど、虚飾とスタッフに囲まれてほかが見えなくなる、現場で何が起きているのか、確認する必要が高まると言うのである。
一つの方法は、高級感あふれる役員専用フロアーから出て、予告なしに、階下の現場に降りること。
それに、普通なら自分のところまであがってこない子細を直接伝えてくれる非公式なルートを利用したと言う。
部下と言うものは「小さなこと」ばかりの世界で生きている。リーダーは、公式でも非公式でも、なにがしかの方法でその世界を把握しなければならないのだと言う。
この意識の根底には、現場重視の強烈な思い入れがある。
この本の各所に置いて、この点が強調されているのだが、第3章人を動かすで、”現場は正しくスタッフがまちがっている”として、新しい隊に赴任すると、「現場の意見を尊重する」と宣言し、経験から言ってもだいたい70%は現場が正しいのだと言う。
日本の現場力重視の経営と相通じる哲学である。
興味深い逸話は、国務長官として、ブッシュ大統領への「メキシコ関連の案件についての概要説明」の時に、この説明を、顏も知らないメキシコ担当の若い内勤スタッフ2名に任せた。
内勤スタッフは、実務で汗をかく若手外交局員であり、メキシコ国内で何が起きているのかを一番よく知っているのは彼らだと思ったからだと言うのである。
もう一つ、この鼎談で、話題になったのは、決断は直観であると言う点である。
直観とは、閃き。経営は、アートであると言うことにも通じるのであろうが、今日経営者の45%が「事業を運営する上で事実や数字よりも直感を信じている」とする調査や、「直感は、意思決定プロセスの中枢を占めており、分析は精々直感による意思決定の支援ツールに過ぎない」とする直感の働きを説く説もある。
もう少し科学的に言うと、ノーベル賞経済学者H.A.サイモン教授が、「チェスのベテランはパターンを見て、その状況に関して自分の知る情報を記録の中から取り出すことが出来る」と言っており、同様に、優れた経営者は、直感、すなわち、経営者の頭の中で、その蓄積された膨大な知識・経験やデータの中から検索・パターン認識と言う瞬時の判断・分析のプロセスが策動して判断を下している、と言うことであろうか。
パウエルは、優れたリーダーは、優れた直観を持つことが多いとして、判断が難しい局面に立たされた場合、利用できるだけ時間を使って情報を集め、比較的良いと思われる複数の選択肢から、自分の直感を信じて適切な答えを出すと言う。単なる勘だけではなく細かく直観による意思決定について語っている。
ここで、判断に間違いの可能性があった、アイゼンハワーのノルマンディー上陸作戦とグラント将軍のピータースバーグの戦いについて、直観的な戦略決定について述べ、自分自身のフィリピン軍事クーデターの回避のケースを語っている。
豊田社長は、経営での直観的な要素に同意しながらも、その影響が、末端の人々の生活に及ぼす影響を考えれば、3秒での直観的な判断には躊躇すると言っていたのが興味深かった。
これまで触れた2点は、このパウエルの本のほんの片鱗で、もっともっと多くの重要な人生の卓越した先達としての教訓が鏤められていて感動的である。
状況がどれほど厳しい時でも自信を失わず、楽天的な姿勢を保つように心掛けてきたと言っているように、何かに感染しても、一晩ゆっくりと休めば、あくる朝には、また、新しい人生が始まるのだと言う、非常に前向きの人生哲学が爽やかであり、それに、常にベストを尽くせ、見る人は見ていると言う絶対に人生に妥協のない強烈な敢闘精神が胸を打つ。
この本の原題は、”IT WORKED FOR ME " 「私はこれでうまくいった」
パウエルが歩き続けた人生で得た感銘深い名言や格言、あるいは、貴重な教訓を例示しながら、自分のうまくいった人生における逸話を随所に鏤めながら語った人生の書である。
それに、元々、戦略や戦術などと言うのは、軍事が本家本元であり、統合参謀本部議長にまで上り詰めたパウエルのIn Life and Leadershipの書ではあるけれども、随所に、あらゆる組織の経営・運営に必須の貴重な戦略論が見え隠れしていて、啓蒙示唆に富んでいることは言うまでもない。