「根室の漁船、第31吉進丸の銃撃・拿捕事件を受け、根室管内の漁協組合長たちと根室市長が北海道知事に、ロシア側に拘束されている乗組員の早期解放と安全操業に向けた協力を要望した」と報道されるが、これはいかにもおかしなことである。安全に違法操業ができるように、陳情したのだろうか?
地元では、日本の漁船の多くが違法操業をやっているのは公然の秘密である。目の前にる海産物を採りたくなるのは、漁師なら当然とも言える。ロシア関係者などによると、最も多く密漁をやっているのは実は、ロシアの漁船である。それを無条件で高額に買い取る日本の業者がいる限り、この実体はなくならないし取り締まれないと頭を抱えている実情にある。さらに韓国漁船がこれに加わるから、話は複雑である。資源の枯渇が憂慮される。
北方領土を固有の領土としている以上、ここには国境などなく中間ラインなる不思議な言葉があるだけである。申し合わせを逸脱した漁は、建前国内であっても密漁と報道するべきである。今回の要請に密漁や違法操業などは当然触れられてはおらず、本心は鉄砲では撃たないでくれという要請かもしれない。
四島返還ではなく、歯舞、色丹の二島を先に返してくれという分離論がある。島の大きさからすると、2%程度の歯舞、色丹島面積でもそれに伴う、海の面積は遜色がないものとなる。近くの二島を分離してでもというのは、漁師たちの言い分である。ソ連、ロシアの老獪な外交に甘い汁だけ吸われる哀れな日本外交の狭間に位置する北方領土は、時間の経過とともにロシア領土の公然たる事実だけが積み重なっていくことになる。
日本は国土に関する歴史を教育の場でもしっかりと教えてはこなかった。北方領土がロシア領でないのは事実であるが、日本領になったのはいつなのか、先住民族の権利はどこにもないのか惰性で今日に来ているだけである。