石原慎太郎が亡くなった。作家で弁もたつ国粋主義者で、厄介な右翼であった。作家であることや裕次郎の兄であることなど、なんとなく支持者が集まってくるが、反米右翼の旗は最後まで下げることがなかった。
麻生太郎以降のバカ総理を見続けてきたが、慎太郎はこの連中と違って原稿を読み上げるようなこともなく、自分の言葉で主義主張をする。気の弱いもの怯ませる強みはある。
東京都知事時代に知的障害者に対して、「こいつらに人権はあるのか」と聞いたり、中国をいつまでも“支那”という言葉を使ったりと、人を見下すのは裕福な育ちの常である。
慎太郎の犯した最大の失態、犯罪行為は尖閣諸島問題である。尖閣の帰属は周恩来と田中角栄が日中国交を回復した時、文字どおり棚上げしていた問題である。わざわざナショナリズムを掲げて火をつけたのである。やったことの行く末や相手のことなど考えず、自己主張しかしない慎太郎の真骨頂である。
経済成長の途に就いた中国は自信過剰の状況であった。慎太郎の東京都による尖閣諸島の購入は、火に油を注ぐ形となった。先人の知恵を何の予告もなく、慎太郎は踏み潰し、政権維持に躍起の野田佳彦がそれに乗って国が買い上げてしまった。
およそ相手の考えや立場を考えない。相手の出方が気に食わない時には、自説を見直すことなく、更に相手を非難する、罵倒する、持論を肥大化させる。
こうして勝った時には、指導力があったといわれる。一般国民にはどちらであっても目立ち支持を集める。
元々団体行動が嫌いで、自民党内に政治集団青嵐会を結成し血判をやったり、突如議員を辞職して知事になったり、突如知事を辞職して泡沫政党を立ち上げたりと、我儘の限りを尽くした。
歴史観は戦前教育された皇国史観から終生抜け出ることがなく、哀れでもあった。暴論をがなり立てるこの男を制御できなかった、日本の政治家たちの層が薄いということである。