NPT(核拡散防止条約)再検討会議が、7年ぶりにニューヨークで開幕された。通例では閣僚級の参加であるが岸田文雄総理は初めて日本の首相として生き込んだでかけ演説をおこなった。
「核兵器のない世界」Long Action Plane と名付けた、核兵器不使用の継続や、世界の若者を広島長崎に招くなど5本柱の行動計画を提唱した。自らを、「NPTの守護者」と呼んだのには驚かされた。
発効から52年を経たNPT体制は、核保有5カ国以外に核の諸州を広げないということであるが、それは取りもなおさずこの5カ国が理性的に判断し、人道的に振舞うことが前提になっている。ところがアメリカを上回ると思われる核保有国のロシアは、ウクライナに対して核の恫喝を行っている。ソ連時代大量の核を保有していたウクライナであるが、ソ連崩壊後は安全保障を条件に一基残らず引き上げている。ところがロシアは今年の二月に始めたウクライナ侵略で行き詰まると、プーチンは核の恫喝に打って出た。
一向に核の拡散が収まらないことにいら立った各国は、核兵器禁止条約を2017年に採択し昨年発効した。日本のヒバクシャが本条約の成立の多大に貢献している。
現在署名国が86、締約国が56カ国となっていて、ノールウェーとドイツがオブザーバー国になっている。
唯一の被爆国の日本は、安倍晋三は核保有国との橋渡しをするとして条約に批准していない。それではどんな橋渡しをしているかというと、何もやっていない。
核兵器禁止条約について、岸田総理は全く触れることもなかった。
条約成立に貢献したサ被爆者のサーロー節子さんは、岸田文雄首相が演説したことについては、「うれしく、誇らしく思う」と述べる一方、「核兵器禁止条約へは一言もなく失望した。意図的に無視された」と、述べている。
最も重要な核兵器を法的に禁止する条約に、広島出身の岸田総理何も語ることがなかったとは、この男は何しに国連まで行ったのだろう。