酪農家の手取り乳価が4円安くなる。北海道の酪農家が貰う乳代価格は、極めて複雑な計算式で成り立っている。脂肪などの乳成分と何処に販売したか、何に加工されたかによって産出されるが、何度か説明を受けたがその時理解したものの、時が経つと細部が解らなくなってしまう。
歴史的な経過からこのようになったのはいたしかたない。しかしながら、これはホクレンの一元集荷による問題の象徴でもある。2年半前には、日本の店頭からバターが消えたことは記憶に新しい。その後、1年もしない間にバターが余り、酪農家や農協職員が強制的に購入される事態になった。今はだぶつき気味である。余れば内部処理し、足らなければ市場が困窮するのは、商売が下手というだけでは済まされない。
乳価を一昨年3円近く上げた。20年来の市販の飲用乳価格はアップし、酪農家は一息ついた。ホクレンは輸入飼料の高騰をその理由にした。金融危機ではじかれたオイルマネーによる投機で、穀物価格が高騰したのが背景にあった。
しかし、飲用乳価格を上げた頃には、穀物価格は落ち着き始めていたのである。又、世界的なリーマンショック以降の不況があり、牛乳の売れ行きが落ち込んでいた。一方でデフレが進行していた。そこに、価格を上げた牛乳の売れ行きが落ち込むのは当然のことである。
世界情勢の見誤りが、牛乳の売れ行きを鈍らせた。その一方で一昨年と昨年は酪農家はオンの字であった。穀物価格が下がり乳価が上がったからである。農業団体はいつも大変だと言い続けているが、この2年は笑顔が絶えなかった。そんなことは外部には漏らすことができないのである。
そうした意味では、今回の乳価の値下げは当然ではあるが、世情の動きを分析できずに生産調整すらできない、ホクレンであれば存在意味がない。売れないようだと価格に反映させるのではなく、生産量を調整するなり販売量が増える努力をするべきなのである。経済情勢から、何度も遅れて打ち出される対策には、長期的な戦略が見えない。
今回の乳価引き下げで、このところ落ち着いていた、離農がより一層進むであろう。とりわけ外部資本に依存する部分が大きな経営形態では、ダメージが大きいい。生産者は、乳価の引き下げを経営の中で調整できるが、周辺産業は落ちた乳価の分だけ、地域に落ちる金が少なくなる。外部資本に依存した経済体系は、地域と農業を歪にさせる。
飽食の時代といいつつ、舌に旨くもない、体にいいわけでもない製品が野放しで、安いというだけでもてはやされている。
なんともお粗末な、皮相な話ではないでしょうか。