今朝の羽鳥のモーニングショーはかなり的確に酪農の現状を指摘してくれた。アドバイザーとして出席していた、鈴木宣弘東大教授の指摘を受けての内容が多かったように思える。
2000頭近く搾っている十勝の友夢農場の意見はともかくとして、白糠の酪農家の発言は、訥々とした喋りでかなりインパクトがあった。国の指導で規模拡大した。クラスター事業でほぼ半額で規模拡大できたが、1億5千万円ほどの負債を抱えた。思った以上に電気や水道代など出費が多かった上に、飼料と肥料代なども高騰して、昨年は1千4百万ほどの赤字になったと言ってくれた。成乳牛を廃用にすると15万円貰えるが、搾った方が得になることも述べていた。
成乳牛を売って、つまり農家が生産を止めると金を出して需給を調整するという、世界ではほとんど見られない生産抑制に金を出す方式は、減反という稀代の悪政策を踏襲している。
北海道の生産抑制が14万トンであるが、輸入乳製品が成乳換算13万7千トンでほぼ同量である。海外から輸入して、国内の酪農家には同量を廃棄させる。愚策としか言いようがない。
これに対して、この番組は最も素晴らしい取材をしてくれた。鈴木先生が、TPPで輸入枠は強制ではないと発言しているが、これを受けて農水官僚から、「こちらの都合の良い時だけ買って、都合が悪いと言って買わないわけにはいかない」と、驚くような発言を引き出したのである。
つまり日本の酪農家には、国の政策で増産を促しておきながら、今回のような事態が起きれば、金やるから我慢しろ。海外からの輸入品は変えられないというのである。政策の持って行き方が逆でないか。
これこそ日本農政の本質である。輸出産業の代替えとして、日本農業は人身御供として晒されているのである。
更に生産調整の過程で、農産物(今回は生乳)を廃棄することなどあってはならない。ましてやそれに補助金を出すということなど、近づくあるいはすでに始まっている食料危機を全く考えない、展望を持たない農水省の愚策である。そんな金があるなら、鈴木先生がかなり以前から言っているように、国で買い上げて例えば途上国の支援に使うとか、今回のように輸入品を止めることなどするべきである。
因みに、上図は全農のサイトから拝借したものである。この図のように放牧して自由に草を食べさせている農家は、北海道の酪農地帯の当地でも10%以下であるし、出荷乳量となると2%程度でしかない。全農がこうした図を見せるのは、消費者のもつ酪農家のイメージを大切にしたいからである。
こうして自給飼料に重き、農業の基本からぶれない農家は、今回のような時でも大きなダメージなど受けていない。このような酪農家を増やしたいのであるが・・・。