
自民党総裁の選挙も随分様変わりしたものである。かつては派閥の領袖が、派閥を束ねて立候補したものである。今回派閥の領袖で名をあげたのは、宏池会の岸田文雄だけである。
個人的に付き合っている分には、きっととても優しく気配りのある人だとは思う。安倍晋三に次はお前だと言われ続け、身を引いていた優しさが裏切られ裏目にでた。宏池会は経済政策通集団であるが党内抗争には弱く、「公家集団」ともいわれている。党内では温厚なハト派と言われる。図らずも党総裁になりながら、総理大臣になれなかった河野洋平と谷垣禎一の二人を宏池会から出している。火中の栗拾いを引き受けるのも、会の特質ともいえる。
宏池会は池田勇人が立ち上げた、党内最古参派閥である。派閥を古賀誠から受け継い岸田であるが、護憲を強く指示されていたが、外務大臣の役職を目の前にぶら下げられて、岸田は翻意した。安保法制に消極的ではあったが、結局は認めている。要するに安倍晋三に、次の次はお前だと名指しされながらズルズル引きずられて、現在にに至っている。
宏池会は初代の池田勇人を含め、広島出身者が多い。核兵器禁止条約に調印しない理由を岸田は地元の被爆地広島の人達に十分説明したと言えない。
自民党広島県連が自民党本部に、河井案里に配った1.5億円について、その決定過程についてと、買収に使われたかどうかについて質問状を出している。二階幹事長は何も答えていない。この金は数度に分け振り込まれたのが、広島銀行である。この類の金は現金でしか引き落とすことがない。引き落としに来たのは、隣県山口の安倍晋三事務所の職員が半分である。広島銀行と岸田家は深いつながりがある。岸田はこの事実を知らないわけではあるまい。
一旦は森友問題の徹底追及を掲げていたが、これを引き下げた。河井案里1.5億円についても、総裁選を前に岸田は事実上引き下げた。何のために岸田は引き下げたか。
岸田文雄は宏池会の護憲精神を引きずり下ろしたが、強力な権力の前には弱腰になる精神は、ちゃんと引き継いでいる。こんな人物が、国家の指導者になるなら怖ろしいことである。